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山崎豊子『運命の人』(毎日読書メモ(338))

山崎豊子『運命の人』(一~四、文春文庫)、文庫になった時に一気に読んだ。なんというか、代表作にはならないな、という感じの作品だった。

【一】弓成亮太は、いやな人ですね。身近にいたら疲れそうですね。マスコミの正義を盲信しているのもちょっとこわい。結果として、機密漏洩が表沙汰に。表沙汰にならなければ漏洩してもいいのか? しない方がまずいのか? 隠蔽されては困るが、漏洩を漏洩とわからないように公開するすべはあるのか? タイトル「運命の人」とは誰にとっての誰? 昨春単行本出たばかりなのにもう文庫本、というサイクルの早さが作者に申し訳ないような。まぁおかげで早めに読めたのですが。(2010年12月)

【二】2巻に来て弓成亮太の偽悪性が更に露呈。主人公に感情移入させない趣向の小説か? 報道の自由と守秘義務の戦い。そして、気配を消している三木昭子の本心はどこに。相変わらず「運命の人」が誰にとっての誰なのか、全くわからず。1972年という時代を思い出しつつ読む。(2011年1月)

【三】裁判に負け、人生転落していく弓成良太(この人はなんでフルネーム表記だけが似合うんだろう?)。物語に救いは、落としどころはあるのか?、とさびしい気持ちで終わる第3部。あと1冊! これまでの山崎の著作の中では圧倒的な軽さ...もっとじっくり読むのが山崎豊子だと思っていたのに、妙だ。(2011年2月)

【四】やはり山崎作品にしてはさらっと終わってしまった印象。勿論米軍ヘリ事件、女子暴行事件等、沖縄の抱える問題も提起されているが、それをこの紙数で扱うのはやはり限界が。舞台が沖縄に移ったことで、作品の印象がちょっと転換。そして、結局、夫婦が籍を抜くことなく最後まで夫婦であった根拠が描かれていないのが消化不良。運命の人って運命の人ってそういうことなの? なんか煮え切らないなー。(2011年3月)



#読書 #読書感想文 #山崎豊子 #運命の人 #文春文庫 #弓成亮太

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