見出し画像

美味しそうな食べ物の記憶

今まで何度となく書いてきたが、定期ウォッチしている大河ドラマと朝ドラ。

少し早いが、今期朝ドラの振り返りを。

『なつぞら』は、戦争孤児となった主人公が、縁あって北海道開拓者の一家に育てられ、東京でアニメーターを志し、数々の作品を作り上げていく様子が一貫して描かれている。

もちろん、朝ドラ的に重くなりすぎずに、物事が解決していくストーリー展開。個人的には、半年間通じて見やすい作品だった。

『半分、青い。』は、賛否両論あったが、主人公が漫画家を志して上京し、それなりの人気を得た後の苦悩や挫折が案外リアルだった。周りが言うほど、嫌いではない作品だったというのが本音だ。

反対に、『なつぞら』は、主人公があり得ないほどの多くの人の助けを得て、今のところ初心貫徹。アニメーションの世界で、ものを作り上げる様子が描かれている。

結婚、家事、出産、子育ての苦悩も、時代背景を踏まえるとややファンタジー感はあるものの、ストーリーの中でじっくり掘り下げられ、女性が仕事を続ける大変さがしっかり表現されていた。

私がことに感じ入った部分は、わりと最近のエピソードで、美味しそうな卵の描写についてのターム。

ハイジの白パンやチーズ。子どもの頃にアニメーション「世界名作劇場」の中で見た飲み物や食べ物の数々。物語として文字で見た、『赤毛のアン』に出てきたぶどう酒。

そういう美味しそうな食べ物の記憶は、案外と心の原風景になっていて、今でもふとよぎることがある。

パン屋でたまたま目にした、まっ白いふわふわのパン。「あ、ハイジの白パン」、などといまだに思ってしまうものだ。

スーパーの店頭で木苺のジャムを目にすると、そういうエピソードがあったのかどうかは定かでなくても、何となく『若草物語』を思い出す。

童話・物語のアニメーションが果たす役割は、意外と見ている瞬間だけの話ではないのかもしれない。

子ども当事者として見ているときは、日々の楽しみ。それと同時に、大人になってからも、その記憶体験が趣味思考のどこかの骨格をかなりしっかり担っているように感じる。

良い物語に触れること、良いアニメーションに触れることは、想像力を育てて人生の一部を豊かにしてくれる。

そんな風に改めて感じ入った、『なつぞら』。






この記事が参加している募集

“季節の本屋さん”における、よりよい本の選定に使わせていただきます。