"アート(作品)に値段を付ける"ということの難しさと、私なりに考えたこと その1
私は時々、ミュージシャンとしてお金を稼ぐことを辞めたくなる。
それは作品に値段をつけるということが、地球七不思議の一つといってもいいくらいナゾで、未だにしっくりきていないからです。ミュージシャンにかぎらず、"アート"を扱う人が誰しも悩むところだとは思うのですが、ずっと疑問に思っていたこのトピックスに今一度向き合ってみることにしました。
*ここで言う"アート"は、一般的な芸術ではなく、サービスなども含まれまるのかなと。単に時給換算とか原価ベースで価値がつけられないもの・・・というのかな。
命と魂を削って産み出した作品-それは自分の分身、我が子、分け御霊・・・表現はどれでも構わないけど、それくらいの重みがあるもの。それに対して一体どうやって、何を基準に、数字をあてがうことができるんだろうか?と純粋に疑問だった。
実際、CDやDVDが完成して、いざ値段をつけるってときは、まるで人身売買しているような感覚になるときさえあったりします、いやマジで。大げさではなく。
もう結構前になると思うけど、とても衝撃的なニュースがありました。「無許可の路上ライブがうるさいから見せしめにした」と、いかにも正義っぽい剣をふりかざし、路上アーティストのCDを買った直後、本人の目の前でそれを踏みつけ、その一連をYoutubeにアップしたことで大炎上した人がいたけれど、
私はそれを聞いたとき、その行為はまるで、ママさんから生まれたばかりの赤ちゃんを抱かせてくださいと頼み、受け取った瞬間、床に落として踏みつけて「うるさいから黙らせるためにやったんだよ」と言ってるのと同じように、私の目に映りました。
その路上アーティストの子曰く「そのときは目の前で一体何が起こったか理解できなかったけど、帰り道は悔しさのあまり泣きながらスタッフに電話した」というエピソードを聞き、同業者として、共感なんてレベルじゃないほど、我が身のようにショックを受けたことを覚えています。
見た目はペラペラのCDだけど、そこにどれだけ造り手の命と魂が刻まれているか・・・想像できないからこそやれる行為なのかなと思います。
芸術なんて、最悪、なくても生きていけるもの。衣食住などに比べたら到底後回しになるような存在に、どれほどの価値がある?という考え方もありますね。それは人それぞれの価値観だし、環境に応じても変化するかと思いますが。特に日本は、先進国で経済的に豊かな国の割に、アートに対して価値を感じてお金を払うという感覚は、少ないのかなと思う。フランスやアイルランドでは、芸術家が一番尊敬される地位らしい・・・。日本だと変わり者扱いされる風潮の方が強い気がかな。私がニュージーランドで路上ライブをしたときも、日本で路上ライブしたときと全く反応が違くて驚いたな~。
あと、有名なピカソのエピソードがありますが、私はこの話にすごく共感を覚えたものです。アートには、それまでのそ人の人生そのものが刻まれているからです。
ファンに絵を描いて欲しいと頼まれたピカソは、ササッと数十秒ほどで書き上げ「100万ドルだ」と言った。「たった数十秒のスケッチなのに!」とファンが驚くと、「いや、この絵を描くのにかかった時間は30年と30秒だ」と答えた。
まぁ、ピカソほどの有名人が言うならともかく、そうじゃない私が同じこと言えないよな・・・なんて弱気になり、それならせめてコンテストとか応募して賞のひとつやふたつ目指してみようかな、と思ったこともありました。でも、知名度とか賞といった実績で作品の価値が決まるっていうのも、私はなんだか違う気がしたのです。
とにかく私にとっては、どうしてそんな、作者の命や人生そのものと同じ価値のものに、たった何百円とか何千円で売らなきゃいけないんだろうと、いつも疑問でした。そんな安売りするくらいなら売らないほうがましだー!なんて言って、売らない選択をしようとしたこともありました。
とはいえ、CDという形で作品を残す為にはレコーディングやらジャケット写真やらデザインやら印刷やら人件費やらその他諸々の経費やらがたーーーくさんかかるわけで、次の作品を作るためにも、活動を続けていくためにも利益を出すということは必要なんだ、という現実にぶち当たります。(パトロンに見初められて巨額の資金を投資していただけたらよかったのですが!笑)
買い手が価値を感じた分だけ払ってもらうっていうのが一番いいのかもしれないけど、いざ「自由に値段を決めて」言うと逆に困らせてしまったこともあって、結局やっぱり相場に落ち着いてしまったり。
大人の事情に流されてしまう自分も情けないなぁ、なんてジレンマを抱えながらも、今までやってきたわけです。
その2へつづく。。。
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