「ビッグモーター、団塊ジュニア企業の共通点」話を読んで思ったこと

『なぜ「ビッグモーター」で不正が見つかったのか セブン、レオパレス、大東建託の共通点』

各社の企業文化うんぬんということもある。が、この時代に生まれた組織特有の「人口増時代の拡大路線がやめられない」という問題もかなり関係していると考えている。

 一体どういうことか。ビッグモーターを例に説明していこう。同社が創業したのは第二次ベビーブームが終わった76年、現在の兼重宏行社長が、出身地の岩国市南岩国町で「兼重オートセンター」を個人創業したことが始まりだ。

 この会社は団塊ジュニア世代が成長していくのと、歩みを合わせるように山口県内で店舗を拡大していく。(略)

同社は団塊ジュニア自身が自動車を乗り回す時代(89~92年)から鈑金塗装専門工場や、外国車専門販売店舗など事業を拡大。(略)ファミリーをつくる人が増えていく時代(2001~05年)になると他県にも積極的に出店して、全国展開を加速。

現在のように北海道から沖縄まで263店舗、従業員6000人(2021年2月時点)の巨大企業に成長したというわけだ。

ただ、快進撃はここまでだ。全国制覇を達成したのはいいが、日本は毎年、鳥取県の人口と同じ数の人が消えていく。消費者が減ることに加えて、カーシェアリングや高齢化でクルマを手放す人も増えていく。つまり、これまでのような拡大路線は通用しなくなる。

売れているのに合わせて、店舗の数も多くしていって、顧客数のカーブが下がるころに、遅れて店舗の数が最大化している感じです。
なんだか、売れているから増産してそれで失敗した、おもちゃの「たまごっち」の話を思い出しもします。

ビックモーターは「たまごっち」な失敗をしたみたいです。それを取り返すには、正攻法ではもう無理なわけです。

ここで「たまごっち」の説明をウィキペディアから、

1997年を中心に、社会現象になるほど爆発的な人気を誇った。人気は本来想定していた女子高生以外にまで広まった。口コミの評判にマスコミの煽りが相まって異常人気となり、(略)その結果、たまごっちを持っていることが一種のステータスとなり(略)ブームの火付け役は、音楽番組で安室奈美恵が持っていたからだとも、テレビドラマ『踊る大捜査線』で和久平八郎(いかりや長介)が育成していたためだとも、スチュワーデスが持っていたからだとも言われる。
(略)
しかし、1998年に入るとブームが沈静化。それまでに経験したことがない大ブームに大増産を行ったバンダイは不良在庫の山を抱えることになり、在庫保管費などが経営を圧迫、1999年3月にメーカー在庫250万個を処分。不良在庫の処分により60億円の特別損失を計上し、最終的に45億円の赤字となった。大ヒットしたにもかかわらず、社内では失敗という声も出た。

フェラーリみたいに「欲しがる客の数よりも1台少なく作る」を行っていたら、ブランド力も保てたでしょうし、赤字にもならなかったでしょうに。・・・と事後諸葛亮 (ジゴショカツリョウ、後出し孔明)。

ヤフコメの中には、

ビックモーター、大きくなりすぎましたね
2台前の車はビックモーターに買取してもらいました
その頃はこんなに店舗も多くなかったし、対応も良く、買取価格がそこそこ高かったし、頑張ってくれたし、営業さんも良いヒトだった

前回の乗り換えの時も買取を見積もりしてもらったら、全然他社より安くて、あることないことイチャモンつけられたし営業さんの対応も良くなかった
ダメだこりゃと思ったけど、TVCMを出し始めることや店舗展開することことでコストがかかるから、やり方変えたんだろうなと思って、それからはもうビックモーターを選ぶことはなくなりました(略)

というのがあって、
これは、ビッグモーターが大きくなるにつれ、自分の巨体を維持するのに無理をしていることがうかがえる話となります。

おもちゃの増産だとか、店舗の増やし過ぎだとか、上が失敗したときに、ビッグモーターは下を焚き付けて尻拭いさせていたことになります。

ちなみに、今回のビッグモーター事件の内容ですが、
事故車の修理の水増しで、サンドペーパー(ブロック塀の擦り傷を再現)やゴルフボール(雹害・ヒョウの跡を再現)で修理箇所を増やしたり、部品の交換箇所を増やしたりしたということです。
設定された一台あたりの修理費用ノルマは14万円。
会社からの不正の支持は無いものの、不正をしない限り目標達成はできなかったそうです。
4人に1人が不正な作業に関与したということですが、無理なノルマを達成するためにもっと多くの人が関わった可能性があります。

ヤフコメには以下のような書き込みもありました。

ビッグモーターが修理に出された車を故意に破損して損保ジャパンに保険料を過大請求する

損保ジャパンは車の破損を理由に保険等級を引き下げ、被保険者の保険料を増額するのと、修理費用を過大請求する

ビッグモーターは購入する車の保険の殆どを損保ジャパンにする事で損保ジャパンへ見返りをする

両社とも多額の広告料を支払う事でメディアに客の呼び寄せと忖度をしてもらう

というWin−Winの構図らしいです

そして元の文章は
ここからが白眉なものとなります。

このようなシビアな現実を受けいれることができないのが、団塊ジュニア企業の特徴だ。拡大路線で店舗を増やして、広告をバンバン打てば、客もどんどん増えていく、という昭和の成功体験が強烈に刷り込まれているので、それを捨て去ることができない。

 すると、どうなるのかというと、現場に過大なノルマを強いる。そして、その無茶振りを誤魔化すように、景気のいい話を触れ回るようになる。

 「マネジメント」で知られるピーター・F・ドラッカーによれば、マーケティングというのは何もしなくても自然にモノが売れていく状態だが、それが機能していないときは「プロパガンダ」の力に頼るようになるという。つまり、自画自賛的な「広告」を大量に投入する物量作戦になるのだ。

 有名俳優を起用したテレビCMが山ほど流れていることが象徴的だが、Webサイトを見ても以下のように、同社がプロパガンダに力を入れていたことはよく分かる。 

 『ついに沖縄にも初出店! 日本全国に出店拡大中! 6年連続買取台数日本一!』

 『中古車買取価格満足度No.1 中古車販売顧客満足度No.1』

 太平洋戦争で戦局が悪くなればなるほど、日本軍は戦果を偽り、「世界一勇ましい日本軍の攻勢で、米国はもう降参寸前だ」と大騒ぎしていたことからも分かるように、日本型組織は苦境に立たされるほど、プロパガンダに力を入れる傾向がある。

 そして、現場には理不尽な目標を押し付ける。「お国のために玉砕して、敵を1人でも多く道連れにせよ」という命令は見方を変えれば、「現場に過大なノルマを強いている」ことと同じことだ。

 団塊ジュニア企業が拡大路線を突き進んで現場に不正を強いているのは、かつて日本軍が負け戦でも撤退できず、現場に「玉砕」を強いた問題の延長線上にある。つまり、日本型組織の典型的な「病」のひとつなのだ。

日本人はエニアグラムのタイプ6の国民性で、
タイプ6は未知や混沌を嫌い、変化や決断も嫌うので、
今までの路線を既知として、思考停止で判断停止で前例踏襲で進むところがあります。

ちなみに、タイプ6は、思考センターの否定点なので、思考停止となります。

【エニアグラム用語】センターとは?
【エニアグラム用語】否定点とは?

それと、過去に書いた
勉強が「かりそめの安心」という指摘に目から鱗が落ちた
を思い出しもしました。

ここでは「プロパガンダ」も「目標」も、現実から目を背け、安心感を得るために使われています。

 実は今日の成功は、(人口増加ののぼり)エスカレーターのおかげだが、経営陣は何やら自分たちの「営業努力」によってなし得たと過信してしまう。だから、苦しいときこそ原点に立ち戻ろうと、強気の拡大戦略にこだわる。広告をバンバンうって、現場の戦意を高揚させて、高い目標を設定してお尻を叩くなどの「努力」をすれば報われると勘違いしてしまう。

邱 永漢 (きゅう えいかん)氏だったと思いますが、「お金には通り道がある」と言っていたことを思い出します。

また関連した話として、何かの本で読んだ次の話も思い出しました。
「ある駅の商店街に薬局屋があった。
人通りが多く繁盛していたが、駅の反対側に大型店舗ができると人の流れが変わり、商店街から人がいなくなった。すると店の売り上げも落ちた。
薬局屋の主人は、広告を打ったりいろいろと工夫をして、そのたびに客足は少しは回復したが、結局昔のように繁盛せず、店はつぶれた。人通りが多いことで成り立っていた店だから、人がいなくなればつぶれるのは当然である」

この話から「テレビ離れにおけるNHK」の話に飛びたいところですけど、そこは我慢して、元の引用を続けたいと思います。

 このような過去の栄光に引きずられていることに加えて、団塊ジュニア企業が拡大路線に固執してしまうのは、もう一つ理由がある。それは「成長とは計画を立てたその通りに進めていく」という旧ソ連の「計画経済」という思想だ。

 僭越(せんえつ)ながら筆者は17年ごろから本連載で繰り返し、人口減少の日本では今後、「ノルマ」由来の企業の不正が増えていくことを予想させていただいている。

『大企業のノルマが、「不正の温床」になる本質的な理由』(2017年11月07日)

 「ノルマ」と聞くと、戦後日本を占領した米国の「成果主義」が持ち込まれたことで広まったと勘違いしている人も多いが、実はノルマという概念は戦前に持ち込まれている。現在の日本企業のカルチャーのほとんどは、戦前・戦中につくられたものだ。

 そして、そのときに手本にしたのが、旧ソ連だ。終身雇用、滅私奉公、そして最も国が参考にしたのが計画経済だ。エリートが計画を立てて、その通りに労働者をそれぞれの持ち場に縛り付けて働かせることで、着々と成長していけば理想の社会がつくられる――。こうした思想は「伝染病」のように日本に広まった。

 そこでモロに影響を受けたのが、経営者だ。日本企業は、その成り立ちから骨の髄まで計画経済が叩き込まれているのだ。これが不正の温床になっている。

 ご存じのように、旧ソ連は崩壊していく前に、不正のデパートになった。国は経済統計を誤魔化して、国営企業は生産の数字を粉飾した。計画経済がすべてなので「ノルマ未達」を避けるために、あらゆる不正がまん延したのだ。

 ルーツが同じということは、同じ問題が起きる。

ん? だとすると、日本の国も同じですね。国もデータの誤魔化しをやっています。

それと統一教会も今こんな感じになっている可能性を考えてしまいました。
ノルマでもって、信者からお金を取り上げることだけを考えて、信者を育てることはしていなかったみたいです。
山上容疑者が優秀であっても、大学に行けなったことを考えると、信者の子供を育てて信者を豊かにして子供からも寄付を得ようとは考えていなかったようです。
統一教会は、焼畑宗教ですね。

引用を続けます。

 「人口が増えていく」という右肩上がりの幸せな成功体験を引きずっているので、厳しい現実を受け入れることなく、いつまでも昔のやり方を続けてしまうからだ。

この部分は日本全体がそうです。下りエレベーターを語る上野千鶴子や内田樹(どちも私からは『ボス』のタイプ8に見える人です。タイプ8は現実を直視するタイプです)は、混沌が嫌いなタイプ6な日本人から多くの反感を買いました。

人口ボーナスではなく、少子高齢化で人口オーナス(重荷・負担)になっている日本において、
今までのように生きて行くのは難しくなってきているわけです。
これは、戦争で言えば、負けの局面にも似ていて、これを政治家は言えないでいます(自覚していない可能性もありますが・・)。

それで
ピーター・F・ドラッカーの言うように、
それが機能していないときは「プロパガンダ」の力に頼るようになり、自画自賛的な「広告」を大量に投入する。
無理な目標設定をする。
計画経済がすべてなので「ノルマ未達」を避けるために、あらゆる不正がまん延する。

これに似たことがこの国で起きているかも知れないということです。
ただですね。
国民も混沌を見せられたくないのです。
それで負のウィンウィンができあがって、国民は茹でガエルになっていくのです。その温度ももはや正しいかすら分かりません。

先の戦争が今、形を変えて再演されているということです。



2023/07/24追記
ビッグモーター関連のニュースがあったので追記
『大手損保3社「ビッグモーター」に過去出向者出す』

中古車販売大手の「ビッグモーター」が保険金を不正請求していた問題で、大手損保3社が過去に「ビッグモーター」に出向者を出していたことが分かりました。
「ビッグモーター」に出向者を出していたのは、▼「東京海上日動火災保険」▼「三井住友海上火災保険」▼「損害保険ジャパン」の3社です。

3社とも遅くとも今年3月までには出向を取りやめたということです。

また、関係者によりますと、損保3社は事故に遭った契約者から自動車修理工場の紹介を依頼された際に、提携先の一つとして「ビッグモーター」を紹介し、「ビッグモーター」側は実際に入庫された台数に応じて自賠責保険の契約を割り当てていたということです。

はてコメ

20年で3-4回使ったかな。毎年の自動車保険が5万くらい上がった。わずかな傷なら保険を使わない方が良かった事に気がついたが、上がったらもう戻らないので手遅れ。

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