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体育会系調理補助Part2〜4〜

 その頃、私はまだ知らなかった。私の実家の方ではたいへんな事になっていた。去年の暮れのことだ。

 いつも無邪気に笑って、ベビーフェイスにベビーボイスで癒やしを家族に与えていた私が駆け落ちして家を出たあと、ゆっくりと家庭は崩壊していったらしい。

 家族間で喧嘩が絶えなかったらしいのだ。

 実家には、結婚してない兄と妹が、ずっと住んでいて、仕事をしている兄はいいのだが、身体に病気を抱えた妹はとても強い性格で家族中の人間とぶつかっていた。

 そして、母は、人生に希望をなくしていたのか、家族と喧嘩し、家に火を点けようとし、その後自殺を図った。

 命には別条は無かったが、それ以来半年も経ってるのにまだ入院しているのだった。

 私がそれを知ったのは、シフト滅茶苦茶のハードワークが始まった夏の始めだった。


 実家は、母が近所付き合いをキライ、家族も、それぞればらばらの方を向き、それぞれが頑固で真面目すぎた。

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 前の日、私は たくさん歩いて身体をほぐし、ヨガをやり、瞑想し、その日の朝、近所の自動販売機でミルクコーヒーを買い、仕事場へ向かった。

 現・店長のイワさんが、目をみはっているのが横目でわかった。

 私は、てきぱきと朝の配膳前の仕事を終え、3階へ行き、配膳をし、帰ってきて 当直職員の食器洗いを片付け、汁椀の盛り付けに入った。
 それも、こなし、配膳車を降ろしに3階へ、そして戻り、患者さんの食器の洗浄に入る。

 その日の仕事は、早く終わった。


 「えみちゃ〜ん、お仕事帰り?」
 近所の、キョウコさんが声をかける。この人だ。この人が、この近所で私を一番最初にお出掛けに誘ってくれた。

 「そうなんですよ〜。今日は暑くて……大変でしたよ〜〜」

 ここでは……、この地では、この近所では、人間らしい生活ができる。家庭菜園の野菜をやりとりしたり、挨拶を交わしたり、お出掛けしたり……私達夫婦を、人間不信になっていた私たちを 受け入れてくれたのだ。


 お母さん、人間は成績じゃない、名誉じゃない、人と人との繋がりも必要だよ……?周りと仲良くするのも必要だよ……?お母さんは、お母さんの若い頃、地元で噂されるのを極端に嫌がってたけど……世間との繋がりを断つように今の土地に引っ越したけど………
 近所との繋がりのない今の実家が好きだというけど………



 コミュニティーに加わることは、良いことなんだ………



 人間らしい感情が蘇るんだ……… 



 調理補助の仕事が、コミュニティが……





 いまでは、云える。
 学校の勉強よりも、ひとや生活のコトを覚える方がだいじだと……………わたしには………、


 勉強よりも、名誉よりも。

 


             つづく

前作までは、こちら


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