虹のはじまりには愛が埋まっている1話目
桜の樹の下には死体が埋まっているんだよ、という名文を書いた梶井基次郎の「櫻の樹の下には」は有名な話だと鹿野すずは思う。十一月一日、すずは十八歳の誕生日を迎えた。法律的には成人を迎えたもののお酒はまだ飲めない歳。そんな目出度い素晴らしき日にすずは法事に来ていた。何よりも大好きで誰よりも自分の味方をしていてくれた祖母の一周忌だからだ。享年、八十五歳。バースデーソングの代わりにお経、ケーキの蝋燭の代わりに線香が鼻腔をくすぐる。大きく低い抑揚のないお坊さんの声はずっと昔から大嫌いだっ