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【展覧会 予習と復習!】♯2 五島美術館「西行 語り継がれる漂白の歌詠み」

R4.09.10 公開
R4.10.31 更新

【予習】 芸術の秋は、「旅」と「歌」の西行の世界へ(「ごとう」って読むよ!)

 すっかり、秋めいて参りましたね〜。秋といえば芸術の秋……というのは何故か?私は知りませんが、それはともかく、秋は多くの美術館で力の入った展覧会が開かれる「展覧会の秋」なのは間違いないでしょう。本noteでも、できるだけ秋の展覧会を取り上げていきたいのですが…今回予習するのは、五島美術館で開催される「西行展」です!

💻展覧会情報

会場 五島美術館
会期 2022年10月22日(土)~12月4日(日) 毎週月曜日休
時間 10:00~17:00(入館受付は午後4時30分まで)
入館料 一般1,300円/高・大学生1,000円/中学生以下無料
・障害者手帳をお持ちの方、ならびに介助者の方1名は200円引
・庭園入園のみ(展覧会をご覧にならない場合)は1人300円(中学生以下無料)
公式サイト https://www.gotoh-museum.or.jp/event/next/

🚆 五島美術館へのアクセス方法

東急・大井町線(各駅停車)「上野毛(かみのげ)駅」下車徒歩5分

👉アクセス指南👉


 五島美術館へのアクセスは、公式サイトに掲載のとおり、東急上野毛駅が便利。台地に位置しており、美術館まではほとんど平坦なので疲れません。
 ただ、渋谷方面からアクセスする場合は、二子玉川駅から徒歩という選択肢もあります。二子玉川駅から美術館への入り口までは、ルートは簡単ですが、きつめの上り坂があり、10分強かかります。時間や体力に少し余裕があり、交通費を抑えたい方はぜひ押さえておいてください!
 また、五島美術館には庭園があります。この庭園は、二子玉川方面へ降りていくルートになっており、帰りは二子玉川駅へのアクセスがぐっと楽になります(出口専用なので、庭園から美術館には入れません。)
 「行きは上野毛、帰りはニコタマがコスパ最強!」これを覚えておいてください!

🍔 周辺情報&ランチ情報


五島美術館の周辺は世田谷区の閑静な住宅街。
 学芸員さんに聞いたところによると、美術館の目の前にある「富士見橋」からは、天気が良ければ今でも富士山が見えるそう!
 一方、住宅地ということで飲食店はほとんどなし。私は上野毛駅周辺の「蕎麦はやかわ」やサンドイッチの「アンクルサム」などを経験したことがあります。美味しいですがややお高く、また「一人では入れないかも」という印象。デートや友達連れならいいですけどね、そうでないなら素直に、二子玉川で数ある選択肢から探した方がいいです。
 「メシより、フジ」。です!

🕵️‍♀️ こんな展覧会

 西行(1118~90)とは、平安時代末期の歌人。多くの歌を詠み、国の公式和歌集である「勅撰和歌集」にも計245首が採用されており、これは堂々の歴代10位です。ヒット数歴代10位みたいな感じですね、よっ!和歌界の土井正博!
 そんな西行、その名前からなんとなーくわかる方もいらっしゃるかもしれませんが、お坊さんです。しかし20代前半まで、彼は武士でした。武士としてはエリート街道を歩み、しかも美形だったと言います(!)が、出家してさすらいの歌詠み&お坊さんになります。なぜ身分を捨てたのか、その説はさまざまあるようですが…。
 西行はその後、日本中のさまざまな地に足跡を残しました。今回も展示される俵屋宗達「西行物語絵巻」は、そうした漂白の人生を描いた作品です。
 西行のこと、私もあまり詳しくはありませんが、後世にかなり大きな影響を与えており、今でもたまに熱狂的な玄人を目にします。「西行ってなにがすごいの?」「西行はなぜそんなに尊敬されているの?」そんな問いに答えてくれる展覧会だと信じて、拝見したいと思います。公式の紹介文にも以下のようにあります。
–中世から近代に至るまで、西行が時を越えて人々の心に語りかけてきたものを探る、今までにない「西行」の展覧会です。–
 さて、言い訳混じりに、ここで西行の歌を一首挙げておきましょう。『千載集』に勅撰された恋の歌、百人一首にもなっています。 

嘆けとて 月やはものを 思わする
かこち顔なる わが涙かな

 「嘆きなさい」と言わんばかりに泣かせてくる月。月にかこつけて溢れる俺の涙。そんな歌です。恋の涙を月のせいにして泣くお坊さん。シュールですね…。
 なんか哀愁を含んでいるでいるというか、寂しげというか、そういうところが妙に人間臭い。それが西行の歌の良さなのではないかなあ(詳しくないですが)。そんなところを確かめに行ってみたい。

🔎 注目作品

西行自筆「仮名消息」宮内庁三の丸尚蔵館蔵

 今回の注目作品は、西行自筆のおてがみ。西行晩年、出家してからのものです。
 西行が自作の歌集を作った際、その判詞(論評)を、同じく藤原俊成と、その子である藤原定家に依頼しました。どちらも、押しも押されぬ大歌人ですね。勅撰和歌集の収録ランキングも一位と二位。和歌界のノムさん、ワンちゃんです。
 そんな二人の判詞が遅いので、催促しているのがこのお手紙なんです。なんと豪華な登場人物たち!
 そして、見てくださいこの心惹かれる文字の配置を。この「計算されてなさ」が、おてがみのライブ感を伝えますね。

【復習】いぶし銀。渋くて沁み渡る展覧会。

 行って参りました。とても充実した内容だったと思います。
 数々の西行の書。書家のみなさんにとっては、まさしく珠玉の並びでしょう。実際に、その筋と思われる方を多くお見かけしました。展示室は広くありませんが、その中に所狭しと、名品が並んでいます。じっくりと楽しめます。
 そこに彩りを添える西行物語絵巻。中でも、鎌倉時代作の最古本は、その優れた筆技が光りました。あまり意識したことはありませんでしたが、素晴らしい作品です。
 小展示室の蒔絵や絵画もいいですね。見落としがちなので、お忘れなきよう、鑑賞してください。
 ただ、ほんの少し憾むらくは、後世の西行観・西行受容が、いまいち掴みづらかったところ。西行の登場する文学や作品を見せてくれるのはいいのですが、どういう特色や流れがあるのか、その性質付けは甘かったように思います。西行自身の歌・書や同時代の歌・書を固めた展示と、西行に憧れて派生した文学・芸術は、本来はそれぞれ別個で、かつボリュームのあるテーマ。今回はその両方を意欲的に盛り込んだために、やや中途半端な印象に落ち着いたかな、と思いました。


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