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遠藤良二の短編小説集

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短編小説「森の中にいた異能者との出逢い」「初恋」「抱擁」「嘘」「未来」「俺と彼女の行く末」「生と死」「嫉妬」「欲望と病魔」「憎悪、そして……」「劣等感と生きるためのヒント」「夢」…
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2021年7月の記事一覧

夢

 僕らはみんな生きている、から始まる歌があったはずだ。そう、僕らは生きているのだ。

 誰もが生きたくても生きたくなくても、生きる権利はある。

 僕は21歳になる大学3年生の島崎彰。いつも、こんな堅っ苦しいことばかり考えている。「生きるとは」をテーマにした本を自費出版だが本にしている。自費出版には数十万円かかった。大学生の僕は出版したくて、大学一年生の頃から学校が終わるとアルバイトを始めた。溜ま

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殺意のあと

殺意のあと

※この作品はR-18です。この物語はフィクションです。

 俺は人を殺したい。こんなことを思うのは普通はおかしいと思うだろう。でも、本当にそう思っている。いつか、誰かを。愛している女を殺して、死姦(しかん)するのも想像しただけでゾクゾクする。死姦というのは、死体を姦する(性的に犯す)ことを言う。

 どうかしてるわ、俺の頭は。でも、これが普通なのだ。気持ち悪がる人もいるだろう。でも、そんなのはお構

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義務と展望

義務と展望

 僕は日本の3大義務が嫌いだ。「勤労の義務」「教育を受けさせる義務」「納税の義務」。
 
 まず、僕には病気がある。糖尿病と心の病が。心の病の名前は、統合失調症だ。僕が25歳の時そう診断された。あれから約10年。僕は現在35歳になる。未だに、被害妄想と幻聴という症状がある。少しは良くなったが、寛解にすら至っていない。こんな状態で働け、と言うのか。無理があるだろう。経済的には、生活保護を支給されてい

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【ショートショート】勇気

【ショートショート】勇気

 僕は勇者になりたいと常日ごろから思っている。勇気のある者「勇者」。
勇気があれば、好きな人にも告白できる。実際、僕には好きな子がいる。現在、僕は16歳。その子も16歳。でも、学校が違う。電車の中でよく見かける内に、目と目が合いそれがきっかけで僕は気になるようになった。それから向こうから話し掛けてくれた。それ以来、僕は彼女の虜になった。

 誰か僕に勇気をわけてくれないかな。僕はきっと不甲斐ない男

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劣等感と生きるためのヒント

劣等感と生きるためのヒント

 僕はいつも人と比べて劣っているなぁ、と感じてしまう。例えば、学歴・身長・地位・収入・顔など。

 僕は大学を卒業し、何社か面接を受けたけれど、全部、不採用。友達は数人いるが全員、採用されている。仕方がないので、アルバイトをすることにした。父は、
「大学でて、アルバイトか。何かしたいことはないのか」
と、半ば呆れた様子で言った。気のよわい僕は、言い返せなかった。

 背は低いし、顔は醜いし、三流大

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【短編小説】憎悪、そして……

【短編小説】憎悪、そして……

 あたしは彼を憎んでいる。もともと女好きな彼は、あたしという彼女がいながら浮気をした。彼は21歳で年下のあたしの後輩に手を出した。後輩に話を訊いたところ、
「好きな物買ってあげるから、俺と付き合わない?」
 と、言われたそう。彼女にはあたしと付き合っていたことを隠していたらしい。彼女が、元カレに、
「彼女いないんですか?」
 訊いたところ、
「いないよ」
 と嘘をついたらしい。
 それなら、という

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【短編小説】欲望と病魔

【短編小説】欲望と病魔

#欲望 #肺ガン #欲しいもの

 俺には欲しいものがある。女、車、金など。

 金さえあれば女だって手に入る。車も然り。

 でも、今、俺は入院中。肺ガンになってしまった。だから、死ぬ前に色々したいことをしてしまいたい。

 ちなみに症状は、せき、たん、血たん、胸のいたみ、動いたときの息苦しさ、発熱などがある。

 親には散々、迷惑掛けてきた。

 俺は今、36歳。

 治療は勿論している。抗ガ

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【ショートショート】嫉妬

【ショートショート】嫉妬

#嫉妬

「お前、何で他の男と電話してるんだよ」
 私は進(すすむ)のことが好き。でも、たまにあまりの嫉妬深さが耐え難くなる時がある。
「会社の人だよ」
 進も私のことが大好きだからやきもちを焼くのだろう。

 最近、彼氏が同棲しようと言ってくれる。嬉しい。確かに嬉しいけれど、ひとりの時間もほしい。

 彼氏は今、無職。私のひも状態。本人はもう少ししたら働くと言っている。そう言うのだから、するのだ

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