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残穢

2016年公開
監督:中村義洋

<あらすじ>
 寄稿される怪談話を調べ、出版している小説家の「私」は、ある投稿と出会う。とあるアパートの一室に住む女子大生学校(久保さん(仮))からの投稿で、畳間から何かを掃くような音がする。気味が悪く扉を閉めていたが、気になって開けてみると着物の帯のようなものが動いたように見えた。事故物件かどうか調べてみることにする、と。
 その後不動産屋へ事故物件なのかどうか問い合わせると、そういうわけでもないようだった。しかし、怪奇な現象が起こるのはその部屋だけでなく、隣の部屋や、離れた上の階の部屋でも起こっているようす。二人はその土地の過去を調べることにした。

☑受け取ったテーマ
・「呪い」の連鎖
・土地にまつわる歴史の不可解さ
・本質的な恐怖やそれに伴う思考

☑こんな人におすすめ
・純ホラーが好きな人
・呪怨や仄暗い水の底からがハマったひと
・音で驚かせてくるホラーが苦手な人

☑️作品の特徴
 純ホラーと書きましたけど、私の思うそれとは、「静かに恐怖を与えてくるもの」のことを指します。具体的に言うと、音や見た目ではなく、何が起こるか分からないという、未知の恐怖です。それが的確に表現された作品でした。
 音で驚かすチープなホラーでもなければ、違和感のあるCGを多用した作品でもない、邦ホラーの王道を行く作品であると思います。

☑️感想
 ドンピシャで大好きなホラーでした。点と点が繋がっていくホラーストーリー。無駄にグロテスクな展開もなく、比較的CGが多用されるようになってきた中での作品でありながら、的確なCGの使い方。最高でした。
 歴史を研究して行くような物語の流れで、点があちらこちらに散りばめられていながら、全てが根幹では繋がりを持っている。穢れが穢れを呼び、今日まで繋がってきた正に歴史を紐解いていく面白味がありました。
 そして、怪奇現象の非合理さについての言及があったのが面白かったですね。同じアパートで起こる複数の異なる怪奇現象。しかし、部屋番号や位置関係に関連性はなく、同じ原因とするには辻褄が合わない。そうは言っても、怪奇現象というのはもともと合理的なものではないのだ、と。
 であるならば、何故人はその原因を辿りたくなってしまうのだろう。怪奇現象が起こったとき、真っ先に知りたくなるのはその場で、過去死んだ人がいるのかどうか。あくまで、どのような原理でその怪奇現象が起こっているのか、ではないということ。どこに原因や理由を求めているのか。なぜ、過去にあった死が怪奇現象とひも付けられ納得できてしまうのか。面白い哲学だと思います。
 真の恐怖とは、何が起こるのかわからないという不可解さから生まれるのでしょう。そこが謎のままで終わるからホラーとして面白さが増すのでしょうね。

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