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キャリコンのひとりごと〜好意的関心

14年前、CDA資格を取ったときのスクーリングで、毎回最初に、ホワイトボードに書かれていた言葉。

「好意的関心」

スクーリングでは、キャリアカウンセリング、キャリアコンサルティングのトレーニングとして、対話やロープレなどを何度も行うので、自己を開示しあうし、いろいろなことから思ってもみなかったような感情が出てきてしまったり、それに心が揺さぶられちゃったりするからね。そうなると、傷ついたり傷つけられたりになる危険があったから、常に忘れちゃいけないこととして、見えるように掲示されていた。
今になっても、とても重要な視点だと感じる。

現し方のわからない女性

受けても受けても、内定をもらえなかった女性。
外見やみだしなみ、コミュニケーションの取り方に独特なものがある。
担当者を1人に決めることを希望せず、毎回その日の担当者を指名するその行動は自分勝手に見える。
そして何度か相談していても、懐いてくる感じがない。

彼女と相談した同僚たちや他所の相談員は、「困った人」という印象を受けている様子だった。
同僚が困って「前田さん~聞いてくださいよ~あの方どうなんですかねー?」と来るんだけどね。

ん〜そうじゃないんだよね。なんで相談受けているあなたが困るの?
懐いてくる感じがないのは、かわいがられてこなかったからかもしれないし、それか愛着を感じられない特性なのかもしれないよね。
身だしなみが整っていないのは、整え方を教えてもらってなかったり、学生会館に住んでるんだから、身近に聞く人がいないのかもね。事実、髪はボサボサしているけど、汗臭さはなくて石鹸の香りがするよ。
髪を梳かして結んだり、スーツの上衣を身体に合うようにお直ししたり、身だしなみを整えると気持ちよいことだと教えてあげたらできるようになったよね。

そもそもあなたの相談の場の視点は何なの?批評とか批判とか評価とか非難になってないかい?キャリコンがなんぼのもんさ?そんな偉いのかい?
『あなたのことを好意的に受けとめていますよ。』と表してこそのキャリコンだし、この相談の場じゃないかい?

などと偉そうに言っていた私・・・笑

そして、この人にはわかったふりをしなくてもいい、わからないことを聞いていいんだとわかったらしい彼女は、堰を切ったようにあれもこれも訊いてきた。
「今まで、周りの人の様子から、何か違うんだというのは感じてたんですけど、何をどうやって、誰に訊いたらいいのかもわからなかったんです。」

育てられてこなかったんだなぁ・・・
そんなの周りを見て覚えていくだろうとか、そのうちできるようになるだろうって思うのは間違いだよな・・・
子どもが社会的な人になっていくために必要なことを身につけていく過程には、周囲の大人の関わりが欠かせないんだと思っている。それは直接的(教える)でも、間接的(ロールモデル)にでも・・・
そんなことを改めて感じていた。

そして、なかなか決まらなかった彼女は、

地元に戻って、期限のある仕事だけど内定した。ところが内定の連絡を受けてどう返事して良いかわからなかったらしく、行き違いのあった事業者が私に電話してきた。
「あなたにこう言っても仕方ないんだけど…」
と、やり場のない気持ちを出す事業者の話を聞いて、電話を切ったあとに本人に電話すると落ち込んでいる声だった。
「~で、~で、そしたら険悪になっちゃって…」
(あ、険悪になったのはわかったのね。)

『あなたがずっと頑張ってきたのを知っている私は内定したのを嬉しいと思っているよ。』と伝えると、明日、受諾の返事の電話をするという。
そして、「いただいたお電話で悪いんですけど、もう一つ教えてください。」と言いだした。
(おお!こんな気も遣えるようになってるのね!)と思いながら、何かと聞くと…

「担当の方の様子はどうでしたか?怒ってましたか?」
(おお!気にしてるんだ!)

『大丈夫だよ。予想外の展開で驚いたみたいだけど、そこまで怒ってなかったから、明日電話したら、一番はじめに、昨日はすみませんでした。びっくりしてしまって…と言ってごらん。きっと大丈夫だから。』

そして翌日、内定報告の電話をしてきた彼女は「本当にいろいろとお世話になりました。ありがとうございます。」と切った。

好意的に受けとめられる経験が人を育てるのだと思うし、私のやったことは『めんこいめんこい😊』と思いながら接したことだけなんだ。

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