遠藤みえ子

東京女子大英米文学科卒。高校教員33年間、恵泉女子短大と東京女子大計17年非常勤講師。…

遠藤みえ子

東京女子大英米文学科卒。高校教員33年間、恵泉女子短大と東京女子大計17年非常勤講師。日本児童文学者協会会員。『やなぎ通りのスージーさん』『あじさい寮物語三部作』『1945年鎮南浦の冬を越えて』は、日本語版、英訳版の二冊が米国議会図書館に2020年所蔵さる。他十数冊と翻訳書有り。

マガジン

  • 合閒のひと休み

    短編や長編の小説の合閒に、ちょっと目についた面白い場面を拾ってみました。楽しんで下さったら嬉しいです。

  • イギリス時の旅 ー物語の舞台を訪ねてー

    「おはなし」を覚えて語る仲間たち16名で、イギリス児童文学の作品を勉強した上で、作品の舞台を訪ねる旅をしてきました。伝統とイギリスらしさを味わえて楽しい旅でした。

  • 香織の試練(2)ーあじさい寮物語別伝ー

    母・姉の出身有名校に、補欠以下で辛うじて入学、入寮できた香織は、苦労の連続の中、小さな趣味を特技と学園長に認められ、夏休み中に製作を頼まれる。2学期にその特技が波紋を起こすことに・・。ルームメート、クラスメートにボーイフレンドに支えられて・・。

  • ○○○ごっこ

    親密な関係だった隣家の裏切り行為で、大借金を負い、急遽公立中へ転校、一家は別暮らしとなるみゆきの重い恨みの気持ちが、どう変化していったか。新しい友も悩みを抱え、その隣家の老女たちも重い過去を背負いつつ、せっせっせの童歌で慰みを得ている姿や、父との暮しに助っ人として上京してくれた伯母の姿など、様々な生き方を学んでいることに気づく13歳の少女の物語。

  • 香織の試練ーあじさい寮物語別伝

    ママと姉出身の私立高校に補欠以下で辛うじて入学。憧れの寮に入れた香織は、ルームメイトの直子や寮監、同じ境遇で都立高に入った圭子、担任の先生に支えてもらう立場に。最初の実力テストで最下位歴然。不安と涙、奥手で鈍い香織にも結城君との青春がゆっくりと育ち始める。在米の姉の帰国で、姉妹の絆深まり、香織の特技も認められ、1学期と夏休みが終るまで・・。

最近の記事

 4章-5 風邪に太極拳

スウェーデンの電気器具はお粗末、という印象はますます強まる。レンジは原始的で、器だけ温まり、中身は生ぬるいだけ。時間だけは怖ろしく長くかかる。掃除機の騒音のすさまじさときたら、使う時間を考えないと、近所迷惑の元だ。日本の中古品でも送ってあげたくなる。 昼は、果物をほんの少し食べただけ。午前中も寝ていたのに、また午後も眠りこんだ。目がさめると、3時近かった。外は明るく輝いている。残り少ない日なのに、寝てばかりもいられない気がして、散歩に出ようとする幹彦に、私もちょっとだけ行く

    •  4章-4 9/12 城と湖へ散歩

      夕べ8:30に床につき、12時に鼻から頭が痛くて目が覚めた。頓服薬をもらっていたことを思い出して飲んだ。 鼻は粘っていて、どうも副鼻腔炎になったようだ。脚はだるいし、いつものかかりつけの医師なら、必ず薬をもらえるのに・・。 残りの日が少ないので、幹彦の散歩についていくことにした。黒とっくり  セーターの上にウールシャツ、スカーフ、手袋と重装備で、2人でいっしょにゆっくり歩いた。陽射しは済んで明るく、今日も良い天気が続きそうだ。 見事な並木のある道は、昔のこのあたりの領主の

      • 4章-3 老人たち・寂しさ

        今朝、幹彦と2人でごみを捨てに出た時、週末で帰省した学生が多いようで、向かいの寮内もがらんとしていて、人気のない構内を、自転車を押して通りかかった老年の男性とすれ違った。彼は何かを拾って歩いているようで、スーパーの大きなビニールぶくろを手に持っていた。 幹彦がビールの缶をどこへ捨てればいのか尋ねると、英語がわからないらしく、スウエーデン語で何か教えてくれるが、意味不明。幹彦の言うには、店へ空き缶を持って行けば、いくらかもらえる、と言ってるらしい、とその ビール缶を彼に手渡し

        • 4章-2 謎のF氏一家見かける

          駅で帰りのストックホルム行きの切符を手に入れ、幹彦は本屋で地図を買った。幹彦は湖の周りを歩いて帰りたい、と私にへやのキーを託したので、私はひとりでバスに乗った。 2つ目のバス停は町中にあったが、ここでフレニコフ氏が乗ってきて、私はうろたえた。なぜなら、彼は奥さんらしい凄い美人の女性と、3歳くらいの男の子を連れていたからだ。やっぱり男の子がいたのだ。この子にアンドレイという、自分の名前をつけて、彼の論文にもその名前を入れていたのは、この子だったのか!では、14歳という娘さんは

         4章-5 風邪に太極拳

        マガジン

        マガジンをすべて見る すべて見る
        • 合閒のひと休み
          遠藤みえ子
        • イギリス時の旅 ー物語の舞台を訪ねてー
          遠藤みえ子
        • 香織の試練(2)ーあじさい寮物語別伝ー
          遠藤みえ子
        • ○○○ごっこ
          遠藤みえ子
        • 香織の試練ーあじさい寮物語別伝
          遠藤みえ子
        • おとなりさん
          遠藤みえ子

        記事

        記事をすべて見る すべて見る

          4章-1 9/11 町へ・F夫人を訝りつつ 

          朝から素晴らしい日和、へやの中が明るい。幹彦はいつもの散歩に。私も ついて行きたかったが、昨夜から鼻水が黄色く粘り、脚のだるいのが脱け ないので出かけず、お好み焼きの朝食を作った。(キャベツ/白菜/マッシュルーム/ピーマン/玉ネギ/豆の芽/ベーコン/豚肉/マヨネーズ/卵)と小麦粉を混ぜて焼き、茹でジャガイモ、牛乳、ブルーベリージュースを添えた。 自炊ができたから、毎日の食事がおいしいねぇ、と語り合った。幹彦も体力を回復できたようだ。今日は町へ出て、博物舘めぐりをして、どこ

          4章-1 9/11 町へ・F夫人を訝りつつ 

           3章-9 間違いの原因

          私は外回りはほどほどにして、「ガーデン」の建物に入ってみた。MIT SMALLLAND の英語版があれば、買いたいと思っていたからだ。ここでも   ドイツ語版はあるが、英語版はないとのことだった。1冊だけ、彼女の伝記の英語版を見つけて、買った。 8月の本格的に開いている時期なら、どんな光景がみられたのだろうか、と「時期はずれ」を残念に思いながら、リンドグレーンと彼女の作品が、こんなにも認められ顕彰され、愛されていることの一端を見ることができて、嬉しかった。 帰り道は、ドラ

           3章-9 間違いの原因

          3章-8 本物ガーデンはどこ?

          いつもは、小さなパンを一切れしか食べないのに、やけ食いみたいに、ハムと野菜、卵と野菜のサンドイッチ2組、つまりパン4枚の他に、リンゴ1個とネクタリンを半分平らげてしまった。ふふ、でも、すっかり元気を取り戻して立ち上がると、12:20。 バスの出発までに充分時間が有るので、適当に町を散策してみようと、歩き出した。どの家も美しくしつらえていて、生活を楽しんでいるのがわかる。外に張り出した庭先のリンゴの木々も目についた。たいていの庭にリンゴの木が2本はあって、7本もある家もある。

          3章-8 本物ガーデンはどこ?

          3章-7 9/10 憧れのヴィムベルビー?

          6時起床。鼻水は止まり、何とか行けそうなので、弁当を作る。生ゴミを  捨てるついでに、幹彦がバス停まで送ってくれた。 8:20には駅に着き、8:55まで、手持ち無沙汰。ベンチに座っていたら、ゴミ箱をあさっていた男性が、私の前に来て、スウェーデン語で書かれた紙を見せて、頭を下げた。私は反射的に首を振ってしまったが、うなずいて去って行くその人の目の表情が、いつまでも心に残った。まだ誇りを捨てきれないで、恥じているような、なんとも哀切な色があった。その紙に何と書かれていたのかはわ

          3章-7 9/10 憧れのヴィムベルビー?

          3章-6 予測違いの良い1日!

          約束予定の2:30になったので、オスカソン夫人が元校長を務めた高校へ、再び向かった。車中で、夫人は母上の話をしてくれた。母上は31歳で未亡人となり、その時娘のオスカソンは5歳だったという(と言うことは、私より1歳年上らしい)。母上は祖母に助けて貰って、子育てをしながら、髪結いとして働き続け、子どもたちが嫁入りすると、小さなアパートに住んで、ひとり暮らしの老後のことをずっと気にしていたが、最期の半年だけ、人の手助けが必要となった。 スウェーデンには、子どもが親を見る習慣がない

          3章-6 予測違いの良い1日!

          3章-5 オスカソン夫人宅訪問

          この高校の食堂の傍を通っている時、ここは時間の制限はあるが、食事代はすべて  無料なのだと聞いて、なんと恵まれていることかと驚いた。学校は8月の半ばから新学期が始まっていて、新1年生も少し慣れてきた頃だ、とオスカソン元校長は言われる。先生たちの研究室を次々訪ねて紹介して下さり、最後に図書室にも案内してくれた。 私がリンドグレーンの名を挙げると、司書の人が英文のを3冊貸してくれ そうになったが、私は滞在期間が短いからと断った。どれも私が日本で読んだものばかりだったし・・。

          3章-5 オスカソン夫人宅訪問

          3章-4 9/9 私の学校訪問

          真夜中に目覚めて、今日の学校訪問のことを色々空想していたら、面白く  なって、あれも話そう、これは英語で何と言おう、などと考えて眠れなく  なった。 7:00  冴えない顔で起き出す。くしゃみや鼻が出る。夕べのシャンプーは早まったかも。 10時になってから、スーパーへ出かけ、大使館の日本人女性にあれこれ  質問した。 ・日本の広さ:34万平方キロ。 ・日本の高校の数:5353(国立17/公立4026/私立1310)     小中学 :2,300 (1997年調べ) ・大

          3章-4 9/9 私の学校訪問

          3章-3 スウェーデンの風習など

          「あの娘は、もうすぐ結婚するんですよ!」とポーリー氏が伸び上がるようにして言った。「この国では、面白い風習がありましてね。結婚間近い娘の友人達が、あれこれ頭をひねって、いたずらをするのです。娘に思いつく限りのおかしな注文を押しつけて、やらせるのです。変な服を着せて、ああ やってサインを200集めて来い、とか、街角にたって、歌わせたり、いろいろとね」 ポーリー氏は思い出し笑いをしながら、続けて言った。 「私の妻にも、へんてこな帽子をかぶった写真が残っていますよ」 外では、サ

          3章-3 スウェーデンの風習など

          3章-2 ポーリー氏の誕生日の話

          ついでにスーパーで果物といっしょに、ハムを10枚スライスしてもらった。140円。帰り着くと4:20。しばらく眠った。 4:50 幹彦が帰宅して、またパソコンを始めたが、何しろ近所迷惑な音ばかり立てるので、はらはらする。ドアはバンバン開け閉めするし、鼻をかむ音は豚の鳴き声のようだと、誰かに言われた凄さ、その上もっとでっかい音を連発するし・・。消音器をつけるといいのに、と笑ってしまった。 隣室の先生が、廊下で自転車の手入れをしていたのは、大きな物音を立てる隣人の顔が見たくなっ

          3章-2 ポーリー氏の誕生日の話

          3章-1 9/8 (水)会食後、ガラス工房へ

          何度も夜中に目が覚め、6:50 起き出す。食事、洗濯。テレビで「大草原のローラ」を見る。役者の生の英語で聞くと、日本で見た吹き替えの柔らかい声とは、かなり違って聞こえ、物語の印象が違うことに気づいた。母親は しっかり者で、かなり手厳しい人に思えた。 天気予報では、20度C。これから数日ずっと晴れて温かい日が続くらしい。 太極拳を外の芝生の上でやった。見られてるな、と気づいたが、気にしないことにする。少し元気が出た。力が沸いてくるのがわかる。 幹彦と12時に大学へ行き、数

          3章-1 9/8 (水)会食後、ガラス工房へ

          授賞式の日に(2)

             受賞者の控え室に、一番に到着したのは私だったのだが、次に男性の方が来られ、名刺を渡されてびっくりでした。その日一番の仰天の驚きと言うべきか。その人は、「住野よる」さん自身ではなく、名刺は文藝春秋社の編集者のものでした。それに「住野よる」さん自身、男性だったとは!しかも、ご本人は、決してどんな公の場にも姿を現さない「覆面作家」だそうで、「文藝春秋の編集者」の方が、代理人として「授賞式と祝賀会」に出席されたのでした。 住野氏の徹底ぶりは、ラジオ出演する時も、代理の人の声で

          授賞式の日に(2)

          11/9 当日『風さわぐ・』に感想文頂く

          授賞式の日、私が招待した方のお一人のHさんが、厚めの封書を渡して  下さったが、その封書の中には、別の1通が同封されていて、これを私に 読んで欲しい、と添え書きがしてありました。彼女の友人の穴澤さんという方の、私の受賞作への「感想文」だったのです。これを、note の皆さんにも読んで頂きたくなりました。ご本人の承諾も得て、ここに記載することにいたします: [ ] 内は私の補足で、( )は自著本文からの引用文です。 ------------- 『風さわぐ北のまちから』 遠藤みえ

          11/9 当日『風さわぐ・』に感想文頂く