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「革命を起こしたサイハテインカム制度」 vol.43

僕と同じか、それ以上にスピード感の速い住人がいるのですが、それがウチの嫁です。「チンタラせんで、ちゃっちゃとやらんかい!」と、ズバッと言うような性格と、やると決めたらやる、という強い意志を持った女性なんですが、


住人だけでは村の維持管理もままならないし、ゆっくりペースに合わせることもできないとのことで、村づくりに専念できるスタッフが欲しいと要望がありました。


僕はその時ちょうど新しい社会保障制度である〝ベーシックインカム〟に関心があり、調べていた時期だったので、面白い実験ができると考えました。

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簡単に言うとベーシックインカムとは、「すべての人に無条件で一定の額のお金を給付する」制度のことで、赤ちゃんから老人、サラリーマンも無職も誰もが無条件でもらえるお金ですが、言うなれば生きていく上で最低限必要な生活費を賄うための社会保障的な役割を持っていて、2017年からは世界的に社会実験が始まっています。


具現化にはベーシックインカムの財源をどう確保するか、年金や医療費などの他の社会保障との兼ね合いなど様々な課題がある中で、議論の中心にあるのは「働かなくとも最低限の生活ができるようになれば、人は働かずに社会が衰退していくかもしれない」と言う主張です。


じゃあ、決まった時間は村づくりの仕事を手伝ってもらい、その代わり最低限暮らしていけるだけの食事と家屋を保証したら、人はどんな感情を持ち、日々を過ごすようになるのか実験してみることにしました。その名も〝サイハテインカム〟

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2018年2月から始まったこの制度は、ゲストでも住人でもない新しい滞在スタイルとして注目を集めました。簡単に説明すると、二週間以上サイハテ村に滞在できる方で村づくりに積極的に携わってみたい方が受けられる制度。


一日6時間週6日稼働で、 畑仕事や鶏やヤギの世話、住人が依頼する様々な仕事を手伝ってもらう代わり に、食事と家屋など生きていくために最低限必要な環境を提供しますと言ったシステムです。財源が問題でしたが、サイハテ村の住人から月に5千円ずつ集めて運用することにしました。


サイハテインカムは外部からマンパワーを集めるという目的を持っていましたが、「〝お金のいらない暮らし〟をサイハテ村で体験してみませんか?」というキャッチーなPRが成功し、2年間で100人超というマンパワーを投下することができました。

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これはサイハテ村にとって、革命的なことで大きな変化を生み出すことになりました。


まず一つは目的だったマンパワーの確保です。例えば住人が「ここに花壇があったらいいのに」と思ったとしても、今まではそれぞれ忙しくて手助けも呼べないし、一人ではやり切れる自信がないから実現できなかったことが、スタッフの手によってあっという間に形になったり、猫の手も借りたいほど忙しい時に家事や、育児のサポートがもらえたおかげで親子ゲンカが減ったなどの効果が現れたのです。


それもそのはずで、今までは、住人は自分のことや家族のことで手一杯で、サイハテ村のパブリックな部分への貢献は良くて一日一時間。週五、六時間ほどなので、住人みんな入れても月に50〜100時間程度しか村づくりにマンパワーを注入できていなかった。

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それが、サイハテインカムが始まってからは週に120〜200時間、月だと500〜800 時間という10倍近いマンパワーがサイハテ村の発展を支えることになったのです。ほとんどのサイハテ住人たちが、収入を生み出す経済活動に忙殺され、創造的な活動どころか、村の機能を維持するための草むしりや掃除と言った作業まで手が回らない状況を打開したのです。

会社でいうなら、社員ではなく、めちゃくちゃ働く若者が時給100円以下でガンガン働きに来てくれるみたいなことで、サイハテ村に活気が満ちてきました。


また、ゲストでも住人でもないという立場は両者のつなぎ役にもなり、若者たちが入れ替わり立ち替わり来てくれる事で、どんどん新しい風が流れるようになったのです。

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コミュニティは水と同じで、新しい水が入って来ないと淀んで濁ってくるもの、毎月4人 から8人の若者がサイハテインカムで来てくれるので、常にリフレッシュした場を維持できるようになりました。


そして、スタッフ同士恋をすることも多く、この2年間で数組のカップル誕生、結婚し、子供を産んだ人や、スタッフを経て住人になる人もいたりと、今はサイハテ村に住む前の登⻯門になっています。笑


※2020年からはインカム制度は、村づくりを学ぶスタッフ体験にシフトし有料化(ひと月2万円で宿泊・食費込み)になっております。詳しくはHPにて。


次回は、vol.44「3人目の出産、産小屋はじめました」です。フォロー、スキ、シェアしてくれると励みにります!^ ^


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