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いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう 第四話

一度重なったものが離れていく。意図的にすれ違い、見えていたものも見えなくなる。そして、関係は複雑に絡み合う。

【距離】

前回第三話、木穂子の長文メールにより練は音を好きな気持ちを塞ぎ込むことに決めたのだ。きっと練の心の中では、「音のことを好きになったらダメだ」と何度も何度も繰り返していたのではないだろうか。

それを象徴するようにバスの中でも、練は通路を挟んだ反対側の席ではなく、音との距離をとる。

【想像】

今作は見えないところを想像させるように仕掛けられている。例えば、冒頭、静恵が留守をしていることが置き手紙で表される。左引は、見えてないと思って時計を取ろうとする。見えていないか、見えているか。私達は見えていないものは想像する。想像をすると、見えていないものが見えている以上に見えてくる。

そして、その最たる例が音における練の存在である。アルプス一万尺のときに一度重なったものが再びすれ違い離れていく。ストーブを買う時にすれ違う人、介護施設に送った人、安いストーブを買った人、隣のお兄さん、そのどれもが練である。

【社会】

この物語では自ずと社会が描かれる。そして、その社会は負の側面の投影が多い。その社会に対して、練と音は同じ気持ちを抱く。

練「よくわかんない気持ちになります」
音「うん」

すれ違う二人だが、心の奥底の方では、嘘をつけない。

バスに乗る幼児を抱いた母親、それに文句を言うサラリーマン、その文句に文句を言うサラリーマン、静観している人々。そこに何処かに違和感を抱くが何もできない。

そして、夜のバスに乗れない幼児を連れた母親に声を掛ける音。しかし、バスに揺られ、幼児は泣く。それに対して文句を言うサラリーマン。今回は音がその違和感を消そうと頑張るが、うまくいかない。そしてやむなく、場所を移動する音と母親。しかし、バスが揺れ、音が倒れ、洗濯物が床にぶちまけられてしまう。その中から学生がブラジャーを拾い、笑い物にする。それに笑う乗客、写真を撮る乗客、静観する乗客。そこで練が動く。練は誰よりも辛い顔をして洗濯物を拾うのだ。

【告白】

たこ焼きが食べられなかった音を横目で見ていた練はたこ焼きを作る。そこで練は、方言を使い本当の気持ちを話す。音を好きな気持ちが溢れてしまうのだ。好きで好きでどうしようもない。でも、好きなことを諦める。諦めなきゃならない。その決意は揺るがなかった。

【さいごに】

勘のいい木穂子は、たこ焼きの匂いに気付いてしまった。心配性な木穂子がどこまで想像するかはわからない。しかし、どこでどう繋がるかがわからない。社会もそうなのかもしれない。

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