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【創作小説】見上げれば、碧いそら⑪

今までのお話は、こちらのマガジンに収められてます⬇

バレーボールのラリーが続いていた。
相手の3組は選抜チームだったが、うちらのチームには今 律花も加わった。律花は、バレー部のエースアタッカーだ。

ばしばしアタックを決め込む。凄いのひと言。

(この交替は、ちょっと反則まがいか? )とも、思われたが、その前に相手の選抜チームとの実力差があったので、この位はありがたい。

そして、私たちの守備にもやっと慣れが出始めた。
もともと、要領がいい生徒が集まる学校なのか、レシーブのコツをそりゃ受けるたびに耳元で大声で怒鳴られりゃ、嫌でも分かってくる。
分かっても身に付かないのは萌菜くらいか?

他の仲間はそろそろボールが見え始め、コツが掴め、ボールをちょくちょく拾い始めていた。

「ボールが来たら、下に回り込んで! 」

これは、王道だった。

白く、重く、固く思えたボールが、難なく可愛いビーチボールに思えてくる。

ただ、萌菜にだけは、このバレーボールのボールはいつまでも「鉛の玉のよう」に思えていたらしい。(あとで聞いた話)。

あのときも、そうだったというのだ。

市川さんが、なんとか拾った3組からのスパイクボールを、はじいてコート外に出そうだったそのボールを、萌菜が追い掛ける。必死だ。

「萌菜! 」
(多分間に合わない)

諦めて、私は3組のコートに早くも向き直った、が……。

(わー!! )

コート脇から歓声があがる。
「萌菜ー!! 」
クラスメイトの悲鳴があがる。
私は、びっくりして萌菜を見た。

萌菜は、……

ボールに追い付こうとしていた。
高く
高く
上がったボールを追い掛け、
そして……

ボールの下に回り込んで……、

打ち返した!

(わぁー!! )

3組とうちら6組の両方から上がる歓声。

そのボールを繋ぐために、……
田中さんが、
吉永さんが、
真弓さんが疾走った……!!

「繋いでー!! 」

応援席から、響く歓声。

あおい空に、遠く伸びていくボールの軌跡。

(わぁー!! )

ボールは繋がった。

そこから、私たちは 必死に食らいつく。
繋いで繋いで繋いで続ける地道なバレーで、相手のミスを誘っていった。



              つづく


©2023.12.13.山田えみこ

つづきは、こちら⬇


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