1月27日は《ホロコースト犠牲者を想起する国際デー》:過去の過ちから何を学び、今にどう生かすかを考える映画7選
1月27日は、国連が定める国際記念日「ホロコースト犠牲者を想起する国際デー」ということで、今回はナチスドイツ時代を取り扱った映画をご紹介。実在した人物をもとにした映画から、自分とは関係ないと思っている過去に何を学ぶかを教えてくれる映画まで、厳選してみました。
『アイヒマンを追え!ナチスが最も畏れた男』
(監督:ラース・クラウメ、2015年)
アウシュヴィッツ強制収容所をはじめとする迫害施設に、ユダヤ人移送を指揮したアドルフ・アイヒマンを執念で追い続けた検察官、フリッツ・バウアーを主人公とした法廷サスペンス。ナチス時代を経験した世代、その子世代の葛藤を背景にしながら、登場人物たちが「人道に対する罪」をなぜ戦後の今裁くのか、という問いに立ち向かう。
『ハンナ・アーレント』
(監督:マルガレーテ・フォン・トロッタ、2012年)
フリッツ・バウアーが法廷に引きずり出したアイヒマンを、哲学者のハンナ・アーレントがどう目撃したかを描き出す作品。「仕事の一環でやっただけ」「上からの命令に従っただけ」と無罪を主張し、国際的な非難を集めるアイヒマンについて、「彼は普通の人だ。私たちは誰でも彼になり得る」という論説を出したアーレントの思想から垣間見る、人間の条件とは。
もっと知りたい人には、『ハンナ・アーレント』(矢野久美子著、中央公論新書)がおすすめ。
『コリーニ事件』
(監督:マルコ・クロイツパイントナー、2019年)
1968年、西ドイツで制定された通称「ドレーア法」により、戦争犯罪の多くが時効となり、「上司の命令に従っただけ」の多くの「アイヒマン」が免罪となった―現在のドイツでも効力を持つ実際の法律をもとにした架空の物語でありながら、その影響力は大きく、ドイツ法務省は2012年から、真相究明と法改正に動いているそうです。
『黄金のアデーレ』
(監督:サイモン・カーティス、2015年)
20世紀末ウィーンを代表する画家、グスタフ・クリムト黄金時代の名画「アデーレの肖像」がナチスにより不当に奪われたとして、絵画のモデルの姪がオーストリア政府を相手取り裁判を闘う、実話に基づいた物語。
1980年代に入るまで、「ナチスに侵略された最初の犠牲者」として振舞ってきたオーストリア政府が、ナチスに加担した罪を公式に認めた事例の一つとして記憶されるべきできごとです。
『ブルーム・オブ・イエスタデイ』
(監督:クリス・クラウス、2017年)
元ナチス高官を祖父に持つドイツ人と、ホロコーストの被害者を祖母に持つユダヤ系フランス人が、研究者として出会うところから物語が始まる。自分が直接関与したわけではない過去の罪に、時に矛盾を抱えながら、時に過剰に感情移入しながら、向き合うことの意味を問う作品。
『THE WAVE ウェイヴ』
(監督:デニス・ガンゼル、2008年)
1960年代に米国で実際に行われた「サード・ウェイヴ実験」を元に作られた映画。「ナチスの過去は自分たちに関係ない」「当時の人は頭がおかしかっただけ」とあしらう生徒たちに、実際に独裁制を体験してみるという実験。
1981年に米国で作られたTVシリーズを皮切りに、このテーマは今でも各国でリメイクされ続け、どんな時代にも大衆操作は簡単にできるという警告を発し続けています。
『奇跡の教室』
(監督:マリー=C・マンシオン=シャール、2014年)
自分たちと関係のない過去のできごとに、どうつながるか。国籍や人種もばらばらで、学ぶことにも興味を失ったように見える子どもたちが、ホロコーストという過去にアクセスすることで起こる奇跡の物語。
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日独伊三国同盟を通して、ナチスドイツと強いつながりを持っていた日本。日本にも、旧優生保護法(不良な子孫の出生防止および母性の保護に関わる法律)のもとで行われた障がい者やハンセン病者への同意のない不妊手術や中絶など、ナチスドイツの人種政策をまねしてきた負の歴史があります。
国境も時代も超えて、人間としてあるべき姿を文化としてどう受け継いでいくのか。「ホロコースト犠牲者を想起する国際デー」には、過去と私たちがどうつながるのか、いま何をアクションするのかをぜひ考えたいものです。
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