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42歳の夫が見た「死後の世界」


2022年4月19日。
家族旅行から帰った翌日、
珍しく在宅勤務を選んだ夫に異変が起きたのは
夜21時を過ぎた頃だ。


「心臓が、しんぞ、、うが、、」


息子を寝かしつけ始めた寝室へ
胸を押さえながら走り込んできたのだ。


あ、これはやばいなと直感で思った。

4年前
帰省中に母が「頭が、、、」と
倒れ込んできて、搬送した記憶が蘇る。
母は脳梗塞だった。


「救急車呼ぶね」


迷っている時間は1ミリもない。
保険証を握りしめ119。


息子を実家の両親にお願いして
夫婦で救急車に乗りこむ。

「痛い、痛い、痛い、、、」

夫はずっと眉間にシワをよせ、痛みを訴える。

前週に体調不良を訴え
循環器科でもらっていた紹介状のおかげで
総合病院への搬送が早かった。

慌ただしく検査。

先生が出てきた。


「楠本さんの奥さんですか」
「はい」
「旦那さんはおそらく急性心筋梗塞です。
42歳とお若いので、やれること全部やらせてもらいます」
「はい、お願いします」


地下の手術室に向かうとき
夫と交わした言葉

私「大丈夫だからね」
夫「がんばる」


携帯禁止の地下フロア。
手術室の扉が閉められて、
初めてひとりで現実を受け止めなくては
いけなくなった。


…これ、まじ???


基本的に現実主義のわたしが
「夢かもしれない」と思って
人生で初めて頬をつねった
ほどだ。


40分経った頃、手術室の中から
「楠本さん!楠本さーん!」という
声が聞こえてきた。



この時、手術室内で何が起きていたのか
後日夫が話してくれた。


手首からカテーテルを通し
心臓の血管の詰まりをとった途端

夫の心臓は止まったらしい。

その際、夫は
目の前が一面の花畑になって
今まで感じたことがないほどの
「気持ちいい…」で満たされたそうだ。

「うわあ〜」と幸せな気持ちでいたところ、
「楠本さーん!」と呼ばれて
身体中に衝撃が走り
「えっ」と思ったら手術台の上に
戻っていたという。

このときの衝撃=電気ショックで
名前を呼びながら蘇生したと
先生から聞いたが、

ひとりぼっちで廊下にいた私は
生きた心地がしなかった。

今でも、毎朝起きて
夫に「おはよう」を言うたびに
「あの時」を思い出しては
「今日も生きてる」と思う。


42歳で天国に行くなんて早すぎるから。
生き伸びてくれて本当にありがとう。




夫が見た「死後の世界」を聞いてから
私は死への恐怖がなくなった。

小さな頃から
「人は死んだらどうなるんだろう?」と
考えたりしていたが、
「死ぬときは脳が痛みや恐怖を和らげてくれるから怖くないんだな」
思うようになったのだ。


生きている間は修行でも
最期は幸せであるなら、良いかもと。


夫が生きている一瞬一瞬を大切にしながら、
人生の最期まで笑顔でいたい。

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