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雪のことかよ 短歌#3

こんばんは。

今日は古着買いに行ったり公園で動き回ったりしてほどほどアクティブに過ごしていました。皆さん如何お過ごしでしょうか。

今日の作品

体温計くわえて窓に額つけ「ゆひら」とさわぐ雪のことかよ
穂村弘/「シンジケート」

穂村弘さんは、俵万智さんと並んで短歌界のレジェンド(は言い過ぎ?)といったところだろうか。2人共短歌だけでなくエッセイなども面白いものが多くそちらで知っているという人もいるかも知れない。

名文とは?

文章を書くとき、物事の表面だけを捉えて、体裁を整えて書くことってよくあると思う。実際それで見事に整った名文もあるだろう。そういうのって読む人が読めば名文だけれど大衆的でないということがおそらく多くあると思う。

でも本当の名文は「リアリティ」とか「肌感覚」とかに迫るものだとぼくは思う。一般大衆がいつも感じているけれど言語化されていなかったものを見事に文にしたもの。(そして僕もできればそんな文章が書きたいと思ったりする。)

他の言い方で言えば、言葉のペンキで表面を塗りたくって崇高な城を作ったような文章ではなく、その人の生活の一部分がありありと伝わってくるような文章がいい文章だと思う。

そんな一例が村上春樹作品だと思う。読んだことない人は一度読んでほしい。読んで驚くだろう。なんてポップで読みやすい文体なんだ、と。ポップな文体の中にいわゆる春樹ワールドという文学的世界観が広がっているのが村上作品の最大の魅力だろう。

ゆひら

掲出歌からは、まさに生活感・生活の中の肌感覚がビンビンに伝わってくる。大衆の感覚・リアリティを言葉のシャッターで美しく切り取った短歌だ。主体と客体(くわえている人)が生きて、生活していて、そのまさにワンシーンなんだよね。

なんといっても「ゆひら」。

「ゆひら」をそのままの形で切り取れる感覚はおそろしく繊細で、おそろしく豊かだ。

情景がありありと読者の中に浮かぶ。そして回らない頭で「ゆひら」とつぶやいているひとが不思議と愛しく思えてくる。

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