ナンパについていったらヤラれそうになった話②〜毛色の違う男たち〜

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ナンパについていったらヤラれそうになった話①〜ナンパ待ちをして居酒屋へ〜

そこからは、時間が遅い分ナンパされるのには多少は時間を要したが、とは言え順調に二組の男たちと飲むことになった。

一組はサラリーマン。ナンパはほとんどしたことがないけれど、私たちがナンパスポットで暇そうにしていたため思わず声をかけたと言っていた。
真面目そうで、あまり話は弾まなかったがいい人たちで、私たちが帰ると言うと帰り道の心配をしてくれた。

もう一組はまた大学生。最初に飲んだ大学生と、あとから思い出そうとしても区別がつかないような男たちだった。
ゲームをしようと言われ、第一印象ゲームをしたところ、彼らは示し合わせて私たちに飲ませようとしたが(ディズニーの年パス持ってそうな人でサナを、末っ子っぽい人で私を、彼らは同時に指差した。)、私たちはそれぞれ罰ゲームとして目の前のジンの入っていないジントニックを一気飲みし、そして店を出た。

駅のほうまで戻ると3時半ごろ。さすがに閑散としている。

「いろんな人と話すのって案外面白いよね。もう少し仕事とか学校の話が聞きたいのに、エロトークとかゲームだとかってあんまり楽しくない。」私が言うと、
「えー、楽しいかなあ?あいつらヤリたいだけだから話なんてする気ないんだよ。エロい話してゲームで飲ませてお持ち帰りしたいだけ。」とサナが言った。

「まあ、あと一組くらいにしとこうか。もうトニックウォーター飲みたくないもん。」
「ほんとそれ。じゃああと一組終わったらファミレスかどっかで始発待とう。」と話しながらまたナンパスポットに戻ろうとしたところ、
「ヤバい。」
サナが言った。

視線の先を見ると、一番最初に一緒に居酒屋に行った大学生が向こうのほうに見える。
鉢合わせるのはさすがに気まずい。私たちは場所を変えることにし、駅の北口から南口に向かった。

南口は通称公園口。
デパートやファッションビルの多い繁華街めいた北口とは違い、南口は駅を出てしばらく行くと大きな公園がある少しのんびりとした一帯だ。
昼間は個人店のカフェや古着屋に人が集まっているが、終電後に来るのは初めてだった。

「なんか真っ暗だね。」
「うん、お店ぜんぜん開いてないし、あんまり人いないよね。」
「公園のほう行ってみる?」
「そうしようか。たぶん夜中でも犬の散歩してる人とかいるだろうし、公園に朝までいるのもアリだよ。」
そう話しながら暗い公園通りを少し早足に歩いていると、
「わあ!!!!!」
突然目の前に男二人が通せんぼのような形で出てきて、私たちは驚いて飛び上がった。

背の高い二人組。20代後半くらいだろうか、一人はブリーチをしたような茶髪で黒のタンクトップ。もう一人は黒の短髪のツーブロックで、白いTシャツの上にプリントのシャツを羽織っている。

「何してんのぉ?公園行くの?」と聞かれ、サナが
「いやマジびっくりしたんですけど。なんか用ですか?」と答える。

「めちゃくちゃ可愛い子たちが歩いてたから思わず声かけただけ。俺この近くに住んでてさ、うち来ない?飲もうよ。」
「いや行かないですよ!」「無理に決まってるじゃないですか!」私たちは同時に拒否して歩こうとしたが、そこからも彼らは「でもこんな時間しか暇でしょ?」「じゃあ家じゃなくていいからどっか行こうよ。」と食い下がってくる。

この人たちは、さっきまでの男たちとどう見ても毛色が違った。
さっきまでの男たちはナンパスポットで暇そうに足を止めている私たちに恐る恐る声をかけてきたけれど、この男たちは早足で歩く私たちの足をむりやり止め、強引に誘ってきている。

しばらく彼らと押し問答をしながら歩き、サナと私は顔を見合わせた。

どうするべきか。
暇なのは間違いないし、なんならナンパを待ってたんだけど、この人たちはあまりに怖い。
しかし断って公園に行こうとしてもついてくる。
押し問答にも疲れてきた。

「近くに知り合いがやってるバーあるから行こうよ。」
「えー、やですよ。なんか怖いもん。」
そんなところ絶対に行けない。ジンが入ったジントニックなんて飲めない。

「怖くないよ。じゃあどこならいいの?」
「うーん…。居酒屋とか?」
「居酒屋、もうそろそろラストオーダーでしょ。」
「あー、そうなんだ。でもどうせ一杯しか飲まないよ。それでもいいですか?」
「なにそれ。そんなの決める必要なくない?とりあえず一杯飲んで考えようよ。」
「えー、どこで?知り合いのお店とかイヤですよ。」

男対女で長い押し問答をしているうちに、公園に着いてしまった。
昼間は公園内にカフェもあるが、今はもちろん閉まっている。
しかし公園は少し明るく、もう4時前なのに予想通り犬の散歩やジョギングをする人がいて、公園通りよりも人が多い。

「あ、じゃあここで飲む?ベンチもテーブルもあるじゃん。」一人の男が提案した。「それなら、君たちも帰りたくなったらすぐ帰れるでしょ。何杯とか考えなくてもさ。」
私は彼らのしつこさにすっかりくたびれていて、またもう4時になり早くどこかに座りたくなっていた。
きっとサナもそうだろう。
「まあいいですけど…」どちらからともなく了承し、公園の目の前にあったコンビニに向かった。

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