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フィンランドと日本は絶妙に似ている。サウナとお風呂の文化から豊かな生き方を探る

”フィンランドと日本は似ている”

この言葉を聞いて、あなたはどう感じますか?

「そうそう、その通り」という方もいれば、「全然違うよ」という方もいらっしゃるでしょう。

フィンランドは幸福度の高い、北欧の国。
日本から遠く離れているし、きっと全く違う文化を築いているに違いない。

以前の私は、そんな風に思っていました。

エラマプロジェクトと関わるまで、フィンランドと日本にたくさんの共通点があるなんて、想像もしていませんでした。

でも今の私は、様々な角度から両国の共通点を学び、それを楽しんでいます。

さあ、あなたもフィンランドと日本の絶妙なつながりを感じてみましょう!

フィンランドと日本の絶妙なつながりって?

改めましてこんにちは。
エラマプロジェクトの和文化担当、橘茉里です。

もともと私は、エラマプロジェクトの講座の受講生。

その時、フィンランド生涯教育研究家の石原侑美さんから、フィンランドと日本のこんな共通点を教えてもらいました。

・国土の約70%が森林地帯(約70%は世界でトップクラス)
・フィンランドのサウナ文化と日本のお風呂文化(どちらも裸の付き合いがある)
・内気でシャイだけどお酒を飲むと陽気になる
・靴を脱ぐ習慣がある(フィンランドも基本的に靴を脱いで室内に入る)

「へえ~、そうなんだ!面白い!」

そんな風にとてもワクワクしたものです。
自国との共通点が分かると、フィンランドについて知るのがますます楽しくなりました。

その後、和文化の専門家としてエラマプロジェクトに携わることに。
侑美さんと一緒に「フィンランド文化と和文化の絶妙なつながり」を探究していくことになりました。

私たち二人で探究した両国のつながりをお伝えする講座は、2020年春にスタート。

「アート・デザイン」「教育」「働き方」「スポーツ」「音楽」「祭り」「余白の文化」「自然との共生」など、様々な切り口で両国のつながりとそれぞれの素晴らしさを紹介してきました。

実は、この講座を始めた動機のひとつに、「フィンランドは素晴らしいけれど、どうせ日本は……」と自国を低く見てしまう人が多い現状を何とかしたいという想いがありました。

世界幸福度ランキング1位を何度も獲得しているフィンランド。

日本の人たちはフィンランドに尊敬や憧れの目を向ける一方で、つい自国を劣っているかのように感じてしまいがちです。

でも、そうじゃないよ。
フィンランドも日本もどっちも素晴らしいんだよ。

それを伝えるために侑美さんと私が選んだのは、両国を比較することではなく、つながりを見つけていくという方法でした。

フィンランド×日本の掛け算で幸せのタネを届けたい。

それが私たちの想いです。

今回は、サウナとお風呂の文化を例にとって、フィンランドと日本のつながりをご紹介していきます。

フィンランドも日本もどっちもいいね。

そんな風に思っていただけたら嬉しいです。

日本のお風呂はサウナだった!?フィンランドのサウナと日本のお風呂

フィンランドの人口は約550万人。そしてサウナは、なんと300万以上もあると言われています。
一戸建ての家やアパートにもサウナがあるそうです。驚きですね。

そんな世界一のサウナ大国フィンランド。

フィンランドの人たちにとって、サウナのない人生は考えられないほど、サウナは大切なものです。

ところで、日本のサウナとフィンランドのサウナは別物です。

日本によくあるのは高温のドライサウナ。温泉や銭湯で見かけるタイプのものですね。

一方、フィンランドのサウナは比較的低温で、蒸気を発生させるスチームサウナです。

フィンランドのサウナの特徴はこの蒸気(ロウリュ)。
ロウリュとは、サウナストーブに水をかけた際に発せられる蒸気のことです。

それほど熱くないロウリュのサウナの中でリラックスしたり、自分自身を浄化させ、リセットさせたりするのです。

ですので、日本のサウナのようにテレビを置いたりはしません。フィンランドの人たちは、ゆっくりと時間の流れを楽しむのです。

さて、フィンランドの人たちにとって欠かせないサウナ。日本に置き換えるなら、それはお風呂ではないでしょうか?

フィンランドのサウナも日本のお風呂も、どちらも裸の付き合いがあるという点で共通していますし。
また、フィンランドは湖畔にサウナがあり、日本は海や山に面して露天風呂がある。どちらも自然の中で楽しむことも似ていますね。

そして日本人はお風呂が大好き。

日本全国に温泉の名所があり、昔ながらの銭湯や現代的なスーパー銭湯も各所にあり、日々入浴客でにぎわっています。
自宅での毎日の入浴を楽しむ人も多いですね。

そんな日本のお風呂。
現代では浴槽に湯を溜めて入浴する場所を「風呂場」と言っていますが、元来、「風呂」はサウナのことを指しました。

現代人の感覚では、「風呂に入る=湯につかる」ですが、古い考えでは入浴には2種類ありました。お湯につかる「湯浴」と、蒸し風呂(サウナ)に入る「風呂」です。

「風呂」は蒸気や熱気で身体の垢を浮き上がらせて、その後に水やお湯で洗い流すタイプの入浴方法。

平安時代末期には、すでに京都の町に銭湯(公衆浴場)があったと言われています。

初期の銭湯は恐らく蒸し風呂の方が主流だったのではないかと思いますが、その後、湯につかる湯屋と蒸し風呂の風呂屋が両方共存する時代は長く続いたようです。

ちなみに江戸時代、江戸の町に最初にできた銭湯は風呂屋だったと言われています。

というわけで、実は昔の日本人は蒸気のサウナにとても馴染みがあったのです。

そう考えると、我々がフィンランドのロウリュ(蒸気)のサウナに惹かれるのは、日本人のDNAに染み込んだ風呂文化の記憶のせいかもしれませんね。

日本の禊に通じるフィンランドサウナの清めの精神

日本には古くから禊(みそぎ)という考え方があります。

禊とは川や海などの水で身体を洗うことで、身のケガレを祓い清めることです。水には浄化の力があると考えられているのです。

禊のルーツは、日本神話に登場する国生みの神イザナギ、イザナミまでさかのぼります。

イザナギは、死んでしまった妻イザナミを求めて黄泉の国(死者の国)を訪れます。そして黄泉から逃げ帰った際に、死のケガレを祓うために、水辺で身を清めました。これが禊の始まりだとされます。

みなさんも神社に参拝する前、手水舎で手を清めますよね?
これも禊を簡略化したものです。

水で身を清めることが禊なら、お風呂に入ることも禊の一種と考えることができます。

「お風呂に入ってさっぱりする」

日常的にこんな表現を使うことがありますが、これは物理的なことだけではなく、精神的な意味でも用いられているように思います。

こんな風に、私たちの日常には禊の感覚が息づき、お風呂は清めの場所として機能しているのです。

一方、フィンランドでもサウナは神聖な場所という認識がありました。サウナは、この世の入り口であり出口と考えられていたのです。

30年ほど前まで、フィンランドではサウナで出産することが一般的な選択肢の一つでした。
また、サウナで遺体を洗って欲しいという遺言のテンプレートが今でも存在するそうです。

生まれたての赤ちゃんや死者を清める場所としてサウナが利用されていたのです。

このようにフィンランドの人たちにとって、サウナは何世紀にもわたり、肉体と精神を浄化する場所でした。

サウナの効果としてストレス軽減や痛みの緩和などがありますが、それだけでなく、古来フィンランドでは、サウナの蒸気(ロウリュ)にはスピリチュアルな力があると信じられていました。

ロウリュは痛みや病気を治すだけでなく、邪悪な精神を取り除くことができると考えられていたそうなのです。

これって禊に近い考え方ですよね。

フィンランドのサウナと日本のお風呂。
色んな共通点がありますが、私は表面的な類似よりも、こういった精神的なつながりに魅力を感じます。

フィンランドと日本のつながりから、豊かで幸せな生き方を見つける

今回は、フィンランドのサウナ文化と日本のお風呂文化をご紹介しました。
いかがだったでしょうか?

フィンランドのサウナ文化はとても素晴らしいものです。そして日本のお風呂文化も素晴らしいのです。

両者は禊、清めという近しい精神性を持っているので、フィンランドのサウナで感じられる豊かさは、日本のお風呂でも感じられるはずです。

フィンランドに行かないと、フィンランドのサウナに入らないと、豊かさを感じることなんてできない?

そんなことはないのです。

私たちの身近な暮らしの中に、幸せのタネはたくさんあるのです。

フィンランドと日本のつながりを知ることは、身近にある幸せに気づく良いきっかけになると思っています。

みなさんが豊かで幸せな生き方を歩んでいけますように。

侑美さんと私は、これからもフィンランドと日本の絶妙なつながりを探究し、お伝えしていきたいと思います。

Text by 橘茉里(和えらま共同代表/和の文化を五感で楽しむ講座主宰/国語教師/香司)


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