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夕暮れは明日に繋がっている

遅ればせながら文庫版の『ナナメの夕暮れ』を買った。

なぜ単行本を持っているのに文庫本になった『ナナメの夕暮れ』を買ったのかと考えると、まだ何かの答えを求めていたからなんだろうなと思った。独特の感性で切り取られる世界にも、人生への純粋な感想にも、変化の姿にも興味はなく、また若林正恭という人が何か役に立つことを語っているのならばそれを読ませろという一種の欲望を抱えていたからだった。

しかしその思惑は間違っていた。

夕暮れとはなんだったのだろうか。何がいつ始まり何がいつ終わったのだろうか。僕は「たりなくてもいいよね」でもなく「もうたりました」でもなく、今までのことは全て繋がっているし、繋がっていくということだったのではないだろうかと感じた。社会の大きな変化、身の回りの人の変化、自分の生物的な変化、それらすべてのものに引っ張られながら人は生きていく。

この本から新しく学んだものはなかった。けれど青年期を終え成人期を迎えた僕を安心させてくれるものではあった。2020年代は僕にとってあまりにも未知で不確かなものだ。「生きていく」という言葉に「自分の責任で」という言葉が初めてくっつくからだ。それでも全ての変化に身を飲み込まれながら「なぜ?」をとことん考え抜いて生きていけば、自分にとって大切なものが見えてくるのではないかと感じた。

夕暮れは明日に繋がっていて、明日は10年後や20年後に繋がっている。

おしまい。


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