「堺屋太一氏の遺言」を読みながら

『堺屋太一氏の遺言「2020年までに3度目の日本をつくれるか」』

止められない変われないエニアグラム・タイプ6日本の話として読みました。
堺屋さんの文章に沿いながら雑多に脈絡無く感想を述べていきます。

まずは人物紹介から、

堺屋 太一(さかいや たいち、1935年(昭和10年)7月13日 - 2019年(平成31年)2月8日)は、日本の元通産官僚、小説家、評論家。位階は従三位。勲等は旭日大綬章。

「大阪万博」の企画・実施に関わり、『油断!』(1975年)、『団塊の世代』(1976年)で有名になった人だという記憶をしています。
NHK大河ドラマ第20作『峠の群像』の原作者でもあります。


悪人でもアホでもない軍人や官僚が、真剣に一億玉砕だと言っていた。小学校の先生まで同じことを言い触れていた。
私は疎開前の昭和20年1月、先生が「一億玉砕」ということを言い出したことを覚えています。私は一瞬考えて、「日本国民一億が玉砕したら、この戦争は負けではありませんか」と先生に聞いて、ぽかぽか殴られた記憶があります。
誰が考えても、一億玉砕したら日本は負けだということは分かっていたはずです。しかし、そういうことを言うと殴られる。それが、今の日本と非常によく似ている。

エニアグラムのタイプ6日本は一度動き出したものは止められないのですよ。そこから先は自動操縦な感じで、止めないことを前提に話が進みます。

昨年のオリンピックのときには新型コロナの感染拡大中だったわけです。
でも止めなかった止められなかった。一度動きだしたものは、どんな正論でも止めることができないのが日本です。
そこから後は結果次第です。うまく行くかも知れないし、うまく行かないかも知れない。どちらにせよ、自分(たち)で止める力はもう無いわけです。進むのみ。手放し運転。

このエピソードにある「日本国民一億が玉砕したら、この戦争は負けではありませんか」という小学生の堺屋少年に対する教師のアンサーは、「ぽかぽか殴る」であったわけです。ある意味、思考停止でもあります。


タイプ6国民、日本人の思考停止
タイプ6は心配事・不安に どう反応しているか、 精神レベルにより どう変化していくか


官僚システムというのは、自分の官僚としての権限、立場、既定の方針などが変わらないことを前提としている。要するに、日本は降参しないということですね。それで勝てないとなったら、玉砕という選択しか残らない。それを当たり前のように吹聴して、それ以外のものを異端分子としてみんなで弾圧する。

今、動いている動きを止めようと言う者がいれば、すなわちそれは「敵」であり「異端分子」なわけです。町単位でも、組織単位でも、企業単位でも、国単位でも。
そのような感想を持ちました。
何か事を起こす者を撃ち落とす行為を組織は「正当防衛」と思っているかも知れません。

※ 『日本のITは何故弱いか』「撃ち落とす」つながりで

だからそれが小学生であっても、「日本国民一億が玉砕したら、この戦争は負けではありませんか」と言えば、先生がぽかぽか殴る。その行為も先生から言わせると「正当防衛」になるのかも知れません。


ここで少し脇道にそれたことを書くと、
もしも組織内に問題や犯罪があったとしても、それを認めることにより組織としての安心・安全・安定が崩れるのであれば、
それが(より広い視野である)社会や常識から見て当然のごとく安心・安全・安定を脅かす「問題」であったり「犯罪」であったり「異端分子」であったとしても、組織の安心・安全・安定を優先して守ろうとすることも想像できてしまいます。

国、企業、その他組織の問題の隠ぺいは後をたちません。
それらの中に「問題人物」「問題行動」の隠ぺいもあるのではないか? と思い始めています。


堺屋太一さんは、日本の失速について、こう述べています。

石油ショックが来て、これで日本の青春が終わります。その後の10年を私は「紫雨の季節」と呼んでいるんです。温度は高いけれども、ロッキード事件が起こるなど何となく気色悪い。そんな時代が10年も続いたわけです。

 この間に日本は、新しい産業、経済社会体制を作るべきだった。だけど、その時はまだイケイケどんどんの香りが高かったから、政治的にはロッキード事件など気色悪いことがあったけれども、経済的にはみんなまっしぐらに規格大量生産を追求していました。
 20世紀の技術というのは、大型化と大量化と高速化、この3つだけを目指していたんです。それでジャンボジェット機ができて、50万トンのタンカー船ができて、5000立米の溶鉱炉ができた。まさに、あらゆる分野で最高速度、最大規模の製品が生まれたのが、70年代でした。そこが限界だったんです。

 それから以後、ジャンボジェットより大きな飛行機は、最近のエアバスの超大型機ぐらいまでありませんでしたし、50万トンのタンカーなんてもう造らなくなった。溶鉱炉も石油コンビナートも大きくなくなり、多様化の時代に文明が一気に変わったのです。

 ところが日本は、その後もまだ高速化、大型化を志向し続けた。アメリカやヨーロッパが文明を転換をしている間に、日本はひたすら規格大量生産を続けた。だがら、その間の80年代に輸出が猛烈に伸びたわけです。欧米と日本の文明のズレが、一時の繁栄をもたらしたんです。これが1つの日本の頂点、戦後の頂点ですが、それでそれが行き過ぎてバブルになって大崩壊した。

「紫雨」の読みと意味を調べたのですがよく分かりませんでした。「しう」でよいのでしょうか? 意味はどうやら「紫陽花あじさいの季節の雨」のことを指しているみたいです。違っていてもご容赦を。青春が終わって朱夏への移行期という意味でしょうか 。
それで朱夏がバブルであって、それがはじけて、白秋、玄冬へと日本は向かっているわけです。
日本が実りの秋として得られたのは何だったのでしょうか? 少なくとも、まだ日本は国としての規模は大きいはずです(統計など、その規模の根拠とするところが信用できなくなってきていて心もとないですが・・)。
高度成長をし、バブルの果ての、日本としての秋の実りは何なのでしょうか?


読んでいて思ったのですけど、
たぶん、生き方も、学習の方向も、すべて転換する必要があるんです。
でも、一度動き出したものを変えられない。変えることに慣れていない。その間の試行錯誤の混沌に苦痛を感じる。
変化を嫌って、なるべく変わらないように皆でしている。
世界的な動きと自分たちの動きがかみ合わないので、結果が出ない。

それで「正解」を探し出してそれをコピーしようとしている。

今の時代は、「スピード」「試行錯誤」「挑戦」が必要なのでしょう。他にもあると思いますが、これらを複数必用としているようです。そして、タイプ6日本は安心・安全・安定が好きなので、これら「混沌」「未知」に類するものを苦手としています。いくら「正解」をコピーしようとしても、それが性格的なもの、精神的なもの、態度的なものであれば、そういったものまではコピーできず、今、日本は苦悩しています。


堺屋太一さんは、少子化について、このような意見を述べています。

官僚が個人の人生設計まで全てを決めていました。それに従っていれば、それなりの中流になれた。いわゆるジャパニーズドリームですね。逆に、官僚が敷いたルートから外れると、とことん損をした。役人の言う通りに生きるのが良い国民で、それに反するのは悪い国民だと。だからニートとか、パラサイトとか、もう散々悪く言われるんですよ。

 官僚が作った人生設計に従うと、教育年限が延びるに従って結婚が遅くなるわけですよね。
その結果、人口減少がものすごく速くなった。今、日本はなぜ人口が減少しているかというと、24歳以下の女性で子供を産む人が非常に少ない。アメリカは1000人の女性のうちで140人が24歳以下で子供を産むのに、日本は40人しか産まない。この差が今の日本の人口減少の最大の理由なんです。これはもう、全部役人が決めたんですね。

 頭脳活動に関わりたい人は、東京に住まなきゃいけない。地方では住めない。例えばマスコミであるとか、貿易関係であるとか、国際関係だとか、これは必ず東京へ来いというような、官僚の思うがままの日本をつくったわけです。一人ひとりの官僚はそんな大げさなことをしているつもりじゃないんだけど、全体としてはそういう官僚の意志が働いている。いわゆる、「大いなる凡庸」という状態になっている。

そしてその解決策。

 だから、今、日本がやらなきゃいけないのは、この官僚システムを壊すことです。

 官僚は皆、ものすごい正義感を持っている。ちょうど戦争中の軍人が中国に侵略することも、真珠湾を不意打ちすることも、正義感を持ってやっていたのと同じように。この官僚の制度を破壊するというのが、(明治維新、戦後に次ぐ)3度目の日本です。

これ、日本人にとっては、それまでの日常を壊すことなんですよね。
政府や自民党支持率は、何もなければ復元します。その復元力は強いものがあります。
こういった日本で、官僚の制度を破壊できるのか? といえば疑問があります。
もしそういった動きが出た場合、官僚のほうでも自己を守ることを最優先させると思われます。その頭の良さを自分たちの身を守るために最大限に使うことでしょう。
国民のほうでも「未知」や「混沌」が嫌いなので、現状維持を期待します。



最後に感想です。

未知や混沌が苦手な日本は「(ルールを)壊す」こと「崩す」こと「引く」こと、あるいは「脱ぐ」ことがとても苦手です。
その一方で、「(ルールを)作る」こと「固める」こと「足す」こと、あるいは「着込む」ことがとても得意です。あとは、現状を維持する「継続」「前例踏襲」も得意です。

そして、ストレスが高まるほどに、作り足し固め着込み、それを維持します。
ここを緩めるのが必要なのですが、・・・難しいところです。
どうしたらいいものか。
その行為のやり過ぎが今悪く作用しているのに。

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