電気犬

中二病なSFショートショートを執筆しています。

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人類最後の救世主|SFショートショート

「ついに、完成した・・・」 「やりましたね!教授!」 ついに・・・ 人間が『死』から解放される時が来た。 私達の研究チームは、人間の脳と量子コンピューターをつなぎ、人間の『記憶』『人格』の全てをコンピューターへ転送する事を可能にした。 転送された者はコンピューターの中に形成されたVR(バーチャルリアリティ:仮想現実)世界の中で生活し、永遠に生きる事ができるようになる。 全ての人から『怪我や病気の苦しみ』、『大切な人との別れの悲しみ』を取り除いてあげられる。 「私

    • シミの住人|SFショートショート

      ある人間の食べ物の液が一滴、その者の服に落下した。 それが世界の始まりだった。 その液体は服の布に染み込み、繊維の一本一本にまで浸透していく。 そこにある時、細菌が一つ、外界から飛来してきた。 細菌にとってその栄養価の高い液体の中がとても居心地が良く、その中に留まる事とした。 その場の栄養を使い、細菌は順調に個体数を増やしていった。何も考える力はなく、個体を増やす事のみに専念していく。 そうしているうちに、液体の水分は蒸発を進め、一部に乾燥した部分ができた。 細菌の世界か

      • リバースエンジニアリング|SFショートショート

        森の方で大きな衝撃音が鳴り響いた。 私はそれに気付き、その場所へすぐに向かった。 酷い・・・。 辺り一帯から漂うものすごい熱と煙。 何も見えない。直感的に近寄るのは危険だと感じる。 隕石でも墜落したのだろうか? 風が強くなり煙が晴れる瞬間があった。 おぼろげながらもそこにあった物体の輪郭が浮かび上がってくる。 「これは・・・!」 そこにあったものは "ピラミッド" のような形をした物体であった。 その整った三角錐の形から、隕石などの自然物ではない明らかな人

        • 僕が変えられるもの|SFショートショート

          「こんなの残酷すぎる...!」 僕は拳を机に叩き付けた。 「何のためにここまで...」 今までの事が走馬灯のように頭を駆け巡ってきた。 ーーー 子どもの頃の自分。 内気で友達も居なかった。 既に人生に絶望していた。 そんな時 あの子が現れた。 あの子の笑顔は太陽みたいだった。 あの子を見ているだけで幸せだった。 あの子の側に居られたら 他に何もいらなかった。 そして... ...交通事故。 あの子は居なくなった。 泣きじゃくる僕。 再び人生に絶

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        人類最後の救世主|SFショートショート

          勇敢な猿|SFショートショート

          薄暗い地下通路。 聞こえるのは俺たちが歩く足音だけだ。 「マッキー、大丈夫だ。もうここまで来れば」 「ありがとうユキハル。僕なんかの為にこんな事になっちゃって...」 「いいんだよ。何もかも、あいつらのせい。  俺たちをここまで騙しやがって...」 俺はとある研究所の研究員。 下っ端も下っ端だ。 しかしこの国の未来を左右する研究に携われて、ここまで誇りを持って研究をしてきた。 そしてこいつの名前はマッキー。 猿だ。 その猿がなんでこんな風に喋れているかって言うと..

          勇敢な猿|SFショートショート

          三人で撮った写真|SFショートショート

          彼、彼の親友、彼女。 彼らは仲良し三人組。 いつも一緒にいた。 いつの日からか、彼は彼女に恋愛感情を抱くようになった。 彼は思い立ったらすぐ行動する男。 彼女に告白をした。 彼女ははじめ、戸惑いを感じながらも彼を受け入れた。 彼の親友は二人を心から祝福する。 二人が付き合い始めてしばらくした後、彼は子どもの頃からの夢であった『宇宙飛行士』になった。 恋人である彼女と彼の親友に支えられながら、必死に技術を学んでいく。 宇宙飛行士の経験を積んで何年かした頃、彼は大

          三人で撮った写真|SFショートショート

          電気犬は飼い主の夢を見るか?|SFショートショート

          駅前の広場で犬が一匹座っている。 彼の名前は『パチ』。 よくいる『電気犬』だ。 彼は飼い主が帰ってくるのを毎日こうして待っている。 パチは待っている間、電力消費を抑えるため『待機モード』になり一切動かなくなる。 今日も、いつもと同じ時間に飼い主が帰ってきた。 パチは『活動モード』に切り替わり、立ち上がる。 飼い主を見上げ、得意げな顔をしながらシッポを振る。 「今日もいい子にしてたか、パチ」 綺麗に磨かれた金属光沢でツヤツヤの頭を撫でられると、パチは目を細め、

          電気犬は飼い主の夢を見るか?|SFショートショート

          冷たいストーブ|SFショートショート

          我が家は寒い。 なぜなら冷たいストーブがあるからだ。 冷たいストーブとは、言葉通り冷たい風が出てくるストーブのことだ。 なんでそんな物を置いているのか、と思うかもしれない。 実はこのストーブ、貧困層向けに開発された商品で、「熱を送る機能」がある。 仕組みはこうだ。  ①冷たいストーブを起動すると、そのストーブが置いてある部屋の熱が奪われる  ②奪われた熱は、メーカーが用意した工場のような所(詳しくは分からないが)に送られ、蓄熱装置の中に貯められる  ③その送った熱の対

          冷たいストーブ|SFショートショート

          桜の星|SFショートショート

          今年も、この星の『桜』を見れて良かった。 最後にこの目で...。 「バッファロー、体の具合はどうだい?」 「ありがとう、ジェニー。  今日はすこぶる調子が良いよ。この体で地球に来れるのは最後だからな...。しっかり目に焼き付けておかないと」 「...大丈夫さ。  今の『ブレインストール技術』はすごく進んでるから、映像だって肉眼で見るより鮮明だ。  それに...体の動きだって『換装体』を使用すれば今の私なんかより自由に動けるようになる」 「それはそうなんだがな...」

          桜の星|SFショートショート