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【創作小説】コクるときは 刻々と近づく①

「ちゃんと、翔くんに告白するのよ! 由奈! 」
「頑張んなしゃい! あんなに準備したんだから〜! 」
「クラス替えなんだし! 」

私(由奈)と、希羅、怜の3人は、中学2年生の3人組。学年始めからの仲良しだ。
去年からの 私のまぶしい初恋を知って、この仲良したちは、随分 前から応援してくれている。

希羅のツインテール、怜のシャープにカットしたおかっぱ、そしてボニーテルの私……。
今日も、学校帰りに「ふすと・キッチン」というファストフード店に立ち寄っている。

レモンスカッシュの泡々が、飲むと とても つぶつぶと清々しく感じられる。

「計画 練るっちゃ〜」
「これを逃したらチャンスなしも有り得る! 」
いつも、語尾の伸びるツインテール希羅は、鋭い語気のおかっぱ怜と絶妙なバランスで掛け合いをする。
「で……、でも……」
私は、おずおずと……。
「私、想ってるだけでも……」
「ぬぁにぃ〜!?(希羅、怜、同時)」

私は、2匹のヘビ(ごめんなさい)に睨まれたカエルのようだった……。

「とりあえず〜。クラスの終わる3月20日まで〜」
「あと、2週間ね」
「がんばんなさ〜い」
「由奈が、成功したら……」
「私達に、翔くんの友達紹介して〜(希羅、怜、同時)」
(……、そっちですか……。純粋に私の恋愛応援してくれてるかと思えば、そっちですか……。ゲンキンやの……。あなたたち……)
私は、心のなかで汗をかいた。

計画は、こうだ。

ーー明日、金曜日の登校時の朝。由奈(私)は、廊下で翔くんにぶつかる。2階の階段から廊下へ曲がるところだ。いつも、生徒でごった返す。
由奈、名前入りのハンカチを落とす。可愛い、可愛い「すみっ○ぐらし」のハンカチだ。そして、ささ〜っと去っていく。ハンカチを遺して。

題して「シンデレラ作戦(ハンカチ版)」だ。

「絶対、うまくいくわ! うまく! (希羅、怜、同時)」

(んな、うまくいくかしら……)
私は、辟易しながらもうなづいた。内心、汗をかいている。

「健闘を祈るね〜(希羅、怜、同時)」
私の手に、3人のお小遣いで買った「すみっ○ぐらし」の可愛いハンカチが手渡された。

次の朝。

(ドンッ)

階段の隣の廊下への曲がり角、私は翔くんに(わざと)ぶつかった。
「きゃあ! 」
抜け目なく、「すみっ○ぐらし」のハンカチを落として……。
翔くんは、ハンカチに気づかず、
「ご、ごめん! 」
と、一声かけて、去っていった。さささささ……。
「は……!? 」
残された私と、柱の陰で見守っていた、希羅と怜も呆気にとられてその様子をみる…… 

見事、「シンデレラ作戦(ハンカチ版)」失敗……


              つづく

©️2023.8.24山田えみこ


⬇︎続きです。

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