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出産立ち会いに否定的な夫が、実際に立ち会った話

出産の立ち会いに乗り気でなかった僕の心情については前回の日記を参照していただくとして。今回は、出産当日についての話になる。

なかなか陣痛の来ない妻だったが、妊娠37週を超えた段階で誘発剤の投与が決定。妻が分娩室に移動し、本格的な陣痛が訪れたタイミングで病院に呼び出される。すでに分娩台にいる妻は非常に苦しがっていたが、「赤ちゃんの産声を録音して!絶対ね!」とのたまう。意外と余裕あるな。

子宮口が広がり、もうすぐで赤ちゃんが産まれるというタイミングになると、妻のいきる声もいっそう大きくなる。このとき、僕はただただ無事に子どもが産まれてきてくれることを願うことしかできなかった。産声を録りそこねないよう、ボイスレコーダー代わりのスマホを片手に握りながら。

僕が分娩室に通されて20分ほど経った頃だろうか、ふっと場の空気が弛緩した。「出た~!」助産師さんの明るい声が耳に飛び込んで来る。しかし、産声が聞こえない…。その割にみんな焦ってなくない…?「25分産まれでーす」とか言ってる場合なの?産声聞こえないとダメなんじゃないの?と、考えていると少し間を置いてから、元気な産声が分娩室いっぱいに広がった。

産まれた瞬間「おぎゃー!」という声が出るイメージだったので、静寂がすごく不安だった。今思えばせいぜい十数秒くらいだったのかもしれないが、「永久くれェ長ェ…!」と感じたのは言うまでもない(2回目)。

※子宮から出て、泣くまでは普通に少しタイムラグがあるみたい。へその緒から酸素がいっているから、すぐ泣かなくても問題ないらしい。

産声が聞こえた瞬間、安堵の気持ちと嬉しい気持ちで、気づけば僕も泣いていた。何なら、子どもを産もうと必死な妻の姿を見て感動していたので、産まれる前から少し泣いていた。

「かわいい」

出産を終えて満身創痍であるはずの妻が、胸の上の子どもを優しく包みながらそうつぶやく。なぜだかよくわからないけど、その言葉を聞いて、この女性と夫婦になり、子どもを授かることができて心から良かったと思った。

予定日より2週間早く産まれたけれど、体重はしっかり3178g。それでもやっぱり小さくて、初めて抱き上げたときはどこか傷つけてしまうのではないかと不安になるほどだった。この子を守っていく、父親としての僕の人生もまた、この不安を感じた瞬間に始まったのかもしれない。このような感情の動きを知ることができたのも、出産に立ち会ったからこそなのだろう。

※余談※
立ち会いを終えて妻の実家に戻り、出産前後を録音した旨を義母に伝えると「聞かせて!」とせがまれる。しかし聞かせてみると、若干引き気味。

理由を尋ねると「自分の娘からこんな奇声が出ると思わなくて…」とショックを受けた模様。出産なのだから当然では…と思うものの、夫と母親では感じ方も違うのだろう。僕は妻のいきる声に「めっちゃがんばってる!」と感動したけれど、もしかしたら義母の感覚が世間では一般的かもしれないし。

なんにせよ出産シーンをどう感じるかは人それぞれ、だということですな。

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