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妻のおならが、止まらない。

このnoteは妻に内緒で書いている。自身の預かり知らぬところで「放屁が止まらない」と不特定多数の人々に暴露される妻を不憫とは思うものの、僕からすれば口の軽い夫と結婚した自分を恨んでくれとしか言えない。

もちろん、おならが止まらなくなったのは妊娠してからである。それまで、妻のおならを聞いたことはなかった。きっと、したいときがあってもトイレなどで済ませていたのだろう。僕も仲の良い男友達の前であったとしても人前でおならをしない質なので、空気清浄機いらずのカップルであった。

しかし、妊娠するとホルモンバランスの変化の影響で便秘になりやすいらしく、それが原因となっておならが増えるそうだ。そうなると、今までのように「トイレでこっそり放屁」ということも難しくなる。ましてや夫は在宅勤務。ほとんど家にいる。そんなに頻繁におならのために場所を移るのも面倒だろうし、その都度我慢するなんてさらに不可能だ。

その結果、妻は素知らぬ顔をしながら部屋で放屁するしかなかった。しかし、妊娠によって腸内環境がよろしくないためにその臭いはもはや凶器。隠し通すなんてどだい無理な話だ。都会出身の方には伝わらないかもしれないが、妻のおならの臭いはバキュームカーの作業中のそれと同等だ。ダイキンの空気清浄機が轟音を上げてフル稼働を始るより早く、僕の嗅覚は妻のおならを察知する。うっかり顔を近づけようものなら、「エンッ!!!」となる。

最初こそ「ほんとごめん!くさいよね、くさいよね!」と放屁を恥じる妻であったが、一度経験してしまえば段々と人は慣れていくもの。今ではおならの臭いを指摘しても、「ごめんあそばせ」と貴婦人のように何事もなかったかのように振る舞う。むしろ、怖いもの見たさでこっちから鼻を差し出す始末だ。

思えば僕の両親はお互いの前でぷっぷぷっぷとおならをし合っていた。「おならをし合える夫婦が理想的」なんてことをいう女子もいた。そういう関係性って、ただのんべんだらりと男女の関係を続けているだけでなく、出産や子育てといった大きなイベントで互いの恥もダメなところも晒し合うことで徐々に育まれていくものなのかもしれない。そう思うと、妻が僕の前でおならをしてくれるようになったのは、関係性が深まったということなのかもしれない。

ま、臭いものは臭いけどね。

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