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【会員の日記】ローマ・ボルゲーゼ美術館レポ 前編※2024年2月更新


はじめに

みなさんこんにちは。私は一橋大学の派遣留学制度を利用し、2023年9月よりイタリア・ローマに留学しているアインズ一期生です。今回は、現地の大学から徒歩15分ほどのところにある『ボルゲーゼ美術館・Museo e Galleria Borghese』を紹介しようと思います。

ボルゲーゼ美術館は、バチカン美術館などと比べると日本での知名度は劣りますが、ローマで最高の美術館とも言われる、非常に優れた施設です。

ボルゲーゼ公園

ボルゲーゼ美術館は、ボルゲーゼ公園という大きな公園の中に位置しています。上野公園の敷地内に国立西洋美術館がある、あんな感じです。

ベンチでお弁当を食べたり
お花を愛でたり
噴水の上で鳩さんが休んでいたり

美術館のコレクションは、17世紀にボルゲーゼ枢機卿が集めたものです。途中、ナポレオンがぶいぶい言わせてた時代にいくつかの作品がパリのルーヴル美術館に移転されたそうですが、それでもカラヴァッジョやラファエロなど著名な画家の傑作が残り、20世紀初頭にイタリア政府が買い取って公開され始めました。
では、美術館の作品を紹介します!

一階・彫刻館

神業・ベルニーニの彫刻集

一階の彫刻館には、17世紀の芸術家ベルニーニの作品が複数展示されています。彼の彫刻はローマ中で見ることができますが、中でも傑作と名高い作品がボルゲーゼ美術館に集まっています。

『プロセルピナの誘拐』1621-1622・静物から運動エネルギーを感じる不思議

一つ目は、冥界の王プルートが、春・農耕の女神プロセルピナ(ペルセポネ)を無理やり連れ去り我が物にしようとする、まさにその瞬間を切り取った作品です。
プルートの背中の筋肉、プロセルーピナの肌の滑らかさ、風に翻る布、連れ去ろうとする力と逃れようとする動き。何という超絶技巧なのでしょう。何をどうしたら、ただの大きな石からこんなものが彫れるのか。だって、石から手作業で彫り出すのですよ。信じられません。

男性の力強い手と、女性の柔らかい肌の質感。

恐怖に歪んだプロセルピナの表情も、非常にリアルです。一人の女性として、彼女が感じている恐怖と絶望がどれだけのものか、勝手に共感してしまいました。英語版の作品名は”The Rape of Proserpina”。この”Rape”は、現在のレイプ(性暴力)というより、誘拐・強奪という意味に近いらしいのですが、結局誘拐された後にされることなんて分かりきっています。

肉眼でないと拾えないほど細かい部分ですが(筆者のandroidスマホの画質が悪いせいかも)、プロセルーピナの頬には二筋の涙が彫られています。

さあ続いては、私が館内で最も好きな彫刻!!ダフネの体が人から月桂樹にメタモルフォーゼ!する瞬間を切り取ったものです。

『アポロンとダフネ』1624-1625・躍動感が凄い!!!

この彫刻も、ギリシア・ローマ神話のエピソードがもとになっています。エーロス(いわゆるキューピッド)の矢の効力で、アポロンはダフネに猛烈に求愛し、ダフネは彼を拒絶し続けるようになります。追うアポロン、逃げるダフネ。「ああ、追いつく/追いつかれる!」という瞬間、ダフネは自らの体を月桂樹に変え(てもらい)、永久的に逃げ切りましたとさ。ナンパの断り方の究極系ですね。あるいは強姦されかけたところを間一髪で逃れた、とも。
アポロンの手がダフネの腰に届いた瞬間、彼女の髪の毛や指先は枝と葉に、足は幹になり始めています。

つま先が木の根に変わる瞬間。なんというディティール…!!
この角度からだと、より「木」っぽいかも。

ダフネの体の変化だけでなく、アポロンの「駆け寄ってきた」感も凄くないですか?布の躍動感や、右足を踏み込んだ姿勢がそうさせているのですが、本当に凄すぎる。
画像では限界がありますので、現地で360度ぐるっと回って堪能してください!!

劇的照明・カラヴァッジョの絵画集

美術館の第8室は、カラヴァッジョの絵画が四方に展示されています。カラヴァッジョはイタリアの偉大な画家のひとり。彼の絵に関しては、過去に別の記事でも取り上げています。

『病めるバッカス』1593年頃 
確かに具合悪そう。一説には病み上がりの自画像とも。
『果物籠と青年』1595年頃 
めちゃリアルな果物、気だるげな目線と半開きの唇。まさにカラヴァッジョ。
『馬丁の聖母』1605-1606年
マリアの胸の谷間、裸のイエス、庶民の恰好をした聖アンナ。
当時としては型破りな表現。

ボルゲーゼ美術館のカラヴァッジョの絵は、どれも明暗の対比が非常に明確です。暗い背景に、スポットライトで照らされたかのような人物たち。
例えばカラヴァッジョの前の時代、ルネサンスの絵画と言えば、背景は空だったり、遠近法で小さく描かれた遠くの山々だったり、建物だったり、とにかく何か優美なものが描かれていました。しかし、カラヴァッジョの絵には闇が広がるだけです。

カラヴァッジョは素行が悪く、殺人を犯したこともあります。それでも画家としての業績を認められ、かつてイタリアのリラ紙幣に描かれ(コンプラ的に今だったら許されなさそう)、今でもローマ中の教会や美術館で絶大な人気を誇っています。

ローマですから!古代芸術集

美術館には古代ローマ時代の芸術作品も多数収蔵されています。

ローマ皇帝の胸像

世界史履修者なら知っているであろうお顔。手前はアントニヌス・ピウス帝、奥は先代のハドリアヌス帝です。二人はローマが最も安定し、繁栄した『五賢帝時代』の三代目と四代目。「テルマエ・ロマエの時代の皇帝」と言えば、イメージしやすいでしょうか。
五人の皇帝、覚えていますか?
ネルウァ→トラヤヌス→ハドリアヌス→アントニヌス・ピウス→マルクス・アウレリウス・アントニヌスでしたね。

ハドリアヌス、アントニヌス・ピウス、マルクスアウレリウスに関しては、もう顔を覚えてしまったので、美術館や大学に像があるとすぐに分かります(もちろんこの記事を書く前に、ちゃんと美術館のサイトでどの皇帝か確認していますよ)。
あと顔が分かるのはオクタウィアヌスとネロ(よく資料集で見る)、コンモドゥス(パパ似の広め二重幅)、コンスタンティヌス(あご)くらいかなぁ。トラヤヌスはさらさらヘアーでちょっとビートルズっぽくて、マルクスアウレリウスはくるくる巻き毛なんですよね~。

剣闘士のモザイク画もあります。

次回は二階・絵画館について書きます

みなさん、ここまで読んでくださってありがとうございました。
とても一つの記事には書ききれなかったので、続きは後編でご紹介しようと思います。有名なラファエロやティツィアーノの作品が登場します。


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