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【創作童話】「白魔女とポチ」ー6ー


 亜美ちゃんのお祖父さんは、会う人会う人がいっぺんにお祖父さんを好きになってしまうような、にこやかな瞳と、お酒を飲みながらも優しげな語り口で、恭平君も一目でお祖父さんが好きになってしまいました。
 しかし、恭平君は亜美ちゃんがなぜ泣いているのかを話しはしませんでした。なぜなら、亜美ちゃんは、飼い犬のポチにファーストキスを奪われてしまったことを、お祖父さんに知られたくはないだろうと 恭平君は、なんとなく直感でわかってしまったからです。亜美ちゃんは、その様子を見ていました。
「だまっているんじゃ仕方ないな、なにかわけがあるのだろう。ムリには、聞かないから安心しなさい」
お祖父さんは、にっこり笑って恭平君たちを安心させ、オレンジジュースを差し出しました。
「恭平君、わしは君のつらがまえが気に入った!運動部にでも入っているのかい?よく、日に焼けてるねぇ、ヤンチャそうなところがまた良いじゃないか」
お祖父さんは、にこにこゴキゲンです。
「サッカー部に入っています」
恭平君は、瞳をきらきらさせながら話しました。
「おお!将来はJリーガーかい?」
「いえ、将来は専門学校に進んで、メディカルトレーナーになりたいんです。怪我をした人たちのために、身体を治す手伝いをしたいんです」
お祖父さんを始め、その場にいた一同は 感心して「ほう」と言った。
 なにしろ、亜美ちゃんの通っている高校は進学校で有名だったから、当然、大学へ進学するものと思っていたからなのです。
「メディカルトレーナーは、資格もあるし、定時に帰れます。いい家庭をもつのにもいいです」
恭平君は、言いました。
「そこまで考えているのかい!!」
「あっぱれ!」
お祖父さんたちは、そろって手をたたきました。
「若いのに偉いね!良い家庭は、良い子を作る。ひいては、良い社会良い国を作る!いや、あっぱれ!あっぱれ!」
亜美ちゃんのお祖父さんたちは、おぎょうぎも考えず、おちゃわんをたたいて大騒ぎ!!
「亜美は、いいボーイフレンドを持ったな!!」
亜美ちゃんは(あとで、否定しよう)と、思いながらにこにこし、でも、心の中では、恭平君をかなり見直していました。ちょっと、恥ずかしい思いをしながら……。


              つづく

画像は、ニコタローさんの
    「2006年 サントリーニ島の風景」
        です。有難うございます🍀

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