Omri Mor - It's about Time:Disc Review / Live Report 2019/05/18
オムリ・モール『It's about Time』
アヴィシャイ ・コーエンやオメル・アヴィタルが起用するイスラエルのピアニスト オムリ・モールのアルバム。
ピアノが超絶上手いのは言うまでもないが作曲がすごい。どんどん展開していくしリズムもどんどん変わる、なんだこれ…
ここ最近のイスラエルジャズの若手から薄れていた濃厚な中東サウンドがあるとも言えるけど、強すぎてなかなか収まりきらないくらいの地域性の落とし込み方が超個性的で、イスラエル・ジャズの中でもあまり聴いたことがない感覚がある。例えば、ティグラン・ハマシアン辺りにも通じるストーリーテリングの上手さと展開の強引さだからこそのカタルシスがあるし、その中には現代のジャズの高度なリズムなどが入っている。
というタイミングで、ちょうどオムリ・モールが来日していたので観てきたのだが、音源をはるかに超える音楽で、衝撃的にカッコよかった。
特に初めて知ったドラマーのカリム・ジアッド(Karim Ziad)のインパクトがすさまじ過ぎた。
アルジェリア出身でパリ在住のドラマーが叩くリズムがあまりに個性的だったのが、サラーム海上さん曰く、北アフリカのグナワ音楽とジャズ・ドラミングの融合とのことで、モロッコで行われているGnaoua Festivalのプロデューサーもやっているとのこと。どうやらそのシーンのキーマンらしい。
そっか、だから「Marrakech」(マラケシュ=モロッコの都市)なんて名前のすごい曲もあったのね…
生で観たカリム・ジアッドのドラミングは、グナワの金属パーカッションのカルカバをハイハットで、太鼓のトゥベルをタムで、とドラムセットに置き換えつつ、ジャズ化しつつ、それをベースにインプロヴィゼーションをして、こんなすごいドラマー、どこにいたんだよと思ったら、ザヴィヌル・シンジケートのドラマーとのこと。そらハンパないはずよね…つか、
彼のアルバム『Jdid』には、ティグラン・ハマシアン、アリ・ホーニグに、ハミッド・エル・カスリ参加。ハミッドさんはジェイコブ・コリアーの『Djesse (Vol. 1)』に参加してるヴォーカリストですね… すごいところでがっつり繋がったな…
アフリカの様々なリズムを操りつつ、ジャズに関しても高い技術を持ってて、みたいなドラマーを起用して、アヴィシャイ・コーエンやオメル・アヴィタルが作り上げたUSコンテンポラリージャズ×イスラエル音楽の方法論を北アフリカにまで拡張したみたいなのがオムリ・モールの音楽なのかも。
ジャズとイスラエルとアルジェリアがハイブリッドに混ざってるところと、中東〜北アフリカな変拍子が突然フォービートになったりとリズムや音楽をズバッと切り替えたりなところと、音楽の構成の作り方も上手いし、それを即興的にやるのも超高度ですごくて、驚きに満ちてたライブでした。
そんな音楽をやるために、10本の指を動かせば超複雑なリズムを奏でられる音階のある打楽器としてのピアノのポテンシャルを活かすようなオムリ・モールの演奏も彼の音楽にとって超機能的で、演奏と音楽のデザインとコンセプトが秀逸。
ちなみに前の方の席にアルジェリアの方々が何人かいて、グナワのリズムになった瞬間に声とか上げて発狂しつつ、ちゃんと手拍子を加えてて、そこも最高でした。わー、ホンモノのグナワ×ジャズじゃん!!みたいな感じが増幅されて。最後のほうで、カリムとオムリがグナワのコール&レスポンスな歌もやってたのも最高。
スナーキーパピー〜ジェイコブ・コリアーからちょうどグナワにハマっていた僕にとってはオムリ・モール〜カリム・ジアッドのライブはインパクトありまくりでした。次回、カリムが来たらインタビューしたい…(2019/05/18)
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