見出し画像

「インパクト」の考え方をビジネスデザインに組み込むーLEAN IMPACTから

社会の「不」を解決する事業を創出するビジネスデザイナーとして働いています。社会事業と聞くと、利益を生み出さない非営利組織を思い浮かべるかもしれませんが、経済的な価値と両立しながら、持続的に事業を成長させていく事業のことを指しています(マイケル・ポーター教授らによって提唱されたCSV型事業を参照)。

最近、リーンインパクトというAnn Mei Changさんが提唱するコンセプトについて知りました。スモールに始めて高速で仮説検証を回す事業創出手法であるリーンスタートアップのアプローチを、社会事業にも活用できるという内容です。Ann Mei Changは23年間シリコンバレーのテック系の会社でキャリアを積みんだ後、主に世界の貧困問題を解決する社会事業の領域に7年間取り組んでいた方です。

この記事では、リーンインパクトの概念と特徴について簡単に共有しようと思います。動画とドイツのビジネスデザイナーの方のブログを参考にしています。

"社会イノベーション"の位置付け

社会イノベーションとは、VALUE(価値)、GROWTH(成長)、IMPACT(インパクト)の3つを満たす概念だと説明されています。

スクリーンショット 0032-03-28 15.14.08

(先ほどのブログから引用)

VALUE(価値)とは、生活者や市場のニーズを満たすこと。

GWORTH(成長)とは、エンジンとなるお金について、市場からの利益が充分上がるか、あるいは、充分な投資が得られるか?

IMPACT(インパクト)とは、社会や環境にとっての望ましい変化のこと(起業家あるいはオーナーが事業を通じて達成したい理想の変化)です。

デザイン思考などによる"イノベーション"との違い

デザイン思考を用いたイノベーションファームとして有名なIDEOが提供するイノベーションの概念では、DESIRABILITY(魅力性)、VIABILITY(経済性)、FEASIBILITY(実現可能性)の3つを満たすと説明されています。

スクリーンショット 0032-03-28 15.37.29

「ユーザーが本当に欲しいと思うのか」のDESIRABILITYはデザイナーが得意とする領域、「この事業は儲かるよね」というVIABILITYはビジネス系の人が「この事業は技術的に作れるよね」というFEASIBILITYはテック系の人が強みを持つと説明されています。

社会イノベーションの3つの要素と比べてみると、

DESIRABILITY(魅力性) ≒  VALUE(価値)

VIABILITY(事業性) ≒ GROWTH(成長性)

2つの要素については、言葉が違っても同じことを語っています。

ただ、社会イノベーションが必要とする「IMPACT(社会望ましい変化)』については、社会イノベーション特有の要素となっています。

ビジネスに「インパクト」を組み込むー変化への実験

インパクトといっても、起業家が描く社会への変化という抽象的な概念であるため、どのような指標をもって「計測」するのかが大変難しい課題となります。Theory of Change(変化理論)というアプローチがあり、簡単に言うと、10年くらい先に描く理想的な社会を起点として、今何をすべきかを逆算する方法です。

スクリーンショット 0032-03-28 16.08.07

この少し先の未来に近づくための「変化」を指標としてインパクトを測るというイメージです。この変化を指標として、事業が上手くいってるか推し量りながら、実験を繰り返していきます。

この考え方は、私がフィンランド留学中に研究していた「意味のイノベーション」とも通じるアプローチだと感じています。

インパクト投資の必要性

社会イノベーションには、通常の営利事業と異なる「インパクト投資」が必要と説明されています。この点については私は違う考えを持っていますが、Lean Impactのなかでは、収益を生み出さない時期が一定時間あると説明されており、この期間は、先ほどの「インパクト」のみが増加している状態だと説明されています。

スクリーンショット 0032-03-28 16.21.23

(参照:Business Design for Social Good)

このギャップ期間をどう財務的にやりくりできるのかが重要だと語っており、その後のフェーズでは、他の事業と同様に収益が得られる事業となってくると説明されています。

終わりに

ESG投資(社会的に良いことをしている企業に投資する)など、社会の課題を解決するビジネスは伸びてくると思われますが、ロールモデルが少なく、本記事で紹介したようなアプローチについても、まだまだと思っています。今回は「インパクト」という考え方をビジネスに取り入れるという視点が、面白いと感じています。参考になれば嬉しいです。

余談ですが、インパクト投資については私は違う考えを持っています。 社会ビジョンを成し遂げるような事業でもヘルスケアを中心に、営利事業と同じようなタイムスパンで収益化できると考えています。BOP(Bottom of Piramid=ピラミッドの最下層)と言われる貧困層をターゲットするビジネスの場合は、資本主義の論理に乗りづらく、インパクト投資が必要だと考えています。

Photo at Aalto University, Espoo, Finland

写真のピンクの乗り物、実は動きます。

フォローやシェアいただけると嬉しいです。