【法務】「夢の国」ではリーガルなんて要らない…か?
今回は「裏 法務系 Advent Calendar 2022」のネタとして寄稿しております。
znkさんからバトンを受け取りました!
今回の私の投稿は、姪を連れて東京ディズニーランドに行った時の日記です(笑)
本記事では「リーガルな現実世界」と「夢の世界」を行き来するニュアンス(?)を出してみました。
まず、Disclaimerがてら私の自己紹介をさせて頂きます。
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※テーマパーク法務の関係者ではありません。
※弁護士ですがクライアントにテーマパーク関係の企業はおりません。
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それでは、行きましょう🐭
1.入国(園)前に気づいた変化
私みたいにディズニーに詳しくなくても、パークに着いたら、きっと誰もがこう思うでしょう…
「久々の東京ディズニーランド®(登録5460985、以下TDLという。)でテンション上がるな~」
「殺伐な日々を忘れて『夢の国』(※1)で遊ぶぞ~」
(※1)株式会社オリエンタルランド(OLC)が、米国法人ディズニー・エンタプライゼズ・インク(ディズニーの知的財産権等の管理会社)との間で締結したライセンス、設計、建設及び運営に関する業務提携の契約に基づき運営する東京ディズニーリゾート®を意味する。
それはともかく、まずオンライン予約サイトで入場日を押えなければなりません。
TDRも、他のテーマパークと同じく、コロナ禍以降は入場制限がかけられております(※2)。
(※2)「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」、「遊園地・テーマパークにおける新型コロナウイルス感染拡大予 防ガイドライン」等を参照。
同サイトを通じ、入場予定日の属する月の前月1日に予約を確保してからチケット購入に進みます(特商法2条「通信販売」)。
予約日確保のためアカウントを作るのですが、その際、OLCが定める「利用規約」その他注意事項(民法第548条の2第1項「定型約款」)に同意することになります。
私は、いつも通り規約を読まずに「同意」ボタンを押して(※3)、当日のチケットを購入します(チケットの売買契約の成立(民法555条)、パーク内のサービス利用を享受する無記名債権の取得)。
(※3)規約を読まずに同意するユーザの比率についてはこちらを参照。
私としては、まさか「夢の国」でも利用規約に縛られるなんて思いもしませんでした(してました)。
もっとも、このような優しい世界では、我々を縛るルールなんて他にあるはずがありません(※4)
(※4)実際は、OLCの定める以下の規約のほか、ディズニー本社の定める規約等も含め、多くのルールに縛られることになる。
「プライバシーポリシー」… etc
暇つぶしに、興味本位で「東京ディズニーリゾートからのお願い」(以下「お願い」という。)を見てみます。
姪は「7歳未満」だが、私は「16才」を遥かに超えているのでクリアです!
次に、「お願い」では様々な禁止行為を定めてますが、特に以下の文言により、VTuber等の動画撮影が禁止されるかが最近話題になりましたね(※5)。
(※5)この話題について、本記事の投稿者が以下の感想文を書いている。
他にも気になった条文が・・・
私は、これを見て思わず「自分も写りたーい (◍>◡<◍)。✧♡」と叫んでしまいました(※6)。
(※6)本人を識別できる程度に自分の顔が(ぼかしなしで)映っていた場合、上記写真等は「個人情報」(個人情報保護法第2条1項等)又はプライバシー情報に当たりうるが、同記載をもって利用目的を具体的かつ明確に記載した(個人情報保護委員会GL Q2-1参照)とする趣旨と思われる。念のため前記「プライバシーポリシー」も確認したところ、「1.」「(3)」に記載された「商品・サービスのご提供および各種情報のお知らせのため」が最も該当しそうな記載ではあった・・・
さらに、チケットの発行、パークへの入場、地図の確認、各種パス(後述)やレストランの予約等は、基本的に公式アプリ上で行います。
予め公式アプリをDLせずにスマートな入場手続ができないと、後続のゲストにグダグダ感を察知され、後ろから踏みつぶされます。。。
2.入国(園)までの交通手段
ここまでグダグダと説明しておりますが、まだ入園していなかったですね。。。
さて、JR京葉線(鉄道事業法2条1項、2項の「第一種鉄道事業」)で舞浜駅に到着後、「東京ディズニーリゾートライン®(モノレール)」(同条項の「第一種鉄道事業」)に乗ってTDR側まで移動します(※7)。
(※7)上記のとおり、JRの在来線と上記モノレールは、いずれも鉄道による軌道を用いた旅客運送事業であり、鉄道事業法上2条「第一種鉄道事業」に当たるため、国交省大臣の許可に基づく事業である。なお、TDL内の「ウエスタン・リバー鉄道」は、法令上の取扱いが異なるようである。同「鉄道」の完成当時は旧法「地方鐡道法」が適用され、同一私有地内であっても二拠点間を結ぶ場合は同法上の手続の負担が生じるため、駅を1つにすることで規制を免れたと思われる。さらに余談であるが、JR線やモノレールに乗車する場合は運送契約が成立する一方、3つ目の「鉄道」の場合、パーク利用契約に包含されるサービスの一つというところであろうか。
3.入国(園)後に気づいた変化
どうやら、数年前まで存在していた「ファストパス」(特許第3700833号)が、現在なくなったようです(今更感ありますが)。
「ファストパス」とは、指定時間に予約(チケット発券)すれば、未予約のユーザが並ぶ列とは異なる列に入場して優先的に乗車できるという仕組みです(同文献の明細書【0016】以降参照)。
その代わりに、現在は「スタンバイパス」「プレミアアクセス(追加料金2000円で優先搭乗)」という仕組みになっております(※8)
(※8)どうやら「ファストパス」と若干異なるようである。私が入園した時点では、前者は「ホーンデッド・マンション」のみ、後者は「美女と野獣」のみが対象。
新アトラクションの「美女と野獣」に長い行列ができてますが、「プレミアアクセス」を利用すれば、追加料金2000円のチケット(「お布施」)をオンライン購入することで(優先搭乗できる債権の取得)、ほぼ並ばずに乗車できます。
「こんな不意打ちにダマされてたまるか!」
と怒り狂いそうになったものの、結局お布施を寄付して楽しんで感動して泣き(そうになり)ました・・・
「美女と野獣」は、複数人が乗車できるティーカップ(ライド)に乗って、物語の世界を旅するというアトラクションでしたが、ライドの動きがトリッキーすぎて「魔法」の力を感じざるを得ませんでした(※9)!
(※9)個々のライドは、複数のルート(パターン)を記憶したプログラムからの指令に基づき、床に埋設されたコイル(?)上を移動するが、ライド自体にもセンサが付いているため、ライドそれぞれの位置を微調整し衝突回避を実現している(「プーさんのハニーハント」も同様)。保守・運用契約(民法656条の準委任契約も参照)に基づくメンテナンス等の対象は、当該機器群のみならずソフトウェア・プログラムやサーバ等も含まれ多岐にわたると思われる。
次のアトラクションに向かう途中、パークの裏の方に建設中のアトラクション(※10)も見え、「夢の国」が進化し続けていることを実感しました。
(※10)「遊戯施設」は「用途規制が適用される指定工作物」(建築基準法第88条第2項、同法施行令第138条第3項)とされるが、所轄官庁(国交省)の公開する「構造方法等の認定に係る帳簿」によれば、アトラクション毎の建築工事の受託業者の一部を閲覧することができる。
4.リーガルを忘れて楽しめるか?
早速、パーク内でミッキー(※11)を見つけました(^^)/。
(※11)同国の「象徴」(日本国憲法1条参照)であるネズミのキャラクター。自ら初出演した1928年公開の映画「蒸気船ウィリー」の著作権期間切れ問題が、米国著作権延長法等の制定の契機ではないかが話題となった。なお、登録商標に関しては登録0982917等を参照。)
他にもプーさんやピグレット等と戯れましたが、こうしたキャラクターが実在することを目の当たりにし(※12)、さすが「夢の国」と思いました!
(※12)余談であるが、着ぐるみの「中の人」が劣悪な環境に置かれるケースも存在する。「中の人」に過重労働やパワハラに伴う精神的苦痛等が生じたとして使用者の安全配慮義務違反(労働契約法5条等)を認めた事例については千葉地裁令和4年3月29日(平成30(ワ)1394号)を参照。
テンションが上がり、姪とともにパーク内で写真や動画を撮影しまくります。
園内には「インスタ映え」するアトラクション関連の施設や彫刻等(美術の著作物(著作権法2条1項4号)、建築の著作物(同項5号)等に相当するもの含む)があり、またショー、パレード(音楽や舞踏の著作物(同項2号、3号)に相当するもの含む)が続くので、撮影が止まりません(※13)。
(※13)上記写真や動画を保存・配信等をした場合、原則として著作物の「複製」「公衆送信」等に当たる。ただし、同30条以下の権利制限規定の適用により許容される場合もある。例えば、自分のスマホの写真アプリに保存するため(私的使用目的の複製、同30条)の撮影であったり、前記施設が写り込んだにすぎない記念写真等(付随対象著作物の利用、同30条の2)、シンデレラ城等の屋外に恒常的に設置された美術又は建築物の写真等(公開の美術の著作物等の利用、同46条柱書)をSNS上で公開したりする場合である。
これらの写真は、全てインスタ等にアップしておきたいです(※14)!
(※14)境界が曖昧ではあるが、上記権利制限規定が適用されない場合、形式的に著作権侵害になる可能性も残る。前記著作物をメインで写(映)した写真や動画等をSNS等で配信する行為は気をつけたほうがよい(特に、配信者:営利企業/著作権者:キャラクターコンテンツの権利意識の高い企業の場合)。また、著作権法に抵触するか以前に、他人の肖像権に侵害したり、そもそも前記「お願い」に抵触する可能性もあるので、マナーを守って撮影してもらいたい(一応)。
太陽が沈み、すっかり辺りは煌びやかで幻想的な光景となりました。
市街地だと高層建築物に赤いランプが灯りますが、シンデレラ城には赤いランプが点灯しておりません。
これも「夢の国」が治外法権であるためでしょうか(※15)。
(※15)航空法51条、51条の2、航空法施行規則127条の7条の2第1号等に基づき、60m以上の高層ビル等については、航空障害灯の設置が義務付けられているが、同建築物はこれを下回る高さとなっている。これにより航空障害等の設置基準を回避していると考えられる。
さて、夜のパレードも終了し、姪は今日の出来事の全てを忘れたかのように「( ˘ω˘)スヤァ」となっておりました。
私もリーガルな日々を忘れる(?)という「魔法」にかかっておりましたが、もう解かねばなりませんね...
次は、Hinata Oshimaさんにバトンを渡します。よろしくお願いします!
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