「英語ができる」とはこういうこと! ~"I love you"を「●●●」と訳した夏目漱石に学ぶ~
こんにちは、詠美衣(エミー)です。
先日、ミュージシャン仲間から
新曲に英語の歌詞を入れたいから、
「その英文が伝わるものかどうか」
チェックしてほしいと頼まれました。
自分が培ってきた経験やスキルを
頼ってもらえるのって、
すごく嬉しいこと。
私は「もちろん!」と言って
快く引き受けました。
しかし、送られてきた英文を
見て、私は手が止まりました。
全く、赤を入れられなかったのです。
直す余地がないほど完璧だった!!
のならよかったのですが、
突っ込みどころがありすぎて
直しようがなかったのです・・・!
言うならば、
Google翻訳で訳したような
英文だったのです。
英語を日本語にGoogle翻訳で
変換したことがある人なら
イメージしやすいと思いますが
翻訳された文を読んで、
全く意味がわからない
わけではない。
だけど、明らかにロボットが
翻訳したような、ちょっと
おかしな不自然な日本語ですよね。
例えばこんな感じ▼(右側の日本語訳)
彼が送ってきた英文は、
その英語バージョンって感じでした。
英文チェックをお願いしてきた
彼のほうとしては、
全く意味が伝わらないおかしな
ものでなければ、これでいい。
文法的におかしければ
ちょこちょこっと直して
返してもらえればいい。
程度に思っていたのだと思います。
そして、彼からのメッセージには、
メロディーはすでに決まってるので
できればこの英語の歌詞をなるべく
崩さずにこのままいきたい・・・!
という気持ちが伝わっていました。
でも、残念ながら、語学って、
そんなに甘くありません^^;
英語コーチである私のもう一つの顔は
シンガーソングライター!
全歌詞が英語の歌を作ったこともあるので
彼の気持ちもすごくよくわかります。
インスピレーションで湧いてきた、
すでに決まったお気に入りのメロディーや
フレーズを、後から変更することが、
どれほど苦痛なのかも、知っています。
だからこそ、返信にすごく悩みましたが、
2つの提案をしてあげました。
1つは、最初に自分が湧いてきた
インスピレーションを優先し
自己流"英語"の歌詞のままでいく。
彼の英文は、文法ミスだけでなく、
そもそも
「ネイティヴだったら
90%こんな表現はしない」
というような英文だったので、
中途半端に文法を直してあげたところで、
正直あんまり意味がないし、一つでも手を
加えたらそこから糸がほつれていくように、
結局すべてを変えなければならくなりそう
だと思ったからです。
それならいっそ、Google翻訳のような
不自然な英語だと自覚し割り切った上で
「アート」として堂々と歌い上げてしまう
ほうがいいのではないかと判断したのです。
2つ目は、ネイティヴにもちゃんと伝わる
自然な英語にして、メロディーを変える。
私が"Traveler's Song"という全歌詞英語の歌を
つくったときは、こちらの後者でした。
海外を旅する中で出会った世界中の人たちに
感謝の気持ちを伝えたい、そして旅人が経験する
別れと出会いの喜びと悲しさを共有したい
という思いで作ったので、
自己満足で歌うことよりも相手に伝わること
が何よりも大事でした。
だから、ネイティヴチェックを何度も受けて、
英語が不自然なところがあればそれを踏まえて
メロディーを変えて、またネイティヴの人に
聞いてもらって、またメロディーを変えて・・・
・自分(気持ち)視点
・ネイティヴ(英語)視点
・アーティスト(詩的)視点
のすべてが一致するポイントが見つかるまで
時間をかけて、何度も試行錯誤したのです。
そのおかげで、最後はネイティヴの人たちから
"Who wrote this song? It sounds really natural. "
「この歌は誰が書いたの?
すごく自然な英語に聞こえるよ」
と言ってもらえるような曲になった。
しかし、彼は前者を選んだ。
それはそれでいい。
自分が納得して気持ちよく歌えるなら
それも「ひとつのアート」だと
私は思うからだ。
しかしそのあとに彼は続けてこう言った。
「これ、エミにも歌ってもらえるように
頑張って早く完成させるね!」
と。
え・・・・・・・・
えええええええええええええええええええええ!!!!!?
ごめん、それは無理。笑
私は気持ちが言葉にしっかり乗らないと
歌えないことで有名なシンガーです(笑)
Google翻訳のような無機質な言葉を
心を込めて歌うことなんてできません!
まさかこんなオチが待っていたとは・・・!笑
気持ちは嬉しいけど、お断りしました^^;
***
このエピソードから、
翻訳って何か。
母国語以外の言葉を話せる
ようになるって
どういうことなのか
今一度、考えてみた。
そのときに浮かぶんだのが
夏目漱石が"I love you"を
「●●●」と訳したエピソード。
なんて訳したと思いますか・・・・・?
「月が綺麗ですね」
と訳したそうです。彼のお弟子さんが、
「我君を愛す」と訳してきたところに赤を入れて
「日本人はそんなこと言わないだろ!」と
アドバイスして生まれた名訳です。
私はこれが本当の
上手い訳だなぁ
と思うし、
夏目漱石は文豪家として
日本語のエキスパート
だっただけでなく、
本当の意味で
「英語ができる人」
だったんだな、と思う。
"I love you"の感覚を
英語のまま一旦
自分に染み込ませて
味わって
咀嚼して
消化して
そしたら、その感覚を
ただまっさらな状態で
日本語に出す。
そのためには
どちらの文化の
感覚、思考回路、
体験が必要。
日本語→英語のときも同じ。
中には、飛躍しすぎた解釈は
「誤訳」だと批判する人も
いるだろうけど
私はその国の文化や感性に
ないものを埋めるために
直訳をするほうが
無理があるのでは
と思ってしまうときがある。
医療やテクノロジーなど専門領域では、
できるだけ解釈を挟まずに、正確に
訳さなければいけない場面もあると思う。
それでも、その「正確さ」を高めるのは
その専門分野の深い知識と経験が
あってこそなのではないか。
それができるかできないかが、
AIと人間の分かれ目なんだろう。
純粋な真綿だけを
紡いで糸にするように
言語化すること。
きっとそれが本当の意味で
「母国語以外の言葉を
話せるようになる」
ってことなのかなぁと思ったのでした^^
なんと上のことを哲学(?)していた昨日2/22は
「国際母語デー」だったらしい!!!!
なんとも不思議なめぐりあわせ。。。
wikiより引用:
言語と文化の多様性、多言語の使用、そしてあらゆる母語の尊重の推進を目的として、国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)が1999年11月17日に制定した、国際デーのひとつである。
ニャンニャンニャンの日の印象が強すぎて
知らない人も多いと思いますが、
ぜひ来年からは、母国語やほかの国の言葉に
ついて考える日にしてみてくださいね♪
ちなみに・・・・さっきGoogle翻訳の例で
出した画像の英文(左側)ですが・・・
私が作った英語の歌"Traveler's Song"の歌詞なのでしたー!
ネイティヴも納得の仕上がりになったこの歌、
Youtubeチャンネル「エミーステーション」に
アップしているので、聞きたい人はぜひチェック
してみてください♪♪チャンネル登録も募集中です!
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