自分もみんなも幸せになるために　♯はたらくってなんだろう

「はたらく」ことについて、以前、私が努めていた学校の先輩教師が「端（はた）が楽（らく）になるように自らが動くこと」と生徒達に語っていた。

「端」とは、自分の周りにいる人たち・家族や職場の人などを指す。

自分の周囲の人たちが「楽」になるように、自ら汗を流し、知恵を働かせて、自分の身体を動かしていくこと。「楽」とは「幸せになる」という意味が含まれている。自分のはたらきによって、自分の周りにいる人々も皆が幸せになっているか否か･･･これが大事だ。みなが幸せになってこそ、真の「はたらく」なのだ、と。

更に、「はたらく」は漢字で書くと「働く」。にんべんは「人」を表わす。

「人が動く」と書いて「働く」。

周囲の人たちの幸せのために動くことが「働く」であり、周りが不幸になるのは「働く」とは言わない。自分も含めて、周りの人が幸せになって始めて「働いた」といえるのだ。そこを間違えるな。

･･･そんなことも、その先生は語っていた。

まだ新米だった私は、この先生の話を、生徒達の横でメモを取りながら真剣に聞いた。

私と一緒にこの話を聞かされた生徒達は、もう４０歳を過ぎているはずだ。彼らは、今、どんな働き方をしているのだろう。

損得勘定や私欲で動くのではなく、出会う人々や自分に関わる全ての人々が、楽になる（幸せになる）ように動く、仕事をする、はたらく。それを心がけることで、自分も周りも幸せになり、それが自分自身の誇りにもなる。

◇◇

あと、これは私の「はたらく」観。

「はたらく」とは、「お金を頂きながら、その職場の技術やスキルを学んで自分のものにする」ことだと私は思っている。つまり、お金を頂きながら、経験を積ませてもらっている･･･ということだ。

大企業の社員であろうが、小さな会社のパートであろうが、そんなことは全く関係ない。「はたらく」ことに上下や軽重や貴賤の差はなく、どの職種もみんな等しく尊い労働だと思っている。たとえばコンビニのレジ打ちであっても、飲食店のウェイトレスであっても、事務仕事であっても、街頭のティッシュ配りのバイトであっても、全ての仕事にプロとしての技量が要る。それを身につけるまでは、どんな人であっても苦労するはずだ。

しかし、スキルや技術をしっかり身につけ、職場で一人前になることで、その仕事に就いた「価値」が自分の中に生まれる。これが自分のキャリアにもなる。

労働の対価としてお金をいただいているのなら、どんな仕事にもプロとしての価値を生み出すことができる。ならば、適当に狡いことをしてお金を得るのではなく、真摯に仕事に打ち込み、その仕事の技術やスキルを身につけることが大事だ。仕事からたくさんのことを学び、自分を成長させていきながらお金をいただくのだ。

◇

せっかくその職に就いているのなら、プロとして自分の腕を上げて、どこに行っても堂々とそ技術が発揮できる程度まで、自分を磨くことだと思う。

もしも将来、その仕事を辞めて他の職に就くことになったとしても、前職で培った技術やスキルは、どこかで自分の身を助けてくれるはずだ。また、仕事を通して得た知識や人脈や新しい視点も、これからの人生にきっと役立つと思う。

私は、自分の息子には常々、どんな仕事に就いてもOKだけど、就いた職場で「その道のプロ」になるよう、今いる部署で仕事を覚えて力をつけていくと良いよ･･･と話している。

２０代は、人生の中で「社会経験を積む」のに最も適した時間であり、この２０代をどう過ごすかで今後の人生も大きく変わってくるから、ちゃんと職に就き、そこで仕事について勉強し、仕事を通して社会経験をたくさん積んでおくと良いよ。

転職することは自由だけど、次、新しい職に就いても、前職で何も身につかず済んじゃったとしたら、前職の時間が非常に勿体ない。たとえ２～３年しかその職場にいなかったとしても、そこでモノになるよう頑張った方が絶対に良いよ。仕事を通してその職種のスキルを磨いて技術を習得し、その職の専門知識を学んで自分の器を大きく広げ、仕事の経験を積んで人から信頼されて、一人前に仕事を任せてもらえるようになれば、そこで頑張っただけの価値が自分に付く。キャリアは、こうやって自分でコツコツ積み重ねていくもんだよ。

･･･と。

◇◇

お金をいただきながら、自分の周りの人たちを幸せにする。

仕事を通して、自分の技術や人間性を磨いて自分を成長させていく。

この二つが両輪となってバランス良く回転し、ゴイゴイと前進していていきながら「お金」を得る、ついでに｢社会的信頼｣も得る。･･･これが、真の「はたらく」ということなのかな、と私は思う。

かく言う私も、２０代から３０代後半にかけて教職に就き、日々自己研磨してきた経験が、今の自分にものすごく生かされている。あの頃、真剣に取り組み、コツコツ頑張って得てきたものが、今の自分を助けてくれる。

真面目に頑張ってきたことは、全ては自分に返ってくる。

人生に無駄はない。はたらくことも同様。