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8月はアジア・太平洋戦争の終結した季節。あなたは誰の目から戦争を見る?【ドキュメンタリー編】

8月6日は広島、9日は長崎に原爆が落とされた日。8月15日は終戦記念日、多くのアジア諸国にとっては植民地解放と新たな戦争が始まった日。人間が最も残酷にならざるを得ない「戦争」という非日常空間を二度と経験しないために、あなたは誰の目から、どんな戦争を見る?

『ひろしま』(監督:関川秀雄、1953年)

原爆が落とされた日からたった8年でも、その時の記憶は風化する。広島の教職員たちがあの日を次世代に伝えるため、8万8500人のエキストラ、市民の協力のもと作られたフィクション映画。しかし、劇中に登場する実際の遺品、復興しつつある街の様子は、それだけでもうドキュメンタリー。

同じ原作をもとに、新藤兼人監督も『原爆の子』という映画を作っています。こちらはもっとドラマチックに仕立てている作品です。

『ヒロシマナガサキ』(監督:スティーブン・オカザキ、2007年)

日系3世の監督が、ヒバクシャと加害者の間でフィルムを回す。直接体験されていない歴史のできごとは忘れられていく。語り継いでいきたい、あの時、そこで体験した人たちの証言。

『蟻の兵隊』(監督:池谷薫、2006年)

終戦後も、中国山西省に残された日本兵たち。彼らが前線で加害者として目撃した光景、そして終戦後も帰国できずにたたかいを強いられた現実とは。80歳を過ぎてようやく紐解かれる、過去の記憶。

『ゆきゆきて、神軍』(監督:原一男、1987年)

ネットで全編見ることができてしまうのですが、1300名派遣された兵士のうちわずか100名しか生き残れなかったニューギニア戦線の生き残り・奥崎謙三さんが、当時の上官や戦争体制を支えた天皇制に身を賭して反対する様子に密着したドキュメンタリー。「知らぬ存ぜぬは許しません!」

同監督が、今もたたかう水俣病訴訟を追った最新作『水俣曼荼羅』も注目です。

『東京裁判』(監督:小林正樹、1983年)

東京裁判で何がどう裁かれ、その後の時代を分かったのか。戦争の罪とは何か――。アメリカ国防総省の保管していたフィルムをもとに、4時間半におよぶ長編に仕立て上げた作品。今年2022年8月15日、上田映劇でもリマスター版が上映予定!

『”記憶”と生きる』(監督:土井敏邦、2015年)

旧日本軍に連行され、恒常的に性暴力被害を受けていた元日本軍「慰安婦」の女性たちの暮らしと、過去の証言。語りたくないのに、語らざるを得ない、語らねばならない、と遺していった記憶を、私たちはどう受け止めるべきなのか。

『沖縄スパイ戦史』(監督:三上智恵、大矢英代、2018年)

終戦間近、沖縄戦に徴兵された14~17歳の少年兵たち(鉄血勤皇隊、とくに護郷隊)の体験に迫る、2人のジャーナリストの記録。未成年が指揮を執り、沖縄戦終結後も続いてしまった住民同士の監視と暴力の連鎖。誰がどうすればよかったのか。あてどない戦争責任の痛みを今に伝える証言集。

『スープとイデオロギー』(監督:ヤン・ヨンヒ、2019年)

在日コリアン2世として、家族をテーマにドキュメンタリーを撮ってきた監督の最新作。「ついに母が教えてくれた、おいしいスープのレシピと「済州4・3事件」の実体験」―― 今の美しい島の姿からは想像できない、住民同士の殺戮事件。日本の植民地支配が終わった後、南北に引き裂かれた朝鮮半島の歴史のはざまにある1948年の済州4・3事件を語り継ぐ。

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