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2022 023:トゥミ・モゴロシ - Group Theory: Black Music

南アフリカのジャズ(の新譜)が話題を集めるようになってから割と時間が経ちましたが、相変わらずいい感じのリリースが続いています。このアルバムもそのひとつ。南アフリカのジャズ・シーンはUKのシーンとの交流が活発みたいな話がよくありましたが、この南アフリカのドラマーのトゥミ・モゴロシのアルバムはその文脈でもあって、南アフリカのMushroom HourとUKのNew Soilの共同リリース。アーティスト・レベルじゃなくて、レーベル同士も繋がっていて、一緒に盛り上げているって感じがあります。

それに当初はUSの影響を消化したハイブリッドなサウンドの若手が出てきてるって印象でしたが、近年はそこよりも中堅の充実ぶりが目につくようになった辺りがこの国のシーンの充実ぶりが本物なのかもって思わせる理由になっています。ハイプじゃないなっていいますか。

このトゥミ・モゴロシも若手というよりは中堅に差し掛かる世代のミュージシャン。UKのシャバカ・ハッチングス率いるシャバカ&ジ・アンセスターズのメンバーでもあり、ジ・アンセスターズの元になった南アフリカのバンドのアマンドラ・フリーダム・アンサンブルのメンバーでもあり、すでにキャリアは十分。クラブジャズのニコラ・コンテにも起用されていたりもします。そもそもトゥミの2014年のデビュー作『Project ELO』はクラブシーンで人気のコンピレーション『Spiritual Jazz』シリーズでのお馴染みのUKのJAZZMANレーベルからのリリース。ヨーロッパのでキャリアは南アフリカのジャズシーンの中でもトップだと思います。

そんな彼の音楽は言うまでもなくスピリチュアルジャズとして紹介されることが多いんですけど、普通のスピリチュアルジャズではなくて、かなり変わってるんです。『Group Theory: Black Music』はそのトゥミならではの特異なスピリチュアルジャズ・サウンドが結実した良作だと思います。

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