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「シングルマザーを受け入れるということ」 vol.49

ふくちゃんの退村が決まった2019年春、サイハテ村の古参住人たちが相次いで離村することになりました。


理由は、「村づくりに対する想いはあまりなく、ただのんびり暮らしたかった」とか「家族の面倒を見るのが精一杯でサイハテ村のことまで手が回らない」や、「お気楽で自由なサイハテ村じゃなくなってきたから」など様々な理由がありました。


が、その変化を強く意識させたのは自分だということもあり、本当にこれが最善だったのかと考えることが今でもあります。

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サイハテ村の発展を求めるあまり、大事なものを失っているような気がしたり、この選択の先にどんな世界が待っているのかが正直分からなかったからです。


結果、半数以上の古参住人が離村することになり、サイハテ村は互いに支え合うことができなくなる一歩手前の状況に陥りました。


サイハテ村の共同スペースや共同車の維持管理など住人の共益費(月に大人1人15,000円)でまかなっていた運営費も半減することになり、急いで新住人の募集をかける必要もあったりで、悲しんでいる余裕もありませんでした。

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会社でいうなら組織の中枢を担っていた社員がいきなり半分いなくなる訳ですから、悪く言えば倒産の危機、よく言ってもどん底って状況下でありながら、さらに試されるような出来事が起こります。


妻が、「新住人に4人の子どもを抱えたシングルマザーの友達を受け入れたい!」と提案してきたのです。


古参住人が離村したことで、家族世帯を受け入れられる大きめの住居が一つ、小ぶりの住居が一つ、そして単身者用のコテージが二つ空いてはいたのですが、その中でも一番大きい家を使わせて欲しいと言ってきたのです。

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僕は、身を切るような想いで内部改革を推進し、言わばサイハテ住人たちの暮らしよりも、社会を変え得る新しい世界の在り方を表現できる場作りへと舵をきった矢先だったこともあり、猛反対しました。


共益費も半減し、一層互いに支えあっていかなければいけない崖っぷちの状態で、まだ小さい子どもを4人も抱えたシングルマザーを迎えられるだけの余裕もなく、今のサイハテ村に必要なのは、村づくりに情熱と技術を持ち即戦力になるような人材だと正面からぶつかりました。


ただ妻としても、サイハテ村の近所に住むそのシングルマザーの友達を支えるために、日々の暮らしの合間をぬって、定期的に子どもを預かったり、家の掃除や改装など出来る限りのサポートをしてきましたが、子どものアレルギー体質や不登校、財政面でのトラブルが重なり、精神的にギリギリな状況で、いま手を差し伸べないと自ら命を絶ってしまうかもしれないという危機感がありました。

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僕はそれでもどこか他人事なところがあり、サイハテ村は慈善事業でも生活保護支援センターでもないとつっぱね続けました。


この世界には困っている人なんてそこら中にいるし、日本から遠く離れた国では食べるものがなくて毎日のように餓死者も出ている。


ただ、僕もそんな理不尽な社会が嫌で嫌でしょうがないから、この世界からあらゆる暴力がなくなっていき、人が互いに手を取り合って暮らせる社会モデルを一日でも早く作ろうとサイハテ村で活動していました。

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言葉は悪いけど、今助けられる数人ではなく、未来で助けられる大勢のために、僕は今の段階ではシングルマザーをサイハテ村で受け入れるべきではないと主張したのです。


サイハテ村の中でも「シングルマザーを受け入れるべきか?」という議題は反対派と賛成派に別れました。賛成派は子育ての大変さや育児ストレスが及ぼす精神的影響などを知っている感情陣、反対派は合理的な思考で、サイハテ村の発展を考えるなら即戦力を入れたい論理陣。


ただ、道徳的に考えると、いま助けられるシングルマザーを見捨てる選択は劣勢であり、反対を全面的に主張する人は僕くらいだったので、また熱くなったりするわけです。

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僕は「先のことなんて分からないとか、ぶつかり合うのが面倒で主張をしなかったり、一時的な感情論で物事を決めるなんてどうかしてる!」と、妻に何度も反対の意思を伝えました。


新住人の受け入れはサイハテ住人の総意で決まるので、全員が受け入れることに賛同しないといけないので僕が最後の砦でした。


シングルマザー受け入れを反対する自分に、妻が最後に言ったのは「近くで助けを求めているシングルマザーを見捨てて、将来大勢を救えるようになった時、胸張っていられるの!?」でした。

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これは、〝未来のために今の犠牲を受け入れるのか〟とか〝未来を作っていくのは想いなのか合理的な戦略なのか?〟的な問答で、僕のアキレス腱でもありました。


要は「一人のシングルマザーも救えないって言っている人が、沢山の人を救えるって言っても説得力もないし、沢山の人を救いたいならいま助けられるシングルマザーを救うところから本気でやれ!」ってことなのですが、もうここまで来るとお手上げです。


サイハテ村の住人として、みんながそれぞれに受け入れた事に当事者意識を持ち、助け合えるならと前置きし、シングルマザーと四人の子どもを新住人として受け入れる事にしました。


次回は、vol.50「数値で測れない大事なもの」です。フォロー、スキ、シェアしてくれると励みにります!^ ^

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