リーマン・ショック15年の年に

あと8ヶ月で、アメリカの大手投資銀行リーマン・ブラザーズが破産申請を行なったリーマン・ショックから15年を迎える。資本主義をどのように理解し、この先どのように展望するのか、ということについて重要な示唆を与えることになりそうなので、その総括を試みてみたい。

リーマン・ショックの概要

リーマン・ショックとは、大雑把にまとめれば、サブプライムローンと呼ばれる低所得者向け不動産融資を証券化したデリバティブが、住宅バブルの崩壊をきっかけに暴落し、さまざまな資産価格にも波及して、その結果多額の損失を抱えたリーマン・ブラザーズが破綻した、というものである。

政治的影響力が強まった象徴的危機

ここからは、さまざまな教訓を引き出すことができそう。最も大きなものとしては、それがアメリカ大統領選挙に先立つ形で起こった非常に政治的な危機であり、グローバル経済と政治がこれほどまでに強く密着し、それによってグローバル経済の一体化が不可逆的なところまで進んでしまったということであろう。しかしながら、その巨人を政治が制御できたのか、と言えば、期待と共に生まれたバラク・オバマ政権は結局目立った成果を上げることもできず、その後はトランプ旋風に翻弄されるなど、政治のショー化が進み、間に金融資本主義を挟みながら、実体経済との距離がどんどん広がって、そしてその差を埋めるために拡張的な財政と予算のばらまき、それに伴う社会の政治化によって、アダム・スミス的な実体市場に伴う経済というのはすっかり影を潜め、予算につながるバリューチェーンの構築こそが経済の基本的構造となるというように、経済の様相は一変してしまったのだと言えそう。
その意味で、資本主義の理解というものが従来の枠組みには収まりにくくなっており、それが先行きの不透明感につながっているのだと言えそう。

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