見出し画像

働くあなたが読む人材版伊藤レポート

働くあなたに読んでほしい

巷では生産性向上、競争力アップと叫ばれているのに、自分の会社の効率が悪い、人材活用があまり上手じゃないな、と感じたことはありませんか?「人材版伊藤レポート2.0」には、働く人にもためになる内容が沢山あります。

危機感と課題感

2022年5月13日に発表された「人材版伊藤レポート2.0」からは、1.0(2020年)の頃より一段と進んだ日本企業の生産性向上、競争強化への必要性が伝わってきます。コロナ禍の2年を経て、日本企業が1日も早く、良い人材が定着し、心身ともに健康に働いてもらい、その評判と実績を持って働く人に選ばれる企業にならないことには、世界的な人材獲得競争に勝てない、という危機感が高まっているのです。レポートからは、経営者がどんなに素晴らしい経営戦略を立てても、良い人材が集まらず実質的な取組みとならなければ、業績にも企業の存続にも繋がらないという課題感が伝わってきます。

機関投資家として見てきたこと

私は機関投資家として、この10年ほど、多くの上場企業の取締役や経営陣と持続的な成長に向けた非財務分野での取り組みについて議論してきました。これは、世の中でよく耳にするようになったESG(環境、社会、ガバナンス)という投資活動の一部です。非財務分野の一つであるS(社会)には従業員の働く環境が含まれます。

政府や投資家(株主)が気にしている

ですから、今回の人材版伊藤レポート2.0は、経営者や人事部門だけでなく、働く人が幅広く興味を持つことが適切です。なぜならレポートには、企業経営を取り巻く、政府(規制や指針を作る)や投資家(資金を出す)といった利害関係者から期待される内容が明示されているからです。企業は本気で実質的な活動と成果を目指すはずです。

人事部だけの話題ではない

レポートでは、人事・人材をめぐる議論は、人事部の仕事論に終始していたのではないか、今組織に求められるのは従来の慣行やパラダイムからの脱却で、「個人も主体的に、そして自律的に変わり、(中略)個人と組織が互いに選び選ばれる関係」を構築するべきとしています。これまで日本企業で働く人は、雇用に関して会社の期待や評価をある意味自動的に受け入れ、自分のキャリアも預けるような受動的な態度が一般的(むしろサラリーマンとしての美徳)でした。しかしこれからは、組織との程よい緊張感を持った関係を意識的に作るような意識改革と行動変容をしていくことが、個人としても組織人としても幸せになれる方法である、と私は考えています。人材版伊藤レポート2.0はこの考えをサポートしてくれるものです。

米系投資銀行で働いて見てきたこと

私は、20代半ばで米投資銀行ゴールドマン・サックスの資産運用部門でのキャリアを始めました。米国では雇用の流動性は高く(1990 年代半ばから 2017 年までのデータによると、米国の転職率は月平均で 2.1 %、日本の転職率は年平均 5.3 %程度​​)、特に景気サイクルに大きな影響を受ける金融業界では、金融危機で一気に数十%の人員削減があることもあります。実際、私のいたゴールドマン・サックスでもリーマンショックの時には人員削減や配置換えなどが目の前で起こっていました。そういった企業でありながら、人材を非常に大切にし、スキルアップの機会を与え、直属との上司との1on1は当たり前という文化です。なぜ一見相反する状況があるのでしょうか?それは、会社にとっても必要とする人材には、辞めてもらいたくない、やめられたら困るという危機感があるからです。役職員の側も、常に自分の市場価値と自分の幸せとのバランスをとりながら、時には転職もちらつかせながら、より良い条件(金銭的なことばかりでない)を会社から引き出そうとする交渉力を身につけています。

「個人も主体的に、そして自律的に」

日本の企業において、すぐにこのような緊張感のある状態に移行するのは難しいかもしれません。ただ人材版伊藤レポート2.0にあるように、「個人も主体的に、そして自律的に」変わり、企業との良い関係を主体的につくっていくことを目指してみてはいかがでしょうか?

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?