バークリー音楽院という<場所>:リオネール・ルエケが言っていたこと
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バークリー音楽院という<場所>:リオネール・ルエケが言っていたこと

柳樂光隆 Mitsutaka Nagira

先日、リオネール・ルエケにインタビューした時( https://instagram.com/p/BCHrl7WtMwN/ )に彼が言ってたこと。

「僕はベナン人だし、僕のトリオのフレンクはハンガリー人で、マッシモはスウェーデン人。バークリーでは彼ら以外にもアヴィシャイみたいなイスラエル人とか、ブラジル人もアルゼンチン人もいたし、日本人だっていた。ニューヨークに来る前に僕はパリにもいたしね。いろんな影響を気付かないうちにも受けてるんだよ。」

バークリーみたいな場所というの、教育機関である前に、そういう様々な文化を背景に持った人たちがジャズって音楽ひとつで混じり合うことができる〈場所〉とでもあるんだなと思った。広い世界に出て、広い世界で音楽を作るってことを意識せざるを得ない場所なんだろね。

これを聴いて思い出したのが、上原ひろみさんの言葉。実は上原ひろみさんにインタビューした時( http://mikiki.tokyo.jp/articles/-/9963 )に「新作『Spark』にはイスラエルやアルメニアの音楽のテイストがあるように感じますが、どうですか?」と聞いてみたら、

「自覚はないですね。バークリーにはイスラエル人とか世界中から来ている同級生が沢山いたから、知らない間に影響を受けているのはあるかもしれませんね。」

との答えでした。この部分は原稿ではカットしたけど、実は大事なところだったのかもしれないとリオネルの話を聞いた後に思い始めた。

上原ひろみの音楽はどこの地域のものでもどの国のものでもない無国籍というか、ユニバーサルなところが特徴で、実はそこが世界で評価されている理由だと思っている。どこの国で聴いても違和感がない感じね。その音楽性が生まれた理由には、バークリー音大での経験もあるのかなと。

ちなみにバークリー出身のトランぺッターのクリスチャン・スコットにインタビュー( https://instagram.com/p/-ykMHetMwb/ )したときに彼が言っていたのが、

「いろんなジャンルを壁を作って区別するのはネガティブな考え方だと思う。僕らは世界中をツアーして回っていると、自分はアフリカ系だとかあなたはアジア人だとか、そういう考え方ではなく、みんな<ワールド・シティズン=世界の中の市民>であるという認識を強く持つようになってきている。文化の違いよりも、共通する部分のほうが多いと思うようになった。壁をもうけることで違う部分を強調するのは違うと思う。だから、共通部分に目を向けてコミュニケーションを盛んにしていこうという考え方に基づいて、(ジャズを)<ストレッチ>しようとしているんだ。」

それはもちろん普遍的な考え方でもあるけど、わざわざ言葉にしてくれるジャズミュージシャンが増えたのは、時代や世代の感覚もあるのかなという気がする。で、それにはバークリーみたいな教育機関という<場所>が大きく関わっているのかもとも思った。

バークリーみたいな教育機関の教育システムということだけじゃなくて、バークリーという場所があって、そこにどんな人が集まってきているのか、もしくは、どんなところから人が集まるように学校を運営しているのか。みたいなことも含めて、アメリカの音楽教育システムの中から、すごく面白い音楽が生まれているのかなと。 バークリーに限らず、ニュースクールや、ノーステキサスなんかもそうかもしれないと。仮説ですけどね。

というのは、WIREDでのレコーディングスタジオの特集「東京の音楽を進化させる3つのレコーディング・スタジオ」( http://wired.jp/magazine/vol_21/ )で、Illicit Tsuboiさんやhmc池田洋さん、Tokyo recordingsの皆さんが言っていたことにも通じるのかもしれないとも思った。ウェブ上ではなく、<同じ空間>で音楽をシェアするということ、もしくはその上でコミュニケーションをとることから何かが生まれること。

リオーネル・ルエケのインタビューでは大きなヒントを沢山もらったな。そして、そんなインタビューは過去に別のミュージシャンが話してくれた重要な言葉と自然に繋がる。音楽ライターってそういうことの積み重ねでアーティストに育てられてる気がする。僕ら書き手はそれをどうやって彼らに返していけるだろうか。そんなことを最近、よく考える。

※参照

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柳樂光隆 Mitsutaka Nagira
79年、島根県出雲市生まれ。音楽評論家。 21世紀以降のジャズをまとめた世界初のジャズ本「Jazz The New Chapter」シリーズ監修者。共著に鼎談集『100年のジャズを聴く』など。鎌倉FM「世界はジャズを求めてる」でラジオ・パーソナリティもやってます。