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sotto、ちいさな詩集

sotto 小沼純一
詩集 2020/04/15発行
A6判変形 100X110 並製
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音符のように、つま弾かれた言葉が、かけてゆく
掌に収まってしまう小さな詩集。
音符のように、つま弾かれた言葉がちりばめられている。
意味を追いかけようとしても、そこから逃げてゆく言葉は、声となりそっと歌いだす。
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東京都現代美術館にて購入。ミュージアムショップは見るだけでも刺激があり、美術展とセットで楽しみにしています。図録やポストカード、ステーショナリーは展示を思い出させるので購入頻度も高いのですが、少し距離を感じ選びきれないことがあります。そんな時、ショップの書籍コーナーに惹かれます。町の本屋さんとは違った選書が面白いです。

『sotto』は手のひらサイズの小さな詩集です。昔の人は詩集を持ち歩いたというのが素敵に思えて、可愛らしいサイズのこれを手に取りました。美術展を見終えてきれいな色彩の物が欲しい!と高揚した気分にぴったりの若草色の表紙。タイトルと内側の紫は菫色でしょうか。しっかりとした硬さのある表紙の質感も相まって、これは紙媒体で読みたいと即決。

主にひらがなで綴られており、意味を持つような持たないような。響きが気持ち良いような詰まるような。音読するならリズムよく刻むのか、間をおくのか、考えたくなる詩です。紙の余白と音の余韻が心をゆるませ、自分の呼吸の浅さに気が付きます。

意味が分かれば深みが出るのだろうと思いつつ、パラっと捲るばかり。自分の脳みそ、クラゲくらい重みがないかもとやや呆れます。ひらがな詩なのになぜタイトルは『sotto』なのか、せめてタイトルの意味くらいは知りたいと思うと、最後にsotto voceとあります。クラシック音楽の用語でsotto(ソット)は、イタリア語で「より少なく」、voce(ヴォーチェ)は、「声」を意味し、sotto voce(ソット ヴォーチェ)は「声量や音量を抑えて、声をひそめて」という意味だそう。「そっと」を辞書で引くと、「あたりをかき乱さないように静かに。ひそかに。こっそり。」と出てきます。他言語でも似た響きで似た意味の言葉はあると聞きますが、いざ出会うと改めて言語の不思議を感じます。

詩にはお香やキャンドルに似た癒しを感じます。簡単なのに難しく、面白い時と泣ける時がある謎の存在。義務教育に欠かせない谷川俊太郎など、「大人になると全然感じ方が違う」の筆頭でした。ジャケ買い的な買い物でしたが、詩の豊かさのほんの一端に触れられました。

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