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「三月は深き紅の淵を」第二章の感想文

恩田陸さんの作品、第二章は「出雲夜想曲」です。主人公は堂垣隆子という編集者で「三月は深き紅の淵を」の作者を探しています。

出版社は違うけれども同じく編集者の江藤朱音を誘い、寝台車で出雲へ行くのですが、その列車の中で二人で作者を推理します。色々な意見を言い合い、おそらくこの人だと思える人がいました。そしてその人に会いに行くことになります。

以上があらすじです。寝台車の中で二人でお酒を飲みながら話し込むのですが、つまみにギンビスのアスパラガスがでてきました。彼女たちもこれが好きですが、私も好きです。昔からあって懐かしい。

隆子が作者の候補を何人か挙げ、その理由も説明していますが、丁寧に調べてありました。どの人が書いていてもおかしくないです。隆子はどうしても作者が知りたかったのですね。

逆に朱音の方は、知りたくない様子でした。私も知りたくはないかな。というより、昔話なども作者不詳なので、作者がわからないならそれでいいと思います。ただ朱音の場合、知りたくない理由は他にもあるのですね。

出雲には隆子が推理した作者の住所があります。相手に連絡もせず、東京から出雲に行くとは大胆ですね。編集者というのは行動力もあるのでしょう。この旅で作者にたどり着くのでしょうか。二人の会話、朱音の態度、奇妙な感覚、それらから隆子が気づいたこと。少しゾッとしました。

朱音は伝説だと言ったけれど、私は朱音の例え話は本当のことだと思います。この本ができた経緯はこれが一番相応しい。その後にいろいろ尾ひれがついたのかと。

決して傑作ではないけれど、印象に残る本。そういう本は確かにありますよね。惹きつけられる、忘れられない、また読みたい。そう思わせてくれる本に巡り合うのは幸せです。

隆子にとってはこの本は特別なもので、だから作者に執着したのだけれど、朱音はこの本が好きではなかった。むしろ辛くなるのですが、やっぱり特別な本だったようです。

この二人が出会ったのは必然だったのでしょうが、もう二人の間でこの本は話題にはのぼらない気がしました。でもきっとそれぞれの心の中にいつまでも存在し続けるのでしょう。


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