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イエテ◯ソラへ (24) ☆ 最終章 ☆

 わたしはほとんど暮れかけた、うすあかりの中で、最後のしゅんかんを、想像で描いていた。あの扉を開けて、あの茶髪のおにいさんと、管理人さんの二人が現われるだろう。
 管理人のおじさんは、昼間の工事人に見せた愛想よさなど、これぽっちもなくて、しぶい、きびしい顔をしてるにちがいない。
 わたしは黒バッグとリュックをそばに置き、コンクリートの上に正座して、深く頭を下げている絵を仕上げた。
 これで終わり、と閉じた時、胸に浮かんだ思いがあった。ああ、これが、この『絵物語』が、わたしをずっと支えててくれたんだ!
 カチャリ! とキーがまわる音がした。
 わたしは『物語』を、しっかりと胸に抱えた。おなかに力を入れ、最後に空を見上げ、うす青い空を、目に焼きつけてから、目を閉じた。

「ユカだっ!」
え? 麻美の声?
「やっぱり、いたっ!」
わ! 武春兄さんとクミの声。朝子も · · ·。
「ほらねっ。ユカ、だいじょうぶ?」
 声が、足音が入り乱れて駆け寄ってきた。

 目を開けると、わあっと押し寄せる、思いがけない人の数に、わたしは正座のはずが、うしろ向きにこけてしまった。茶髪頭と管理人さんが、チラッと見えた。
「裕香! ほんと、無事で、よかった!」
 と、ひときわ高い声が聞こえて、ふいにわたしの肩を抱きしめるように、泣きくずれたのは、なんとママだった!

 ピンポンパンポン!
 防災無線の声が再び流れ始めた。
 「市の 広報部より、お知らせ いたします。ごきょうりょく ありがとう ござい ました。先ほどの 女の子は · · ·、無事 発見 されました」

                                (完)

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