失恋と。

失恋をしてから、丁度1週間経つ。

これまでは、交際をしていても、相手が合わないとなったら、自然消滅を狙っていた。好きな人が出来てフラれても、気まずくなり、屈辱を感じたとして、悲しみを引きずる事はなかった。

しかし、今回は違う。「好きでいる事を諦めた」のだ。ずっとずっと好きだった。ずっとずっと、好きだと伝え続けた。「嬉しい」「ありがとう」と返してくれて、時には自分も同じ気持ちだと伝えてくれたその人を、好きでいる事を諦めた。

悲しい哉、少しずつ離れていくのは慣れていた。嫌いな人でも、そうでない人でも、トラブルメーカーな私は、関係性を断つくらい朝飯前だった。胸を引き裂く様な痛みに耐える事を、除いては。

「いつもみたいに、出来るでしょう。簡単な事だよ、後は忘れてしまえばいい」と言い聞かせて、余裕でいるつもりだった。来るXデー、離れると決めた日に、漸く、これ迄と違う日常が訪れる事に気付いた。人の幸せを願うのに、ここまで苦しまなければならないのか。その日から1週間、毎晩、随分泣いている。

フラれてもいない。何をされた訳でもない。誰が悪い訳でもない。あの子の幸せを壊さない為に、そこに居る事を辞めよう、と、勝手に私が決めただけだ。このまま好きでいたとして、ただ苦しいだけ。いっその事、好きでいる事すら辞められたら良かったのに。諦めた、と言っても、まだ忘れられないでいる。

あの子は、弱音を吐かない。誰もが挫折し逃げ出す所でも、そうならないように躱して、努力し続ける。賢くて、その賢さは、ズルさではなく優しさと強さで、でもやっぱりちょっとズルくて。

過程を示さない。努力を見せない。結果だけを確実に出す。努力しなくちゃそうはならない物を作り上げるのに。クリエイターとしても尊敬出来る、ずっと応援していたい人。

他の人達が、環境を活かしてどんどん追い越して行くのに、それでもヘコたれない。信念がある。やりたい事をやるんだって、それを周りも願ってくれているって、分かっている。だから、努力の痕跡も、結果も、1つ1つが重くて、周りの人も、より熱く応援したくなる。目標地点に辿り着いた時、全力で「おめでとう」って言いたくなる。そうして他の誰よりも信頼されて、業界では、着実に名を挙げ始めている。

そういう人だった。いつも周りの皆の事を見てくれていて、優しくて、楽しくて、本当に……、だから、これからも、夢を叶えていってほしい。

一番辛い時に、一番支えてくれる人だった。だからこそ、もうお別れしなくちゃ。きっとまだ、引き摺るだろうけれど、こんなに未練があるのは苦しい。

いつまでも、いつまでも、続いて欲しいと願っている。手を取ることはできずとも、私は貴方を好いている—— 『点描の唄』の、そんな一節を引用したくなる。貴方がよく、歌っていたから。

ありがとう、私の失恋。好きでいられて、本当に、最高の思い出だった。貴方の作った物はひと目で分かる。いつか貴方を、街の何処かで見付けられますように。

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