「・・・ってえ、○○さんが言ってました」から見えてくる日本

 あるとき、タイプ6の同僚と話をしていたら、その同僚がかなり踏み込んだ批判をしていたときがあります。
 エニアグラムの性格タイプのタイプ6は『慎重な人(レニー・バロン/エリザベス・ウエイゲル)』と言われるくらいの人で、そういう前提で見るとこの発言はちょっと慎重では無い発言でした。
 それで、「そこまで言っちゃうんだ・・・」と思いながら、相手の言ったことに対し黙っていると、
 その雰囲気に耐えかねたのか、自分の踏み込んだ批判が自分を危険な立場にしていることを感じとったのか、
「・・・ってえぇぇ、えん☆さん(この文章を書いている私)が言ってました」
と付け加えてきました。
 つまり、さきほどの踏み込んだ批判は、私の発言だったと言い始めたのです。
 これは、もちろん二人だけの話の中で言ったことなので、半ば冗談のような形での発言です。
 なので、罪を私になすりつけたわけではありません。
 しかし『慎重な人』が、慎重では無い発言をしてしまって、その責任を取りたく無い気持ちが表れている発言ではありました。

 ここからエニアグラムを使った日本論に入ります。

 日本は、エニアグラムのタイプ6の国だと言われています。
 ですから、個々人もメディアも自分の意見をいうのに慎重です。

 それは芸能でもです。
 今は、どうか知りませんが、和田アキ子さんが「ご意見番」と言われていたころ、芸能リポーターは、芸能ニュースの感想を和田さんに求め、「・・・って、和田さんが言ってました」というのを繰り返していました。
 何か不満があるときでも、それを和田さんに言わせて、和田さんを前面に出して、「・・・って、和田さんが言ってました」という形にしていました。

 まあ、「子宣わく(し のたまわく=孔子先生のおっしゃるには)」を使って、自分の意見を言う国ですからね。今でも「○○は、こう言っています」という本は多いですし、自分の意見として言わずに、「虎の威を借る狐」というか。こういった偉い人を前面に出しておけば、自らは責任を取らなくていいですしね。

 タイプ6は、安心・安全・安定が好きな人です。自分の意見というものは、その安心・安全・安定から、抜け出す行為です。これは、タイプ6にとって、危険な行為です。意見なんて、皆に合わせているほうが安心・安全・安定です。
 不満な気持ちはあっても、まず、周りの様子が気になるのがタイプ6というものです。
 だから、おかしいと思っても、不満があっても、自発的に動くことができず、批判したいときは、「どうぞ、どうぞ」と譲り合う態度を取り、誰かが言い出すのを待っています。

 一時期、「安倍政権への批判記事が多すぎる」といった意見がありました。また、同時に、「これらの問題は以前から言われていたことなのに、マスコミは、なぜ、今ごろ、もりあげているのだ」といった意見もありました。
 これは、安倍政権の支持率が低下してきたのが原因で、それで、「・・・って、国民の皆さんが言ってました」ということをやっているのです。
 マスコミは、問題があっても、おかしくとも、世間の様子(や、政権の様子)をうかがって、あまり声を大きくして、言うことはありません。そんな中で、支持率が思いのほか下がって、その理由が、アンケート調査の回答で、例えば加計学園だったりすると、「・・・って、国民の皆さんが言ってました」とばかりに、加計学園のニュースに力を入れ始めます。
 もしかしたら始めから善悪の判断なんてどうでもいいのかも知れません。自分の意見など無く、ただ、世論の動きに押されているだけかも知れません。

 また、国民のほうでも、ニュースが盛り上がってくると、問題意識を感じた人が力を得て「・・・って、TV(新聞、など)が言ってました」ということをやり始めます。
 ここでも、もしかしたら、思考停止の日本人なので、問題意識など無いのかも知れません。ただ、ニュースが盛り上がっているので、そのニュースの多さに押されているだけかも知れません。

 そして、ときに、この双方の「庶民が話題にしている」「テレビが話題にしている」の相乗効果で、特定の人物が、集中的にやり玉にあがる場合があったりします。ですが、その特定の人物に自分がならないかぎり、(タイプ6社会の住人である)私たちの多くは、こういった風潮やもりあがり自体を批判することはありません。


 こうした動きは、一度動きだしたら止まらない大波になることもあります。自分の意見の代弁者として「・・・って、○○が言ってました」を使うのでは無く、自分が意識していなかった話題で、「・・・って、○○が言ってました」が聞こえてくると、その内容を無批判に受け入れて、自分の意思とは無関係に、何も考えないまま、「そうなんだ」とばかりに、その波に乗ってしまうということも起こったりします。

 思考停止の国、日本ではそういったことも起こりえます。

 以前、「発掘!あるある大辞典」というテレビ番組で納豆を紹介したら、納豆が売れに売れて品不足になった「"あるある"で、"ないない"」状態が起こったときなどは、「・・・って、"あるある"が言ってました」を、皆が無批判に受け入れたことから起きた大波でした。
 ちなみに、これに不審をいだいた週刊誌が調べたところ、この番組内容はねつ造だったということが分かり、つまりは、私たちの多くが、デマに動かされたことが分かった事件でもありました。


 こうやって見ると、「・・・って、○○さんが言ってました」というのは、
・自分の意見を言うときには「虎の威を借る」目的で使い、
・メディアは、「・・・って、庶民が言っていました」に影響を受け、
・庶民は、「・・・って、メディアが言っていました」に影響を受け、
・メディアと庶民の双方が一致して盛り上がると、誰かが、集中砲火を浴びることになり、
・庶民は、ときに、よそからの、「・・・って、○○さんが言ってました」という言葉を(発言者不明でも)無批判に受け入れて流されることがあり。それが大事件につながることもある("あるある"の他にも、女子高生の話から銀行の取り付け騒ぎが起こった豊川信用金庫事件や関東大震災での流言による殺傷事件がこれに当たります)。
・・・ということになるようです。

 勢いで書いたので、最初の話からずいぶんと違った話になってしまいました。
 共通する部分を無理やり見つけるとすれば、どれも、「責任が自分には無い」と言ったところでしょうか。

 普段は、「・・・って、○○さんが言ってました」を見ながら、メディアと庶民が、お互いに様子を見合って、影響しあっているようです。

※ この文章は修正しました。
最後の結論に書いたように、複数の意味があることに気が付いて、始めに書いた文章を修正しました。

参考
【エニアグラム用語】否定点とは?
タイプ6国民、日本人の思考停止

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