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常設展の魅力~江戸東京博物館~博物館に行こう④

こんにちは。今回は常設展示を頑張っている博物館、江戸東京博物館の常設展示を紹介します。企画展は博物館の華。ですが常設展に力を入れるとその博物館そのものへの愛着を持ってもらえると思いますので、今回江戸東京博物館の常設展示を勝手に推していこうと思います。

1.江戸東京博物館のえらいところ。

上から目線ですみません。ジオラマと複製と…で乗り切っている部分もある江戸東京博物館は、ほんとうにがんばりやさん。ここまで振り切れるのは実際インバウンドを期待されている…外国人旅行者の観光博物館によるもの…だとは思います。思いますが、みんなこれくらい振り切ってもいいのよ!エデュケーションはエンタメではなぜいけないの?という気持ちにさせられる博物館です。

もともと古いもの…博物学や古典や歴史や絵画や文化に興味がある人はそんなにいません。(すでに好きな人はそれに気が付かないのです。でもって大人はみんな忘れちゃう)それぞれ興味のきっかけになる入り口はあるんですね。それは書籍、アニメ、映画、ゲーム…エトセトラ。そこに生まれたほんの少しの興味から、実際博物館にそのモノを見に行く。で、どういうふうに見せられたか。そこが興味を持つか持たないか、持ちようがないか、の違いが生まれるのだと思うのです。そこでいうと、その入り口としての江戸東京博物館の常設展は素晴らしい!と思うんです。こういうふうにすべての展示物に解説つけて、わかりやすく(なんなら小学校の低学年の子でもそれなりに理解ができる)展示、できるんですよ!!!

と強く強く主張してみたいと思います!

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こっちは日本橋大通り。裏に長屋とかもちゃんと再現してるんですよ~

表長屋と裏長屋がこういう風になっているのか!!!とよくわかりました。「わかだんな」ファンは必見ですよ…!!

2,常設展示の見どころ~復元展示の巻

さて、江戸東京博といえば、できた頃からある「中村座」の1/1スケール展示わたし、じつは昔いつ中が開くのかな?って思っていました。

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その裏側には写真のように歌舞伎、『助六』の1/1展示があったりします。

このひとが助六さん。

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『助六』の中身知らないと面白みが半減するんで、もし、行かれる方はちらりと検索して行ってみてくださいね。

①歌舞伎の演目、『助六』のすごいところ。

これは、江戸時代に江戸中でほんつつつとうに大人気になったお芝居なんです。

今でいうなら、「倍返し」「倍返し」言う感じ。もしくは「水の呼吸!一の型!!!水面斬り!!!!!」って感じ?全然違うかもしれないけど。とにかく、猫も杓子も「助六」デスよ!

それくらいの大ヒットを飛ばしたわけです。若衆はみんな髷の結い方を真似しました。主人公は紫の鉢巻してるんですがそれは、「江戸紫」って色でお茶目な将軍様(徳川吉宗(リアルな方))もご愛用。よく、テレビの時代劇とかで見る、主人公が紫色の頭巾みたいのかぶっているじゃないですか。あれが「江戸紫」。とにかくそれくらい、大人気!!でした。今でも上演するときはさまざま準備をし、「おっ」と言われる、(いわれなきゃいけないような気合を入れて上演する)演目です。

②助六のお話をざっくり説明します

登場人物は上の写真で傘回してる「助六」さん。家宝の刀「友切丸」を探しています。もう一つの写真のほうにいるのは美人花魁の「揚巻」さん。そしておじいさん。このひと意地悪っぽいでしょう?意地悪です。「意休」さんという、吉原で豪遊しているお金持ちのおじいさん。
意休さんは主人公、助六と恋人になった吉原の傾城(すごい美人で有名な花魁と言う意味)の揚巻さんにちょっかい出して、コテンパンに振られるし、「友切丸」もついつい出して見せびらかしちゃうし、結果、助六に家宝の「友切丸」を盗んだことがばれてしまうし、もうさんざんです。で、お香にかかわっている人間としては気になるのは意休さんの隣にあるこれ…

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こちらは「伽羅」のお香を焚いている香炉です。意休さんはお金持ちだからこれ見よがしに伽羅を焚きながら歩いているんですね~。

伽羅の香りをさりげなく漂わせるのは一流。これみよがしに見せびらかして歩くのは三流、といったところでしょうか。

ちなみにこの香炉は最後、家宝の刀で切られてしまうのでした。

さて、この助六さんにはモデルとなった人物がいるそうですが、その人は鉢巻の下に伽羅の香木を挟んでたそうですよ!!(頭痛持ちだったとか、メンタルが不安定なタイプだったとかいいますが、香木挟んで治るのかはまったく不明です。

お金持ちの人はぜひ試してみてください!

3,常設展の見どころ~イチオシ展示を推していきます!

常設展の中でイチオシの展示をいくつかご紹介です。

①嫁入り道具に誂えます。

綾杉地獅子牡丹文蒔絵十種香箱

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十種香箱、というのは組香という香遊びをするときに使用するお道具を入れる箱のことです。この箱を開けると、さまざまなお道具が入っています。

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すべてではありませんが、中身がこちらに展示してありました。上の左から香木を切るときに使う台、まんなかは重香合(香木を乗せる銀葉というプレパラートのような雲母を重ねたもの)を入れる箱(三段重ねになっているのが普通)右は何に使用しているのかこれだけではちょっとわかりませんでした。

真ん中に置いてある絵が描いてある包紙は「総包」といいます。「総包」は組香というテーマをもった香遊びをするときにあらかじめ香木を包んで一回ずつにわけてセットしておくものです。裏地も美しいことがほとんどです。見た目以上に丈夫で固いつくりです。季節や組香のテーマに沿って総包を選ぶ必要があり、ちょっとしたセンスが利いていると「おお!!」と感心されます笑

その下にならんんでいるのは折据え(おりすえ)と呼ばれる紙の箱です。

主人が香木を焚いてそれを参加者(連中といいます)に回すんですが、そのあとでこちらの折据えを回します。連中はそこに今の香はこの香りだった!という答え(香札)を入れて次の人に回すんです。あとから訂正がきかない、という仕組みで間違えたら自分の持ち札はもう手もとに残らないのでとてもスリリング!

ここに出ているお道具は実際使用するもののうちのごく一部になります。

これは徳川家光の頃、徳川家と岡山池田家との婚礼の際に作られた香箱です。池田さんって、織田信長の家臣だった池田さん?池田さんちのマークは揚羽蝶なんですけどこの香箱に一切の揚羽蝶風味がございませんな…。

香箱の牡丹、美しいですよねー。300年前のもの…ですけど、たぶん紐とか見るとだいぶ修繕してますよねー!
できればこういう道具も使ってあげてほしいなあー!!

②倶利伽羅龍🐲カッコ良い!!

紀州徳川家伝来 白紺糸威丸胴具足

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倶利伽羅をあしらったカッコイイ鎧一式。江戸後期のものです。

めちゃくちゃ羽振りの良さを伺わせる、脛や肘に使う木材は白檀…。おおう。でも、どれが白檀か全然わかんなかったなーー。

倶利伽羅はこれのこと。

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倶利伽羅(くりから)っていうのは剣火炎に包まれた剣に巻きついた龍なんですけど、むかしのやくざ映画とかで出てくる背中に彫られた竜はだいたい倶利伽羅ですね!

サンスクリット語でクリカラといい、八大龍王のひとりでもっとも崇拝されている、不動明王の化身だそうで。一切の邪悪をめったギリ、みたいな龍王さまです。

この一式は江戸後期のものだから、全部残っているとのことだけど、こんなん作ってるから幕府滅びちゃったんじゃないの?地に足つけないと!!と心配になりました。

③お花見にもってきたい

梅樹螺鈿堤重(ばいじゅらでんつつみじゅう)

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螺鈿は漆器に裏彩色をした薄貝を用いて模様をあらわした細工ものです。お皿には紅白の梅、桜、牡丹、椿とさまざまな絵が描かれているお弁当セットです。当時の名所図絵とかで、江戸各地のお花見名所を紹介する浮世絵や、みんな好き番付表もあったりしました。花見はいつでも江戸の町をにぎやかしていたのでしょうね。
上野や浅草、御殿山が大人気だったらしいです。

お花見にかこつけてお見合いとか。商談だったりとか。電話もメールもない時代、出会いはお花見🌸や参拝、寺社仏閣の境内なんかで行われていました。そんなお花見にうってつけ。お酒とお弁当が一気に持てるおしゃれ重箱。
夜桜を庶民が楽しむ場所は限られていましたが、こういったときは各町の木戸番も融通をつけていた、と言われていますし、螺鈿が灯籠の灯りにキラキラ光っているところでする夜桜をお花見する、なんてほんとうにおしゃれでないかと思います。

博物館で見ると、うわー!って思うハデハデしさですが、実際には江戸の蝋燭の灯りで見るものなので、暗がりに光る怪しい螺鈿!こんなの持ち込んでお花見なんてしてみたいものですね。


④江戸風ファッション、結構かわいい。

実物大ジオラマの中でも町屋とか、商店にはすごく力を入れていて、それを眺めているだけでも楽しい。「読本」コレクションはオススメですよ。

写真①②「当世染め組 雛形萩の野」

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これは享保年間の「ファッション雑誌」。呉服屋の今年イチオシデザインブックです。
こういう「雛形」と呼ばれる小冊子は東福門院が京都にお嫁入りしたときに、京でファッションリーダー(東福門院)のオシャレデザイン!!みたいな感じで始まったそうですよー!

まあ、新しい着物作れるのなんて、一部の人だけでした。豪商があんまりにも贅沢な衣装を作るもので、総絞りや刺繍のものは禁止になりました。そこで出てきたのが友禅など。実際こういったひな形もほとんどの庶民は使えません。庶民はフリマ的な露店でも着物のお店で買いました。春や秋の衣替え季節になると、新し目で若い娘用のものなんかは即売だったといいます。

⑤庶民のみなさんのテキスタイル!

では町民のみなさんはどんなものを着ていたのでしょうか。

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こういった柄の服を好んで来ていました。染め直し、仕立て直して何度も使っていたそうですよ。結構格好よくないですか?


こんな感じで常設展を見ていくとたっぷり楽しめます。

ぜひ、江戸東京博物館常設展をよろしくお願いします!←最後まで勝手に推します!




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