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【15】ドラえもん

【15】ドラえもんの歌
緞帳が開くと、子どもたちがこちらを不思議そうに見ている。体育館に響く「こんにちは」の挨拶に嬉しくなった。表情がよく見える。コロナ禍生まれの子どもたち、以前はものすごく距離を感じていたが、ようやく普通におしゃべりできるようになったと思うと、ちょっとホッとした。
コンサートの最後、幼稚園からリクエストで、夢を叶えてドラえもんを一緒に歌った。曲のBメロ的な部分で、「おとなになったら、わすれちゃうのかな」とある。意味よりも前に、音のほうがさきにきているんだろうな、きれいに声が揃っていた。なんだかその歌声にうるっときた。今は、音の響きでとらえていることばもだんだんと幼稚園の頃を思い出してふりかえるたびに、それぞれの「あの頃」が意味づけられていくのかなと思った。
非日常の出来事を届けるという行為は、そうゆう瞬間に立ち会うことなのだと思う。はっきりと思い出せなくとも、ひとつの出来事が、記憶を辿る装置になるのだろう。その瞬間を忘れないでいてくれるといいな、なんておこがましくて言えない。あれこれと効果とか意味とか問われるけどまず、「なんかいい」時間をつくることのほうを大切にしたいと思った。

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