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さてここでは、元通信制高校の職員、そして後進の育成に携わった経験を活かし、指導をしていく際に自身が意識したことや、実践したことを元に私の引き出しを少しずつ開示していければと思います。

色々な場面で応用することもできる内容にしていけるよう、是非参考までにご一読いただけると幸いです。

第5回目のテーマとしては「役割は成長へ」

社会で活躍していく中で、誰もが何かしらの役割を担うことになることと思います。
ただその役割を持っていることをどれだけ意識しているか。
役割が、行動を変えていることにつながっていることに気づけるか

は、どうでしょう?

では、今日も引き出しを一つオープンしていきましょう。

登校し続ける生徒。でもその先に…?

これは私が、通信制高校の教務(生徒指導主担)をしていた頃。
通学型の通信制高校なので、通学するスタイルとして基本は
「全日制と同様に通学することが出来る」
という形で、意識的にはなるべく通学してもらうように、職員は働きかけながらも、少しずつ練習していけるように…という環境を整えておりました。

ですので、毎日しっかり朝から登校する子もいれば、途中からくる子。
もしくは週5日の中で1日しか来ない子。
もしくは本当に久々に登校する子。
多くのタイプの生徒が在籍しています。
※どうやって前向きに登校してもらうか?というところに注力をしながら、担任業務や教務指導・生徒指導・保護者対応を行うのが基本というところですかね。
※色々なタイプの通信制高校がありますので、あくまで私の在籍していたところの話です。

となっていくと、
成長段階として、登校できる段階を超えた次はどうしていくか?
というところは、やはり考えていかなければならないわけです。

ここからは、とある生徒の実例のお話です。
非常にまじめな生徒ではありますが、集団の中に入る/授業を受けるということが非常に苦手で、なかなか教室の授業に入るということが出来ない男子生徒がいました。
その生徒は、登校率100%、そして課題の提出率も100%
なのですが、どうしても教科科目の授業だけは入ることを嫌がり、自習のスペースを活用し課題のわからないところを職員に聞きに来るというスタイルで学校生活を過ごしていました。

登校率100%の裏側には学校でのイベントが楽しい。課外活動が楽しい。などがあるので、学校のために貢献しよう!というスタンスは確実に持っているところに目を付けました。
実際は私の担当生徒ではなかったのですが、担当職員とすり合わせをして、本人に
「ちょっと、お願いがあるんだけど。学校に届く新聞を自習スペースにいつも先生が整理しながら、設置しているんだけど”新聞係”としてその役割任せてもいいかな?」
これをまずはお願いしました。彼は、即承知をしてくれてその後、完璧に新聞の整理をしてくれるようになりました。そしてその後の効果は、私の予想より大きなものとして跳ね返ってきました。

自習スペースの「新聞」の整理をする

自習スペースの清掃状況が気になりだしたのか、書棚の整理をする

書棚整理のために、教科書や参考書の種類を分け始める

周りの生徒からもいつも、あの整理をしてくれる生徒は誰なのかという話になり、職員を仲介にしながらも、友人が出来始める

一緒に授業出れば、教えるし、自習室で教えるよーという仲間が出来る。

その、1年後…。後輩にその役割を任せるようにもなる。

誰がここまで予想できましたかね。
私の意図は、
新聞係への任命→登校する意味付けをさらに強くする→称賛を浴びることによる自己肯定感の創出
くらいまでしか想像していなかったのですが、ここまで「新聞係」から発展するとは、思いもよりませんでした。

つまり「役割」が本当に「成長の場」を与えたことになった一つの事例です。
彼に最初に与えた役割は
「新聞をキレイに整理すること」
でも、それを人のためや、もっと何かできないかを考え抜き
「新聞が設置されている周りをきれいにする」
「そうだ自習スペースをきれいにしよう」
とその役割を飛躍させていったことなのだと思います。つまり何気ないその役割を彼は本当に”考え抜き”、実践したのでしょう。


”役割”の成長は、子どもたちからも学べる

これは、新人の職員教育役になった際に、実際に事例として見せた例です。
まずその話をする前段階に、その新人の職員がいわゆる勤め始めて3ヵ月頃(7月頃です)。悩み相談がありました。

「色々なことをしていく中で、これが自分のできることだ!という自信を持った何かというのがわからないです。周りの先輩たちが色々なことが出来るので、ついていけるかどうか…」

私は当時、その職場の責任者でもあったので、1つだけアドバイスしました。

「じゃあ、1つだけ数値を確実に追って、結果を残せるようにするために、〇〇検定の受験者数、つまり申込者数を〇名、そして検定の合格者数を〇%以上に出来るように指導をするというのを、半期の目標にしてみよう。」
「他の業務もあるとは思うけど、これは必ず常に意識して、実践できるようにしてみよう!」

とだけ伝えました。そうしたものを伝え、経過を見ている最中、当時の生徒会にあたる子たちから外部との連携イベントに関して、相談事がありました。

「校舎に来てもらう人に、制服でいれば生徒だということはわかると思いますけど、名前を覚えてもらったり、生徒会の人だということを分かってもらうために口で説明するのも難しいんですが、どうしたらいいでしょう…?」

「それはつまり、初めて会う人に対して、名前を覚えてもらう、かつ自分が生徒会の人間だとわかってもらうためにはどうしたらいいか?ってことだよね?大人でもそうした場合はどうしていると思う?」

……「あ!『名刺』使ってますね!生徒会用の名刺を作ってもらうことは、可能ですか?」

そこで、私はあえて先ほどの新人の先生に聞きました。「どう思う?」

「とても面白い提案だと思うので、作ってみるといいんじゃないかな」
…ということで、作る方向で決定しました。
そこで私はその新人の先生も含めて、全員にこう伝えました。

「じゃあ、”生徒会としての名刺”を作る方向性でいきたいということで、いつも通り企画書・提案書、作成よろしくね。せっかくなので〇〇先生(新人)にもその打ち合わせは入ってもらうように、日程調整して下さいね」

その話の後、新人先生から質問がありました。なぜ私が入るのですか?と。
ここに私は明確な意図があったのと、新人先生にも気付いてほしい観点があったので、

「彼ら(生徒会)が何を考え、何を作ろうとするかをしっかりと観て、子どもたちからも学んでね」

とだけ伝えました(今、考えると性格悪いですね笑)


受けた報告とその後日談

その後、新人先生と生徒会からは、非常にいい顔をしながら私の元に報告が挙げられてきました。
その内容は、
目的は認知してもらうため、そして安心感を持ってもらい、更にあの人は誰だったかということを忘れないでいてもらうためにする
そのために工夫をして
表面は…、裏面は…、というデザイン案まで書かれた企画・提案書が提出されました。じゃあ、これは正式に職員会議で議題にさせてもらうので、預かります。ということで、一旦は終了。

その後、新人先生に様子を確認しました。
※せっかくなので職員会議の議題提案者にもなってもらうためのヒアリングも兼ねていましたが笑

驚きました。子どもたちは「名刺を作る」ということだけじゃなくて、その役割や目的も考えていて、どういう風に渡すのがいいのかということも含めて、『社会人のマナー本』とか『マナー検定』の本とかを買って学んでいる子もいました。もっと学校見学に来た中学生の子たちにもわかりやすいようにとかでフリガナをいれたりとか、メッセージをかけるスペースを残すとか、たくさんの発想をもって、取り組んでいてすごいと思いました…!

ポイントはそこなんです!よく気づいた!
”役割”あるいは”身分(ステータス)"をもっている状態であれば、その影響範囲や考える枠が変わります。この子達は、単純に自分たちの身分を証明するということではなく「生徒会としての名刺」という役割・身分があったからこそ、本当に考え抜いたのだと思います。

誰に渡すのか?
どういう存在の人が渡すのか。
そのために必要な知識は?
考えなければならないことは?
想定しておかなければならないことは?
もっとこうすればいいという観点は?

本当に頭が下がります。
そして新人先生にもあえて伝えました。これは”役割”が与える力だと思います。そして、いま担当している〇〇検定に関しても、集めるためには何をすればいいか。そして合格してもらうためには、何をすればいいか…。
こうして考え抜きながら、トライアンドエラーをしていく中で、おそらく正解により近づきながら、自身の持ち味や強みが身についていくということです。

〇〇検定の結果は、初回から上手くいくことはなかったですが、ここは今回は私が頑張るという「突き抜ける」ことに対する学びを感じてもらえたことはその後の成長を見ていて、感じてます。

役割は人を成長させます。
ステータスも人を成長させます。

よく、役割が悪い方向に働く・・・という話もありますが、私はどちらかというと役割が悪い方向に働いたのではなく、その方向が間違っているかどうかということを”内省”もしくは”振り返り”・”総括”出来るかどうかにかかっていると思います。

子どもたちには、方向性の修正を
大人であれば、方向性の修正や”内省”の時間を

内省の時間…改めて大事だなと思います。

ご覧いただきありがとうございました。

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