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【創作童話】「白魔女とポチ」ー5ー


 学校内はおろかその近所にも 亜美ちゃんの姿はありませんでした。日はどんどん暮れていきます。恭平君は、少しずつ心配になってきました。恭平君は入学してからずっと亜美ちゃんを見てきました。自由な校風にもかかわらず おさげにしている亜美ちゃん。傷つきやすいのに、なぜか気の大きな亜美ちゃん。(これは、白魔術を使えるから)そして、普通の家庭にあこがれて(普通の女の子に憧れて)家庭科の成績がずばぬけて良い亜美ちゃん。恭平君は、ほのかに亜美ちゃんと暮らす情景をおもいうかべていたのでした。(もちろんSTEADY=運命の人として)


 亜美ちゃんは、恭平君が真剣に自分を想っていることを知りませんでした。
 軽いジョークなんだ、からかってるんだ、と、思っていました。

 亜美ちゃんは、小学校の頃 男の子にいじめられがちで、自分はそんなにモテるタイプの女の子ではないと、思っていましたから。
しかし、友達思いの、そそとした、家庭的な亜美ちゃんは、男の子たちのひそかなアイドルでした。学校の勉強と同じようにだいじなことをたくさん知っていて、そして、いじめられた経験でなにより優しい子でした。
 お祖父さんの宴会で、お年寄りたちからたくさんの貴重な話を聞き、いろいろ知っていて、かしこい子でもありました。
 男子からだけでなく、女子からもうけがよく、ちょっと前に進せんぱいがちょっかいを出さなければ、女子ともなんともなかったのです。
 こんな子を男の子がほっとくわけがありません。しかし、老舗の和菓子屋さんのお嬢さんとあって、男子は告白をひるんでいたのでした。
 自信家の進せんぱいや、目標まっしぐらの恭平君はコクりましたけど。

 やっと恭平君が、亜美ちゃんを見つけたのは なんと、亜美ちゃんのお祖父さんのいる町内会の宴会会場でした。
 町内会館を借り切って 飲めや歌えの大騒ぎ!
「あ……恭平君……」
「あ……亜美ちゃん……」
亜美ちゃんは、まだ、はらはらと泣いていました。そこへ、亜美ちゃんのお祖父さんが、
「恭平君というのかい?同じクラスの?はじめまして。私が亜美の爺さんだが、ところでなぜ、亜美こんなに泣いているんだね?目を真っ赤にしてウサギのようだ」
 亜美ちゃんのお祖父さんは、白い眉の長い、とてもやさしそうな80歳ほどのお爺さんでした。

             つづく

画像は タケトぴさんの
    「タケトピ徒然草 新人と熟練工」
       です。有難う御座いました🌱

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