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鳥と火花

路地裏に隠れて絡めた指と
逸り高鳴る心拍の摩擦
みぞおちはチリチリと
火花を上げて震えた

部屋に入るなり解き放たれて
崩れるようにふたりで笑う

品のないシャンデリアが
カシコカシコと音をたて
秒針に追われる俺達は
笑ったまま鳥籠に飛び込んだ

悪事を鎹に繋がった
子供のようなその恋は
鳥籠で戯れ合う小鳥のように
ふざけているだけでただ熱く
飛べないことなど何でもなかった

薄暗い部屋に繰り返す
明日のない交わりに
心が近付けば戸惑いは増え
愛に近付くほど無口になった

ふたりは小さな籠の中
いつしか鳴かない小鳥になって
ありふれた空の高さを知った

あの日の一瞬の火花を求めて
慰めに火をつけた線香花火は
火溜まりを落とすことなく
熱だけが消えた

いまはただ
仄かに薫る夏形見
抜け殻の鳥籠に
まだ空は高かった