子どもの体調不良とうまく付き合いたい

駆け出しのライターとして出会ったメンバーたちが、毎回特定のテーマに沿って好きなように書いていく「日刊かきあつめ」です。
今回のテーマは「 #身体の不調 」です。

30代になって、あきらかに身体の不調が増えた。10代のころは、どんなにパソコンに向かい続けても肩こりや腱鞘炎で悩むことはなかった。20代のころは、工事現場で20kg近い部材をひょいひょい持ち上げていた。それが今や、1時間も座り続けたら身体じゅうで筋肉のコリとハリを感じる。10kgちょっとの息子を抱き上げるのに、腰をいわさないかと毎回すこし緊張する。

その代わり、身体の不調が増えるのに比例して、それらとの付き合い方も学んできた。こういうのも年の功と言うのだろうか。

腱鞘炎になったら手首だけでなく、ひじや二の腕、肩、わき、胸などもほぐす。寝違えや肩こりも同じく、首や肩だけでなく、つながっている筋肉を意識しながらほぐすと、割り合い楽になる。ただ、炎症を起こした直後にマッサージするとかえって痛みが増すので、まずは冷やす。ある程度炎症が落ち着いたところで軽くほぐしてみて、抗炎症作用のある湿布を貼って様子を見る。

数年前は腱鞘炎や寝違えが慢性化していたが、こんな具合で、ある程度セルフケアのコツを覚えると、1日か2日でずいぶん具合がよくなる。症状が出る頻度そのものもずいぶん減った。風呂上がりのストレッチの成果もでているのだろう。最近はストレッチも、どの筋肉を伸ばしたいのか意識しながら取り組んでいる。何もわからず、ポーズだけ真似してやっていたころに比べると、あきらかに効果が違う。ほんの数日で、目に見えて脚が開きやすくなったりする。

こういうとき、身体は劣化しても、やはり経験は蓄積するのだな、と実感する。身体の不調そのものを撲滅することはできないが、上手に付き合えるようにはなるのだ。




しかしまだうまく付き合えていないのが、子どもの体調不良だ。

子どもが体調を崩すと、生活リズムが崩れる。前回も触れたが、まず熱が出ると保育園に預けられない。保育園に預けられなければ日中の仕事が滞る。滞った仕事は、睡眠時間を減らすか、週末に子どもの面倒を妻に任せるか、そのどちらかで対処することになる。私か妻、あるいは両方の体力と精神が削られていく。このダメージが思いのほか大きいので、子どもが体調を崩したらこなせなくなるような仕事は、もうはじめから受けないことにしている。そのぶん収入も減るけれど、私は金銭的な余裕より心の余裕がないとダメになる人間なのだと、最近ようやく気がついた。

また、地味につらいのが咳だ。子どもはまだ咳を上手にできないから、苦しそうで聞くに堪えない。それに加えて、うるさい。なんせ遠慮がないので、目の前だろうが耳元だろうがお構いなしだ。不意に大声を出されれば嫌でも身体に力が入るし、全力の咳を真正面から顔にかけられれば、すくなからずイラっとする。もちろん子どもを責めたいわけではない。しかし感情が波立つのを完全に抑えるのも難しい。ところが世の中には、「咳をして苦しんでいるのは子どもなのにイライラするなんて親失格だ」という声もあると見かけた。確かにイライラした気持ちをダイレクトに子どもにぶつけるのはどうかと思うが、沸き上がった感情自体を否定するのはちょっと無理がある。そういう人は自分の首を絞めていないだろうかと、余計なお世話を考えたりする。

子どもを労わるために自分の感情を押し殺す。そのやり方は、すくなくとも私には向いていないようだ。イライラすることもあるけれど、その気持ちはいったん横に置いて子どもと向き合う。たぶん、それくらいがいい。

しかし不思議なもので、こうして文字にしてみると、何をそんなにイライラすることがあったか知らん、と我に返る思いもする。そうすると、改めて目の前で息子が咳をしていても、いら立つ気持ちなんてすっかり湧き起こらない。子どもの体調不良とうまく付き合う鍵は、そのあたりにあるのかもしれない。




ところで、子どもの体調不良と言えば不思議なことがあった。

風邪で高熱を出したあと、体調がもどるとなぜか少し発達が進んでいる印象を受けたのだ。40度近い熱を出した翌日、それまでほとんど声を発さなかったのが、「て、て、て、て、て」「ぱ、ぱ、ぱ」なんて口にしはじめた。それ以前に比べて、何もないところでよく立ち上がるようになった。

気のせいだろうと思いながら、そんなことが二、三度続いたので、ひょっとして、なんて考えている。

文:市川円
編集:アカ ヨシロウ

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