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Q コンテンツプロバイダに対する開示請求の種類について教えてください

A ①ウェブフォームから依頼する方法、②ガイドラインに則った方法、③仮処分、④発信者情報開示命令申立、⑤訴訟等があります。

解説いたします!

開示請求を行う方法としては、A記載のとおり、複数のものがあります。

1 ウェブフォームから依頼する方法について
この方法については、数日で対応されることもあり、コストが低いという点がメリットですが、多くのサイトでは、この方法での開示に慎重な態度を取っています。また、Q IPアドレスの保存期間についてルールはありますか?|弁護士遠藤宗孝 (note.com)の記事で解説したとおり、アクセスログの保存期間についてはルールがなく、投稿から間もない時点で開示請求を開始しないと間に合わないことも多くあるため、1や2の任意の依頼を行って、それが拒否されてから開示請求を行う、ということになると、保存期間を経過してしまうリスクが高くなるという点もデメリットです。
そのため、この方法を用いるのは、ウェブフォームからの依頼で対応されることが明らかな場合等に限られると思います。

2 ガイドラインに則った方法について
この方法は、一般社団法人テレコムサービス協会が制定した、プロバイダ責任制限法の運用についてのガイドラインと書式に沿って行うものです。

この方法については、1か月程度で対応されることがあり、下記の裁判手続よりはコストが低いという点がメリットですが、1と同様に、多くのサイトではこの方法での開示に慎重な態度を取っていることや、アクセスログ保存期間経過のリスクからすると、この方法を用いるのは、強い差別的表現が用いられている等、投稿内容自体から明らかに権利侵害等の要件を満たすといえるような場合に限られると思います。


3 仮処分について
この方法については、裁判所の決定出るまでに2週間程度かかります。裁判所の決定が出てから実際に情報が開示されるまでの時間については、サイトごとに異なります。12の方法と異なり、裁判所に納める費用・担保金、弁護士費用等のコストが高くなるという点がデメリットですが、開示決定を得ることができれば、比較的スムーズに情報が開示される点がメリットです。

仮処分と下記4の開示命令申立については、どちらを使うのが適切かという議論があります。これについて、開示命令申立においては、IPアドレス等の情報の開示と同時に、電話番号等のアカウント情報の開示を求めることができるのに対して、仮処分ではこれができないことから、開示命令申立を使うべきだという考え方もあります。しかし、IPアドレスとアカウント情報の開示を同時に求めた場合、アカウント情報の保有確認が終わるまでIPアドレスの開示決定が出ないため、手続が先に進まないというデメリットがあります。

また、X社(旧ツイッター社)等は裁判所が発信者情報開示命令を発令してからIPアドレスを開示するまでに相当な期間を要しているという指摘があるため、開示命令申立を使うと、ログ保存期間を経過してしまう可能性が高くなると思われます。
そのため、私は、原則として仮処分を用いるのが良いと考えています。

4 発信者情報開示命令申立について
この方法は、法改正によって新しく導入された制度です。この方法については、3記載のとおり、同時に携帯電話番号等のアカウント情報の開示を求めることができる点がメリットと言われることもありますが、この方法にすると、アカウント情報の保有確認が終わるまでIPアドレスの開示決定が出ないために手続が先に進まないというデメリットがあります。

5 訴訟について
この方法は、法改正前はアクセスプロバイダに対する開示請求の場面で広く利用されていました(私もよく使っていました)が、法改正によって上記4の発信者情報開示命令申立が導入されたことで、ほぼ利用することはなくなりました。

開示請求の種類の一般論は上記のとおりですが、どの制度を使うのが良いかは、サイトによっても異なります。これについては、別のQで詳しく解説いたします!

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